【共同通信杯】過去の好走馬が指し示す適性とは?

勝木淳

共同通信杯インフォグラフィックⒸSPAIA

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共同通信杯に合うキャラクター像とは

昨年はダノンキングリーが3連勝で重賞勝ちを収めた。その後は春のクラシックで皐月賞3着、日本ダービー2着と好走。勝ち馬には過去10年で皐月賞馬を3頭(12年ゴールドシップ、14年イスラボニータ、16年ディーマジェスティ)輩出、リアルスティールやスワーヴリチャードら重賞ウイナーも出ている出世レース。

東京芝1800mはまさに能力査定に適した舞台といえるだろう。では共同通信杯の傾向、適性とはどんなものなのか。過去のレースを分析することで、共同通信杯に合うキャラクター像を探る。

前半60秒台、上がり600m34秒台後半の攻防

3歳2月に東京芝1800m重賞で結果を出せる馬はその後に活躍する場合が多い。クラシックの前哨戦は若馬ゆえに折り合いを重視する傾向が強く、遅い流れになりがちである。さらに最近はノーザンファーム系の巧みな使い分けなどもあり、前哨戦が少頭数になりやすい。本番の皐月賞で初めてフルゲートを経験、そこに波乱が生じることもある。前哨戦が経験であり、本番への試走という意味合いではなく、いかに少ないレース出走数で賞金を稼ぎ本番の出走枠を確保するかという方向性へ変わってきている。

共同通信杯は少ない出走回数で本番へ挑むために最適な出走間隔(皐月賞まで中9週)のレースであり、今後もここからクラシックへ飛躍する馬は増えるかもしれない。

出走頭数の減少はトレンドに当てはまるもののレースの流れは思ったより厳しい傾向にある、それが共同通信杯だ。

共同通信杯のパターンⒸSPAIA


過去5年の勝ち馬と勝ち時計、レース全体の前半1000m通過記録と上がり600mの記録、勝ち馬の4角位置を比較していくと、思ったよりスローペースが少ないことがわかる。最近5年では前半1000m通過が61秒以上かかったのはダノンキングリーが勝った19年のみ。秋の古馬重賞・毎日王冠が60秒を切るぐらいであることを踏まえると、3歳2月の世代限定戦で1000m通過60秒台前半は遅い流れとはいいがたい。

レース全体の上がり600mも33秒台は19年(33秒3)の1回のみ。19年の33秒3は極めてハイレベルな記録ではあるが、共同通信杯はこういったスローの上がり勝負というレースにはなりにくい傾向にある。これを過去10年までさかのぼっても、前半1000m通過記録が61秒5より遅かったのは2回(14年62秒2、勝ち馬イスラボニータ、10年61秒6、勝ち馬ハンソデバンド)だけで前半はそれなりに流れながら、最後の600mは34秒台後半の攻防というのが共同通信杯というレースなのだ。

それでも最後の末脚の速さはレース結果に左右する。過去5年でみると勝ち馬がメンバー中、上がり600mタイム3位以内の記録だったケースは4回であり、東京コースらしく確かな末脚は求められる。しかしながら勝ち馬の顔ぶれを見ていくと、切れ味に長けた瞬発力型は少ない。スワーヴリチャードはハーツクライ産駒で道悪のジャパンCと阪神内回りの大阪杯の勝ち馬、好走パターンはスローペースの瞬発力勝負にならない条件が目立つ。皐月賞を勝ったディーマジェスティはディープインパクト産駒だが母父はロベルト系ブライアンズタイムで皐月賞はスピードの持続力が求められるレースだった。

リアルスティールは同じく父ディープインパクトだが、母父はストームキャット。全妹のラヴズオンリーユーやキズナなど瞬発力に長けたタイプもいるが、リアルスティール自身は日本のGⅠではあと一歩足りずの2着が目立つもドバイでGⅠ勝ちを収めた。昨年の2着はダイワメジャー産駒でマイルGⅠ2勝のアドマイヤマーズ。やはり適性は持続力型よりである。

共同通信杯を検討する上でこうした持続力型を探すのは有効だろう。イメージより瞬発力型優勢ではない。

距離延長組はマイナス

前走レース別成績(過去10年)ⒸSPAIA


そうしたタイプを探すうえで前走レース別成績をみると、同舞台の東京スポーツ杯が上位【2-1-1-2】。2歳GⅠに向かわずに共同通信杯出走はいかに出走回数を少なくというトレンドが反映された結果だろう。ここで重要なのは2連勝したのはイスラボニータのみで共同通信杯好走組は東京スポーツ杯惜敗組が目立つということ。なお、イスラボニータの年は1000m通過62秒2で最近10年でもっとも遅い流れだった。基本的には東京スポーツ杯で切れ味で少しだけ劣った組の巻き返しが多い。

前走新馬組は【1-1-0-4】だが、新馬戦が芝1800m以上だと【1-1-0-0】、芝1600m以下だと【0-0-0-4】とくっきり。持続力勝負になる舞台で距離延長は辛いところだ。同じく前走1勝クラスの平場組も芝2000m戦なら【1-0-1-1】、芝1600m以下だと【0-0-0-2】。ジュニアC(中山芝1600m)組は好走はハンソデバンドのみ。そのハンソデバンドは連勝だったので、凡走組からの巻き返しはない。同じことは朝日杯FS組にもあてはまり、16年2着のイモータル以外の共同通信杯好走馬は朝日杯FSで3着以内だった。こちらも凡走組の巻き返しは確率的には極めて低い。

距離別成績ⒸSPAIA


距離別で見ると距離短縮組が5勝、距離延長組が2勝、同距離が3勝となっている。 ただ、面白いのが連対率だけ距離延長組16.1%に対して距離短縮組が13.6%となる。他を見ると距離短縮+同距離が優勢となり、距離延長組から馬券は買いにくい。

想定される出走馬ではマイラプソディは絶好調のハーツクライ産駒、京都2歳S組は【0-0-1-2】だが、昨年は馬場が重く、瞬発力型より持久型優勢のレースだったことを考えると、ここでも評価は下げられない。

フィリオアレグロも芝2000m重馬場の新馬戦快勝でこちらも有力。

葉牡丹賞組の成績はよくないが、ダーリントンホールはキャラクター的に合いそうで面白い。堅実で崩れないタイプであり、父ニューアプローチはガリレオ実子のサドラーズウェルズ系で冬の東京芝に滅法強い。

共同通信杯インフォグラフィック

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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