【フェアリーS】前走新馬・未勝利勝ちが有利 当日まで覚えておきたい3つのデータ

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
桜花賞には直接つながらないレース
2020年の牝馬クラシック戦線の開幕を告げるフェアリーSは桜花賞まで中12週。もう本番は3か月後に迫ると考える人もいれば、まだ3か月も先でもあると考える人もいるだろう。この微妙な間隔のせいか、すんなりと収まらない。
また過去10年、フェアリーSから桜花賞に直行した馬は15年トーセンラーク、18年プリモシーン、19年フィリアプーラの3頭。このうちフェアリーS勝ち馬はプリモシーン、フィリアプーラといるが、本番ではいずれも2桁着順。トップ戦線から一枚も二枚も落ちるメンバーが揃うことも混戦に拍車をかけている。
牝馬限定重賞あるある
桜花賞で勝ち負けというより、桜花賞出走を目指し、かつ強豪が集まるトライアルより先に賞金加算をもくろむ、そんな意図を持った馬が集まるのがフェアリーSだ。中12週で重賞タイトルを獲得できれば、直行も可能になり、トライアルをひと叩きして本番というローテーションも組めるわけで、この時期は賞金加算が至上命題。
トップクラスと競う経験も必要ではあるが、まずは参加するための賞金を優先させようということだ。
こんな意図が反映しているのが、前走クラス別成績だ。

GⅠ(阪神JF)組が過去10年【2-0-1-12】と勝率、連対率、複勝率も高いが、10年で15頭と出走数が少ない。19年は出走ゼロ、18年1頭と減少傾向。馬券に絡んだ3頭も13年サンブルエミューズ(2番人気3着)が最後であり、近年の流行であるゆったりと無理をしない出走間隔という傾向から中4週での連続重賞出走は避けられつつある。
このレース、新馬【2-2-2-20】、未勝利【3-2-3-25】と初勝利を挙げた直後に出走してくる組が活躍する。これは先述のもくろみが濃く反映されたデータである。陣営の期待馬を自己条件も重賞もメンバー的に変わらないのであれば、賞金が高い重賞へ出そうということだ。それが実を結ぶケースが多い。
新馬勝ち直後では18年レッドベルローズ(7番人気3着)、19年グレイスアン(5番人気3着)とここ2年連続で人気以上の激走馬を出している。
未勝利戦勝ち後では18年プリモシーン、19年フィリアプーラとこちらは2年連続で勝ち馬が出ている。14~17年でも2、3着馬を連続で輩出、いずれも人気以上の結果だったので、この組の分析は重要になる。
前出のプリモシーン、フィリアプーラを含め、直前の未勝利戦が牡馬との混合戦だった組は【2-1-1-14】と好成績。これは牝馬限定重賞あるあるで、牝馬限定よりも牡馬相手に戦った経験値の違いが生きるというもの。牡馬と戦って未勝利戦を勝ち上がった馬はそのレース内容を吟味し、上位人気でなくても積極的に狙っていきたい。

前走1勝クラス出走馬【2-6-4-55】。その前走着順は1着【0-1-1-5】2着【0-2-2-5】3着【1-1-0-5】と馬券圏内に入った組が優勢。これはフェアリーSが1勝クラスとほぼ変わらないレベルであるひとつの証明だろう。
1勝クラス上位の力が通用するかわりに前走1勝クラスで振るわなかった組の巻き返しもある。6~9着【1-1-1-15】10着以下【0-1-0-12】と数は少ないが、10、11、2、10番人気で2、1、3、2着と大穴を提供。ここにも牝馬限定重賞あるあるが見える。
16年ダイワドレッサーは葉牡丹賞9着、14年ニシノアカツキはベゴニア賞11着、11年アドマイヤセプターはエリカ賞7着といずれも牡馬混合の1勝クラス特別で大きな着順になりながら巻き返している。これに該当する馬がいれば、大穴候補に入れておきたい。
ゆったり計画的なローテーション
昇級馬がガンガン活躍するレースではあるが、勝ち上がった勢いそのままにというケースは案外少ない。それがレース間隔別成績に現れている。

中1週【0-0-1-5】中2週【1-0-0-21】
と詰めたタイプは成績が上がらず、反対に中3週【3-1-3-24】中4~8週【3-6-6-55】中9~24週【3-3-0-24】と好成績。新馬、未勝利、1勝クラスからの格上挑戦であっても計画的にゆったりとしたローテーションでここに照準を合わせてくる馬が有利。陣営が初勝利後に明確なビジョンを持っているか否かを問うべきだろう。
勢いそのままにというタイプでは中3週と1か月ほど余裕を持たせて出走する馬を狙いたい。臨戦過程から陣営のプランや意図を読み取ることは昨今の競馬ではより重要なファクターになる。
ポイントにすべき点は三つ。
・格上挑戦
・前走で牡馬相手のレースを経験
・中3週以上の余裕があるレース間隔
となる。荒れる傾向のレースなだけにこのデータを使って1週遅れのお年玉をいただきたいところ。
《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にて記事を執筆。
