SPAIA競馬
トップ>ニュース>「超長距離戦」はスペシャリストを狙え 東大HCが徹底分析

「超長距離戦」はスペシャリストを狙え 東大HCが徹底分析

2019/11/29 11:00
東大ホースメンクラブ
アルバートⒸ明石智子

Ⓒ明石智子

三千メートル以上のレースは年間6レースのみ

今回のコラムのテーマは「超長距離戦」。JRAでは年間に3000を超えるレースが施行されているが、そのうち芝の平地競走で3000mを超えるものはわずか6レースしかない。これらのレースを「超長距離戦」と定義する。年明けから順に並べると以下の通り。

①万葉S(OP・京都芝3000m)
②ダイヤモンドS(GⅢ・東京芝3400m)
③阪神大賞典(GⅡ・阪神芝3000m)
④天皇賞・春(GⅠ・京都芝3200m)
⑤菊花賞(GⅠ・京都芝3000m)
⑥ステイヤーズS(GⅡ・中山芝3600m)

ステイヤーの特徴は、高齢になってもなお一線級で戦い続ける息の長い競走馬が多いことだ。「超長距離戦」に実に35回も出走、10歳でステイヤーズSを制したのち、さらに12歳まで現役を続けたトウカイトリックなどその例は枚挙にいとまがない。

現役でもステイヤーズS3連覇の実績を誇るアルバートをはじめ、門別デビューから中央重賞馬まで駆け上がったリッジマンなど個性派揃い。長期間にわたって応援でき、老雄が若馬と互角以上に渡り合う姿はなんとも言えない魅力がある。

平地競走最長距離を誇るステイヤーズSを来週に控える今回のコラムでは、「超長距離戦」のうち、日曜のメインレースにならない①②⑥の3競走を分析する。スタミナ自慢のステイヤーが輝きを見せる名物レースの攻略法を伝授しよう。

万葉Sは4角の位置で勝負が決まる

年明け早々に行われ、京都の正月を彩る万葉S。近10年で実に8度も1番人気馬が敗れている波乱傾向のレースだ。

過去10年・万葉S武豊騎手騎乗馬ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

まず、注目は京都外回りの第一人者である武豊騎手が抜群の安定感を誇っていること。過去10年の成績のうち、網掛けした3番人気以内の騎乗馬に限ると【2-1-2-1】複勝率83%をマーク。

菊花賞でも幾多の好騎乗を披露してきた武騎手に淀の3000mでは逆らってはいけない。その他、今年の万葉Sでマイペースの逃げを打ち、ヴォージュをハナ差の勝利に導いた和田竜二騎手も3勝を挙げている。あとは、後方からの差し切り勝ちがほぼ皆無という点も頭に入れておきたい。

過去6年・万葉S着順と4角順位ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

過去10年で鮮やかな差し切り勝ちといえるのは13年のデスペラード、10年のトウカイトリックぐらいで、15年のレースで上がり最速の脚を繰り出しながら4着に敗れたショウナンラグーンなど、差し・追い込み脚質の馬には受難のレースである。

対照的に4角4番手以内で通過した馬が6連勝中で、近6年に限れば2017年以外、すべての年度で4角4番手以内の馬がワンツースリーを決めている驚きのデータもある。事実上4角の位置が着順と一致しており、先行馬か早めにまくるなど好位を取れる馬を評価したい。 豆知識だが、2008年から12年連続で1枠の馬が馬券圏外となっている。この枠を引いてしまった馬は評価を下げよう。

1番人気馬が断然のダイヤモンドS

フェブラリーS週の土曜に行われる重賞・ダイヤモンドS。万葉Sと同じハンデ戦だが、こちらは過去10年で1番人気馬が【7-1-0-2】と圧倒的に強い。連対率8割を誇るレースはあまりお目にかかれず、鉄板軸といっていいだろう。12年のレースこそ15番人気のケイアイドウソジンが勝ったが、基本的には固い決着が多いため、手堅くお金を増やしたいレースだ。1番人気馬の相手選びが的中のカギを握る。

過去6年・万葉S着順と4角順位ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上表に挙げた通り、2014年から6年連続で前走芝3000m以上のレースを使った馬が2・3着に健闘している。このうち万葉S組が最も多いが、いずれも掲示板を確保しており、前走で距離にめどをつけている馬の信頼度が高い。また近3年に限ると該当馬はいずれも斤量52キロ以下と軽ハンデに恵まれていた。来年のレースは1番人気馬と上記の条件を満たす馬で勝負してほしい。

また19年の同レースで4角でほぼ最後方を追走していたユーキャンスマイルが直線だけで他馬をなぎ倒したように、このレースは差し脚自慢が台頭する。上がり3ハロン最速をマークした馬の成績は【7-2-1-2】で複勝率83%。万葉Sとは区別して覚えておきたいデータだ。

ステイヤーズSは超長距離戦連対経験必須

最後におまちかね、今週末に行われるステイヤーズSを考える。平地競走最長を誇るだけあり、シビアに距離適性が問われるレースだ。その点、スタミナ自慢が紛れなく上位に来るため、予想はさほど難しくない。

過去10年・ステイヤーズS勝ち馬と超長距離戦実績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上表に過去10年の勝ち馬と、それ以前の超長距離戦実績、勝ち馬が3000m以上のレース初出走だった場合、直後の3400m以上での成績を並べた。 過去10年の勝ち馬は2015年のアルバート、2010年のコスモヘレノスを除き、全頭が芝3000m以上のレースを使った際に連対している。該当しなかった2頭も、直後の芝3400m以上のレースで連対。先に述べた通り、適性がもろに出ることがわかるだろう。

今年の特別登録段階で芝3000m以上のレースの連対経験がある馬はアルバートとリッジマンの2頭。馬券のアタマはここから狙うと良いだろう。もしこの2頭を倒す馬が現れた場合は次走も確実に買いたい。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。