騎手は石の上にも10年!6~10年目の騎手の成績が落ち込む理由とは?

高橋楓

騎手デビュー年別インフォグラフィック

ⒸSPAIA

騎手には定年という定義がない

騎手デビュー年別インフォグラフィック

現在のJRA最年長騎手は柴田善臣騎手の53歳(1966年7月30日生まれ)、 そしてNAR最年長騎手は「大井の帝王」的場文男騎手の63歳(1956年9月7日生まれ)。 思い起こせば、岡部幸雄騎手が引退したのは56歳の時だった。

定年が無いとはいえ、騎手という職業は命がけである。 「体力、技術、気力」どれが欠けても続けていく事は困難だろう。

今回は現役のJRAジョッキーを2019年のデータを使って、デビュー年ごとに数値化してみた。また、後半では数値から見る「今買える若手騎手」に注目していく。

騎手の世界は石の上にも「10年」

デビュー年数

サラリーマンの世界では 「まずは3年頑張ってみろ」「石の上にも3年」という言葉をかけられる。 私もサラリーマン時代その言葉をよく耳にした。 しかし、なぜ3年なのか明確に答えられる方には最後まで出会わなかった。

騎手の世界はどうだろうか。 重賞勝利数に関してはハッキリと11年以上の経験年数の騎手が成績を出している。 経験年数が10年以下の騎手が全員で重賞14勝なのに対して、

・11~15年(25勝)
・16~20年(36勝)
・21~25年(30勝)
・26年以上(25勝)

と一目瞭然の数字なのである。

また、数字を出してみて気付くことがある。 10年を超えてくると、平均勝利数や重賞勝利数に大きな差が見えなくなる。

若手である1~5年目の騎手達は減量制度の恩恵やホースマンの期待が大きく、 平場を中心に騎乗回数が確保されるが、 6~10年経つと減量の恩恵が与れなくなったり、次の若手世代もガンガン出てくるので、実力がないと厳しくなってくる。なので、逆にこの層だけの数字がガクッと落ちる。

ここで生き残った一流の騎手達が10年以上の各層に集約されてくるから、 この結果は必然なのかも知れない。

アスリートである以上いつの日か引退という時が訪れる。 それは本人にしか分からない領域であり、 その時までは一流のプロでいる事ができるのである。

当コラムの後半は、今注目するべきデビュー10年以下の若手騎手を取り上げたい。

『松若、菱田、石川』若手三羽ガラスに注目

当該騎手のファンの方や、騎手に注目して馬券を購入する方にとっては、 当たり前の存在かもしれないが、改めてこの3人にスポットを当てたい。

経験年数6年~10年(2010年~2014年デビュー)の騎手の中で 2勝以上重賞を制覇している騎手が「松若、菱田、石川」の3人である。

経験年数6年~10年の注目騎手

中でも今年に入ってから菱田騎手の好調ぶりが顕著である。

昨年と今年の比較をすると、2月16日に開催終了時点で
勝率6.4%→12.3%、 連対率11.6%→19.2%、 3着内率17.3%→28.8%と全項目で大きく数字を伸ばしている。

特に2月に入ってからの成績は好調で、 33回騎乗し(6-3-3-21)の成績で、 勝率18.1%、 連対率27.3%、 3着内率36.4% とノリに乗っている。

昨年の数値と今年の2月の成績を比較すると、 実に勝率は約3倍。 連対率と3着内率は2倍近くまで数値が上昇しているのだ。所属の岡田稲男厩舎以外からの騎乗馬も数が増えていて、 飛躍が期待できる一人だ。

人気馬だけでなく人気薄での馬券健闘が目立つだけに、気になる馬に騎乗した際には押さえておきたい。

坂井瑠星騎手×矢作厩舎は注目

次にデビュー5年以下の騎手に注目する。 ここでは坂井騎手に注目したい。

2016年にデビューしたばかりの坂井騎手だが、 現状矢作厩舎の主戦騎手であり、積極的に海外留学し腕を挙げている。 今後の競馬界を担う騎手と言っても過言ではない。

驚くことにデビュー5年以下の騎手の重賞制覇のうち 半数にあたる3勝を坂井騎手が挙げている。

これは全て2019年の成績で、 ノーワン(フィリーズレビュー)、 ドレッドノータス(京都大賞典)、 サトノガーネット(中日新聞杯) である。

矢作厩舎の所属馬は坂井騎手と中谷雄太騎手が騎乗する事が非常に多いが、坂井騎手の方が成績がいい。 2019年度の坂井騎手は騎乗回数525回で成績は(30-36-45-414)の成績だった。

所属厩舎である矢作厩舎での成績は(15-14-15-123)と約半数の勝ち星を矢作厩舎での馬で挙げていることになる。

坂井瑠星騎手の成績

率系の数字で見ると、所属外の厩舎の馬に騎乗した場合4.2%の勝率に対し 矢作厩舎所属馬に騎乗した場合の勝率は倍以上の9.0%までに上昇しているのである。 所属厩舎の騎乗馬が増える事は当然なのだが、 坂井騎手の場合、全体に対して自厩舎の方が大きく成績が向上する傾向にある。 ぜひ、坂井騎手×矢作厩舎を見つけた際には注目したい。

《ライタープロフィール》
秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。 一口馬主やPOG関連の記事を中心に執筆している。

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