サンデーの孫たちが大活躍 2019年種牡馬ランキング(ダート・地方編)

門田光生

2019年種牡馬リーディングダートトップのゴールドアリュールⒸ明石智子

Ⓒ明石智子

ここもサンデーの孫が1位

2019年リーディングサイアー・ダート(中央)(賞金順)ⒸSPAIA

中央のダート部門はゴールドアリュールが獲得賞金1位。ライバルだったキングカメハメハの出走頭数が減ったこともあって、2年連続での戴冠となった。しかし、この馬も2017年に死亡しており、2020年にデビューする産駒が最後(2月に死亡したので、血統登録は4頭だけ)。芝部門と同じく、ここでも近いうちに世代交代が見られそうだ。

2位はヘニーヒューズ。持ち込み馬の活躍もあって輸入された種牡馬で、2018年のダート部門6位からランクアップ。期待通りの成績を残している。ただ、芝の順位は56位。確かにコテコテのアメリカン血統なのだが、持ち込み馬にアジアエクスプレス(朝日杯FS)やヘニーハウンド(オーシャンS)がいたことを考えると、ちょっとダートに偏り過ぎている気がしないでもない。この先、血統通りダート型に特化するのか、それとも芝でもランキングを上げてくるのか、先々まで注目できる種牡馬といえるだろう。

3位のサウスヴィグラスはゴールドアリュール、ヘニーヒューズ以上にダートに特化した種牡馬。何せ芝の順位が259位で、0勝、獲得賞金も0円である。このフォーティナイナー系は日本の馬場に適した系統なのは間違いないが、種牡馬によって個性がバラバラなのが面白いところ。

4位はキンシャサノキセキ。現役時代は芝の短距離で活躍した馬だが、産駒は距離を問わずダート全般で活躍している。フジキセキの系統は芝も走るが、ダートはそれ以上に走る。フジキセキ自身は故障で早々に引退してしまったが、もしかするとダートを走らせたら芝以上だったかもしれない。

5位クロフネ、6位エンパイアメーカーときて、7位にキングカメハメハ、8位ロードカナロア、さらに12位ルーラーシップ。この3頭はいずれもKingmambo系の種牡馬で、芝でもトップテンにランクインしている。この万能性が、産駒の適性がどこにあるかを難しくさせている原因なのだろう。この系統を完全に理解するには、もう少し時間がかかりそうだ。

10位のパイロもサウスヴィグラスと同じダート特化型の種牡馬と覚えておこう。これも2019年は芝で0勝だった。

ロードカナロアは天下統一も視野に

2019年リーディングサイアー(地方)(勝利回数順)ⒸSPAIA

地方部門は交流重賞の賞金額がほかと差が大きいため、勝利数でランキングを計算してみた。

圧倒的な出走頭数を誇るサウスヴィグラスが堂々の勝利数1位。賞金で計算しても文句なしの1位だ。ディープインパクトには及ばなくても、V5達成は威張れる記録。この馬は2018年に死亡しているが、まだデビューしていない産駒も控えており、すぐに首位陥落するとは考えづらい。

2位はパイロ。中央で芝0勝だった馬のワンツーということになった。パイロは種牡馬入りした当初からダートに特化。芝専門のハービンジャーと真逆に位置する種牡馬といえる。

3位は中央のダート部門で1位だったゴールドアリュール。重賞11勝はさすがの数字だが、これを上回る重賞15勝を挙げたのが4位のシスターミニスター。勝率もよく、出走回数が全体で27番目ということを考えると、種牡馬としての資質の高さがよく分かる。雨馬場にやたらと強いのも特徴だ。

5位にはハーツクライ。この種牡馬、どこにでも顔を出してくる。

ここで注目したいのは10位のロードカナロア。1位サウスヴィグラスの出走回数3291を筆頭として、ベスト10の種牡馬は1800以上の出走回数をこなしている馬がほとんどなのだが、ロードカナロアはわずか880回。それで勝利数でトップ10に食い込むのだから、やはりただ者ではない。近い将来、中央と地方のダブルリーディングを取る日がやってくるかもしれない。

出走回数でライバルを圧倒したトゥザワールド

2019年ファーストシーズンサイアー(地方)(勝利回数順)ⒸSPAIA

次は2019年ファーストシーズンサイアー(地方)だが、トップは北海道2歳優駿を勝ったキメラヴェリテの1勝だけでキズナが賞金4位までジャンプアップしてしまう。やはり交流重賞との賞金差が大きいので、ここも勝利数順で評価した。

1位は出走回数でライバルを圧倒したトゥザワールド。ちなみに、中央でのファーストサイアーランキングでは11位。産駒がパワータイプで地方のダートが合うのか、それとも今後は芝でも活躍馬を出すのか。この血統はどちらにも転びそうなので、今後どう推移していくのか楽しみ。

2位はフェノーメノ。ステイゴールド産駒で、しかも現役時代は芝の長距離砲としてならした馬が、地方のファーストサイアーランキング2位というのはちょっと意外。同じ父を持つ新種牡馬ゴールドシップとは全くタイプが違うようだ。

5位ノーザンリバー、9位ニホンピロアワーズは戦前の評価がそう高い馬ではなかった。それがトップ10にランクインし、ともに重賞勝ち馬を出した。この活躍が認められて、今後種付け頭数が増えるようなことがあれば、ランキング上位に名を連ねてきそうだ。

2歳リーディングサイアーは?

2019年2歳リーディングサイアー(地方)(勝利回数順)ⒸSPAIA

最後に2019年2歳リーディングサイアー(地方)だが、地方全体のリーディングサイアーに続いてサウスヴィグラスが1位。ただ、全体リーディングの時と違って出走回数はほかの上位種牡馬と変わらない。それでいて2位に10勝以上の差をつけた。高齢になっても種牡馬としてのポテンシャルが全く落ちていないところがこの馬の凄いところ。

2位はダート専科でおなじみのパイロ。全体リーディングと同じ馬のワンツーとなった。3位のトゥザワールドはファーストサイアーランキング1位。

4位フリオーソ、5位スマートファルコンと交流重賞で活躍したダートの強豪がランクイン。6位エスポワールシチー、9位トランセンドは出走回数がトップのフリオーソの約半分。それを考えると優秀な数字だ。

重賞最多勝利は7位のベルシャザール。上記で書いたKingmanbo系の種牡馬だ。ミスタープロスペクター系の中では、上記で書いたフォーティナイナー系とともに日本の馬場と非常にマッチする系統である。

8位のスズカコーズウェイは8月末の時点で3位。少し順位を下げたが、種付け頭数が増えた年にきっちり結果を出したあたり、種牡馬としての能力が高いことの証明だろう。

ちなみに、2018年の新種牡馬ランキングはどうだったのか、スッと答えが出てくる人は相当の競馬通。中央(賞金順)はジャスタウェイ、2位がダンカーク。地方(勝利数順)は1位がダンカーク、2位がヴィットリオドーロ。ちなみに、今年の2歳ランキングを見ると、中央のジャスタウェイは13位、ダンカークは31位。地方のダンカークは29位、ヴィットリオドーロは52位まで落ちた。2019年の新種牡馬ランキングの上位馬も、2年目以降に活躍馬をコンスタントに出せるかどうか。これからが本当の勝負である。

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。

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