【阪神JF】リアアメリア、前走で予行演習完了 データも後押しで文句なし

門田光生

2019年阪神JFで本命に推されたリアアメリアⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

クラシックにまでつながる一戦

先週のチャンピオンズCは数字以上に落ち着いた展開。途中で「こりゃ前が残るわ」との声が聞こえた通り、先行馬、もしくはロスなく乗った組が馬券圏内に残った。勝ったのは好位のインで足をためたクリソベリル。戦前は3歳のレベルに疑問符の声もあったが、全く関係なし。全体で見ると3歳勢は中央、地方とも低調かもしれないが、中央ではクリソベリル、そして地方では道営記念を勝ったリンノレジェンドと北海優駿勝ちのリンゾウチャネル。この3頭は抜けた存在かと思われる。

さて、今週は阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF)が行われる。その昔、ハイペースの桜花賞を乗り切れるスタミナがあれば、長距離のオークスでも問題なしといわれていた。要するに桜花賞とオークスでは求められる物が同じということなのだが、今はこの阪神JFと桜花賞、そしてオークスが線となってつながっている。仕上がりの早さやスピードだけでなく、2歳戦ながらクラシックでも戦える総合力が求められるレースといえる。

クロフネの血を引く馬に注意

いつも通り過去10年のデータから傾向を調べてみる。まずはキャリア。勝ち馬は全てキャリア3戦以内の馬から出ている。そのうち、2勝を挙げている馬が8頭。つまり、3戦2勝、もしくは2戦2勝から勝ち馬が出る可能性が高いということになる。

過去10年の阪神JF出走馬のキャリア成績ⒸSPAIA

過去10年の阪神JF3着以内馬の勝利数ⒸSPAIA

過去10年の阪神JF出走馬の前走着順ⒸSPAIA

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また、前走で3着以下に負けているグループから優勝馬が出ていない。前走で連対していることもほぼ必須となってくる。

続いては騎手の乗り替わりについて。

阪神JF過去10年の乗り替わり成績ⒸSPAIA

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以前はワールドスーパージョッキーシリーズ、今は香港国際競走と施行週が重なっていて、有力馬を含め騎手の乗り替わりが割とよくあるレースだった。

しかし、継続騎乗8勝に対して乗り替わった馬は2勝。前述したようにクラシックにまでつながる一戦ということで、国際競走と日程が重なっても有力馬は騎手が手放さないということか。

ハーツクライ産駒が勝てば将来有望?

最後に血統を。ここ10年でディープインパクト産駒が最多の3勝。さすがの数字だが、母の父クロフネが2年連続で2着。父としても2着2回、3着2回だから適性十分といえる。クロフネ産駒は牡馬より牝馬に活躍馬が多いのも特徴でもあり、今年でいえば母の父にクロフネを持つクリスティに注目して損はないだろう。

逆に牡馬の方が優勢なのがハーツクライ産駒。とはいえ牝馬のGI馬はリスグラシュー、ヌーヴォレコルトといったワールドクラスが出ている。ウーマンズハート、クラヴァシュドールといったハーツクライ産駒がここを勝てるようなら、いずれは世界で戦えるくらいの名牝になれるかもしれない。

いろんな意味で面白いのはロータスランド。父Point of Entryはディープインパクトと同じヘイルトゥリーズン系で芝向きの種牡馬。それよりも注目したいのは母系。兄姉の父はいずれもTale of the Catなのだが、それを見て思わず「おや?」となった。母の父も同じStorm Cat系のScat Daddy。

つまり、この兄姉はStorm Cat2×5のインブリードを持っていることになる。ほかにもTale of the Catの母Yarn2×5もあったりと、かなり攻めた配合。残念ながら活躍はしなかったようだが、こういう血統表は眺めているだけで楽しい。ロータスランドはそこまでのインパクトはなくても、名血のインブリードを4本持っていて爆発力は秘めている。

将来性十分!リアアメリア

データからの印象は、まだ底を見せていない素質馬が好走する傾向にあるようだ。確かに、近年の連対馬の名前を見ても、のちにクラシックを賑わせる馬が多く見られる。

前哨戦を簡単に振り返ってみる。まずは新潟2歳S。夏に行われているため、前哨戦といえるかどうか微妙だが、このレースからも連対例があるので軽視は禁物。勝ったのはウーマンズハート。前が残る展開を外からまとめて差し切ったのだから強い内容。血統を見ると決して2歳向きとは思えず、レース内容も粗削りながら2戦2勝。成長力のあるハーツクライ産駒でもあり、先々まで楽しめそうだ。

サウジアラビアロイヤルCからは同じくハーツクライ産駒のクラヴァシュドールがエントリー。レコード駆けした勝ち馬には及ばなかったが、相手は牡馬だし、直線でいったんはかわすシーンもあった。4着馬のジェラペッシュはバネがあって好みのタイプなのだが、前走の赤松賞を見ても現時点ではちょっと力が足りないか。

アルテミスSはリアアメリアが楽勝。前半は行きたがるのを後方で我慢させ、外をぐるっと回って余裕の差し切り。相手関係もあるだろうが、ちょっと物が違うといった勝ち方だった。

ファンタジーSは特に展開の有利不利はなさそうなレースだった。勝ったレシステンシアは早め先頭から手前を何度か替えながら押し切った。ダイワメジャー産駒らしい勝ち方だが、同産駒で2015年の勝ち馬メジャーエンブレムほどの迫力は感じられなかった。4着馬のヤマカツマーメイドは前肢の出が硬く伸び負け。上積みは厳しいかもしれない。

主な前哨戦は以上だが、ほかで気になったのはマルターズディオサとロータスランド。マルターズディオサは出遅れ癖があるし、フラフラするなど若さが抜け切らない状態での連勝。初戦はインを、前走は大外を回ってのもので、同じ差し切り勝ちでも質が違うところに価値がある。ロータスランドはとにかく追いだしてからの反応がいい。さすがは外国産で、完成度ならこれが一番かと思われる。

結論だが、とにかく将来性があって、なおかつデータと一致する馬となればリアアメリアで仕方がない。このレースは後方から外を回っても届くのが特徴だが、リアアメリアの前走はまさに予行演習といわんばかりの内容。その前走がプラス20キロ。ここを見据えた仕上げでもあってほぼ死角はない。

相手だが、マルターズディオサは3戦2勝でデータ的に合致するし、後方からでも十分に届く舞台設定が魅力。あとは完成度が高いロータスランド、クロフネの血を引く馬が活躍するということでクリスティも加えておく。ウーマンズハートとクラヴァシュドールは能力的に十分通用するが、ハーツクライ産駒の牝馬でGI級が誕生する確率は牡馬に比べて低く、あくまで押さえまでの評価にとどめておく。

◎リアアメリア
○マルターズディオサ
▲ロータスランド
△クリスティ
×ウーマンズハート
×クラヴァシュドール

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。

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