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【根岸S・シルクロードS回顧】東西でGⅠ前哨戦!本番で忘れてはいけないことは?

2020/02/03 12:05
勝木淳
根岸ステークスインフォグラフィックⒸSPAIA

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【根岸ステークス】まさに匠の域 矢作調教師の戦術と本番惑星馬は?

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2月2日に東京競馬場で行われたのが 根岸ステークス 。1着馬にフェブラリーSへの優先出走権が与えられるトライアルレースは、初ダートだったモズアスコットがコパノキッキングを差し切って鮮烈な砂デビューを果たした。

安田記念を連闘で勝ったつかみどころがない同馬らしい意外性ある勝利ではあったが、まずはダートを試した陣営の勝利だろう。ダートから芝替わりは馬券作戦上、注目することはあっても芝からダートへの転戦、初ダートは嫌われがちなもの。

実際にフェブラリーSには初ダートの芝重賞ウィナーが毎年のように参戦し、惨敗を喫している。上級条件になればダートはダート専門というのがセオリーなのだ。

加えてモズアスコットの父フランケル産駒は根岸SまでJRA34勝中30勝が芝、ダートは1勝クラス以下で4勝のみと血統的なあと押しもない。そんな状況でダート挑戦は勇気あるローテーションだが、そこはレース選択に長ける矢作調教師。昨年のリスグラシューも含め、その手腕は光りまくっている。

このレースも東京ダート1400m巧者のドリームキラリを出走させる念の入りようだった。逃げるドリームキラリはコパノキッキング対策であり、キッキングが控えてくれるようならコース巧者のドリームキラリは簡単には捕まらない。流れに応じて自厩舎の馬に可能性が出てくるという仕掛けは見事に決まった。

スタートダッシュはスプリント戦中心のコパノキッキングが速かったが、大外枠からがむしゃらにハナを取りに行ったドリームキラリが来ると、コパノキッキング騎乗のマーフィー騎手はさっと控える形。以前に比べればコパノキッキングもかなり操縦性が上がっている。この先行争いもあり、3ハロン目に11秒6を記録して最初の600mは35秒0。昨年とまったく同じ記録。

モズアスコットは出遅れながら、ルメール騎手がその不利をそのままにはせず挽回するように追い上げて中団の外に付けた点が大きかった。昨年と同じペースであり、後方にどんぴしゃな流れではなかったわけで、中団で最後の直線を迎えたからこそコパノキッキングを捕らえられた。芝でも末脚が光る馬だが、切れるというより持続タイプで軽い馬場では鋭さ負けするシーンも多かった。マイルはGⅠ勝ちの舞台でもあるが、ベストは1400m。根岸Sは距離が適距離だったことも勝因だろう。負けて強しのコパノキッキングも末脚堅実な3着スマートアヴァロンも含めマイルへの距離延長はプラスとはいえない。

5着ワイドファラオはチャンピオンズC、14着以来でパフォーマンスを上げてきた。先行勢に向いた流れではなかったが、4角4番手から58キロを背負い5着。昨秋から長い距離を使われたが、やはりベストはマイル~1400mであり、本番に向けて惑星となりそうだ。

【シルクロードS】前傾ラップが意味するものとは

2月2日に京都競馬場で行われたのが シルクロードステークス 。快速モズスーパーフレアが逃げ、セイウンコウセイが追いかける流れは前半600m33秒9。前半に上り坂がある京都芝1200mは基本はテンに速いタイムが出ないコース。加えてBコース替わりとはいえ、時計が依然かかる馬場状態を考えれば、この33秒9はハイラップ。モズスーパーフレアは昨秋の京阪杯で前半600m34秒2だったので、今回はさらにペースを上げたことになる。京阪杯は8着だったが、今回は4着。やはりこの馬はためるのではなく、自分のペースで飛ばすのが正解。ゴール寸前で差し馬勢に捕まったが、まだまだ見限れない。

その上位勢は4角18番手から3着に突っ込んだナランフレグ、16番手から馬群を抜けてきたエイティーンガールはハマった印象が強いが、勝ったアウィルアウェイは後方馬群のなかから4角で外を回りながら2、3着馬より先に動き、自慢の切れを使い、前で粘る組をきっちり捕らえた。京阪杯では不利に泣いたが、スムーズな競馬をした時の強さは目を見張るものがあった。

しかしながら高松宮記念を見据えたとき、シルクロードSの立場は難しい。京都芝1200m戦らしく遅い流れになった時は本番では出番はないが、今年のように前半が厳しいレースだったときは取り扱いがさらに難しい。

昨年は前後半600m33秒3-35秒0の前傾ラップで勝ち馬ダノンスマッシュは本番4着、2年前は34秒0-34秒3で勝ったファインニードルは高松宮記念を制した。17年は33秒9-33秒9で2着セイウンコウセイが高松宮記念V、12年ロードカナロアは34秒1-34秒2で本番3着。前後半のラップバランスこそ高松宮記念へのカギとなるならば、今年は33秒9-35秒1の前傾だけに難しいのではなかろうか。

ライタープロフィール
勝木淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。