【阪急杯】高松宮記念を意識すると見えてきた注目馬は?

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先行争いとポジション争い

3年連続フルゲート18頭立てとなった阪急杯は近3走で重賞を勝った馬はダイアトニックのみと例年以上の大混戦となった。4週間後の高松宮記念の優先出走権がかかったステップレース、本番につながるか否かも重要なポイントとなる。
スタートを決めたマイスタイル、ダイアトニックにニシノラッシュが並びかけ、3頭雁行状態でレースは始まった。インにいたダイアトニックが一旦引いたものの、ニシノラッシュが強引に行ったことで、最初の3ハロンは12.1-10.7-11.3の34.1。好位に控えたクリノガウディーが外から先行2頭に早めに並びかけたこともあり、その後も11.4-11.3とペースは落ちなかった。
2020年の競馬初めだった阪神はインコースが断然有利。例年通り内枠のアドバンテージが大きく、加えて上位人気馬が内枠に揃い、そのポジション争いも激しくなった。最後の直線は最内でじっと息を潜めていたフィアーノロマーノが逃げるニシノラッシュとマイスタイルの間にできたスペースに飛び込もうとするも、そこに強引にダイアトニックが割り込む形になった。結果的にこの攻防が審議対象となり、降着対象(不利がなければ先着できたか否か)にはなりにくい1/2馬身差であっても3位降着となってしまった。
インを避けたベストアクター
これらインのコースの攻防の間隙をついたのがベストアクター。外枠に加え伏兵評価であり、イチかバチかインコースを意識せずに外をストレスなく走らせる作戦が功を奏した。
今週復帰の浜中俊騎手の肩の力を抜いた騎乗がベストアクターを重賞タイトルへ導いたといっていい。ラスト200mは11.6-11.9とインの先行勢の脚は極端には上がっておらず、展開というより自力でつかんだ勝利だった。母ベストロケーションは同じ鹿戸雄一厩舎に所属、木幡初広騎手を背に京都牝馬S7番人気2着の記録がある。
その父クロフネから継いだ同じ芦毛のベストロケーションだが、クロフネの血は阪神芝と相性がよく、この点も大きく影響したにちがいない。これで全6勝すべて1400m。中山記念のダノンキングリー同様に阪急杯もスペシャリストが気を吐いた。
2、3着馬の進化を忘れるな
降着となったダイアトニックは、昨秋は追い込みで活躍したが、京都金杯で中団、そして今回は距離短縮にもかかわらず好位に付けても結果が出たのは大きい。脚質転換に成功したといってよく、走行妨害は残念であったが、一瞬空いたスペースに飛び込む反応のよさは忘れない方がいいだろう。
不利を受けたフィアーノロマーノは阪神Cに続く好走。以前はややムラなところがある馬だったが、着実に安定して重賞で走れるようになっており、1200mへの短縮に対応しても不思議はない。
レースはスタートからゴールまでラップが落ち込まないスピード+持続力を試される流れとなった。前半600mは34.1、後半600m34.8は高松宮記念のラップ傾向に近く、この流れを自力勝負に出た組は本番で好走する可能性は高いだろう。
距離短縮? も今後に注目すべきは
スプリント適性も問われるような流れになったことを考えると、7着クリノガウディーはやはり注目だろう。流れが合わず最後は伸びなかったが、道中は先行する2頭に早めに外に並びかけ勝負に出た姿勢は目を見張るものがあった。
東京新聞杯3着に続き、馬自身の充実を感じさせる走りだった。1200mへの短縮は厳しいだろうが、マイル戦であればこの春は目を離せない存在。人気以上に走る馬で穴党に愛される同馬。この7着で人気が下がるのであれば、再び穴党を喜ばせてくれそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「
築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。
