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【ジャパンC】パドックで注目すべき馬は?東大HCの獣医学専修生がチェックポイントを分析!

2019/11/24 06:00
東大ホースメンクラブ
スワーヴリチャードの2019年天皇賞時のパドック写真ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

パドックの見方は?

今回のコラムのテーマは「パドック診断」。前回のパドック診断の記事では、ダノンプレミアム(写真は2019年天皇賞秋)のパドックに注目してほしいと書いた。

2019年天皇賞秋のダノンプレミアムⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

「落ち着いて歩けていれば前走の大敗は度外視、二人引きでも常歩で歩けるようであれば及第点、速歩となり我慢できず発汗も目立つようであれば評価は下げたい」と書いた。それを読んで当日のパドックを見た方々は、二人引きではあったもののおおむね常歩で周回できていたことから、能力が十分に発揮できるとみて買い目に入れていただけただろうか。

結果は、好メンバーの中で2着と大健闘。見事に前走の16着から巻き返して見せた。このように、テンションや馬体重に課題のある馬はパドックを通じて当日の馬の状態をよく観察することが重要である。

パドックで見るポイントは、第一に馬の様子・テンション、第二に馬の体型である。そしてその注意点としては、同じ馬同士、つまりその馬の過去のレースでのパドックと比べることだ。

また、些細な点ではあるが、パドックは騎手がまたがる前に見るのが良い。なぜなら、騎手がまたがった後は、馬がレースに行くと分かって興奮しやすく、馬本来の状態が見えづらくなってしまうからだ。

前回の記事では馬の様子・テンションを見るポイントとして、歩法、発汗と周回位置を挙げたが、今回は馬のリズム、首の使い方について解説したい。馬の常歩は4拍子であり、左後肢→左前肢→右後肢→右前肢の順に脚を地面に着いている。この4拍子が安定している状態が、いわゆる“リズム良く歩けている”状態だ。しかしこのリズムを、脚だけを見て判断することはなかなか難しい。

最も簡単な方法は現地でパドックを見て馬の足音を聞くことだが、毎度現地に赴くのも大変だ。そこで役に立つのが首の使い方である。馬は常歩で歩くとき、正面から見ると∞を描くように、また横から見ると前後に首を動かして(具体的に書けば、左後肢→左前肢→右後肢→右前肢の順に脚を着きながら、首を右前方→右後方→左前方→左後方に動かして)いる。このように首の動きは常歩のリズムと連動しているので、首の使い方からリズムの良し悪しを判断できるというわけだ。

そして、この首の動きが大きい時は、馬が後肢をしっかりと踏み込んで体を大きく使って歩いており、良い状態と言え、逆にこの首の動きが小さい時は、緊張していたり筋肉がほぐれていなかったりと体を柔軟に使える状態ではないと考えられ、あまり良い状態とは言えない。ちなみに速歩の時は首が全く動かなくなるのが普通なので、パドックで速歩をしている馬を首の動きで判断することはできない。

毛づやに関しては前回の記事で、GⅠともなると手入れが非常によく行き届いており健康状態も良く、どの馬も毛づやが良いので素人目に判断するのは難しいと述べたが、今回は毛づやに関する豆知識として銭形模様について書き記しておきたい。

銭形模様は栄養斑点とも呼ばれる栄養状態が良い時に馬体に現れる斑点のことで、馬の好調を表しているとされる。背中やお尻、首などに見られることが多く、鹿毛の馬では分かりやすい。しかし、銭形模様が無いからと言って調子が悪いと判断するのは早計であるし、馬の栄養状態が良くてもテンションが高すぎれば能力を発揮できない可能性もあるので、これは参考程度に留めておくのが良いだろう。

馬の様子の後は体型にも目を向けたい。特に馬体重の大幅な(10キロ以上)増減のある馬はよく観察し、太りすぎ痩せすぎなのかどうかを見極めよう。馬の腹のあたりが分かりやすく、太っている馬はカーブが緩やかで痩せている馬は股に向かって切れ上がっている。痩せていてテンションも高いような馬は、評価をやや下げたい。 次は、パドックでの注目馬とチェックポイントを伝授していく。

上位人気でも課題をクリアできなければ下げ

今回、ジャパンカップで上位人気が予想されるワグネリアン、ユーキャンスマイル、スワーヴリチャード、レイデオロ、カレンブーケドールの中で、パドックに注目したいのはスワーヴリチャードとレイデオロだ。

2019年天皇賞秋のスワーヴリチャードⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

スワーヴリチャード(写真は2019年天皇賞秋)はもともと休み明けの戦績がいまひとつで、前走もパドック気配は抜群だったにも関わらず着外に沈んだ。そのため陣営は馬の闘志を引き出すべく坂路での追い切りを重ねており、これが当日のテンションにどのように影響を与えるかが気になるところだ。普段は一人引きでほとんど速歩にならない馬なので、同様の気配であれば問題なし、速歩が続いてしまうような状態であれば評価を下げたい。

レイデオロは気合が乗りやすく、テンションが課題の馬。海外遠征後の宝塚記念では首を振ったり速歩になったりとひどく落ち着かない様子で、馬券圏外に沈んだ。休み明けの前走でもややテンションの上がる様子が見受けられ、メンバーを考えれば満足のいかない結果に。実力はある馬なので、当日落ち着いて臨めるようであれば久々の戴冠も見えてくる。

ワグネリアンは周回が進むと速歩が目立つが、そこからレースに向けてテンションがどんどん上がっていくタイプではないので、パドック中に速歩であってもそこまで気にしなくて良いだろう。

ユーキャンスマイルは前々走の新潟記念及び、前走天皇賞(秋)のパドックでリズムの良い周回が目立ち、適度に気合の乗った様子で精神面の充実さを感じさせた。今回も前走同様であれば人気に応えられそうだ。

カレンブーケドール(写真はオークス)は普段からパドックは好気配で、厩務員をぐいぐいと引っ張るような前進気勢とリズムの良い周回が印象的な馬。

2019年オークスのカレンブーケドールⒸSPAIA

Ⓒ明石智子

久々の牡牝混合でも落ち着いていれば能力は発揮できるだろう。ちなみにオークス時は前述の銭形模様が浮き出ていたので、余力があれば探してみたい。

穴馬のパドックも見逃すな

上位人気馬以外で注目したいのがシュヴァルグランとジナンボー。

シュヴァルグランは海外遠征帰りで人気が落ちそうだが、ジャパンカップ勝利経験に加え国内の2400m以上の適距離レースで掲示板外に沈んだのは実に2016年の有馬記念(6着)にまでさかのぼる。つまり今回のジャパンカップでも能力を発揮できれば好勝負必至というわけだ。年齢もあってか比較的落ち着いているので、パドックでは体型に注目してほしい。太目感なく仕上がっていれば必ず買いたい。

2019年新潟記念時のジナンボーⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ジナンボー(写真は2019年新潟記念)はいつもチャカチャカしており、精神面の成長が待たれる馬。前走新潟記念時もうるさい面を見せていたが、4歳秋を迎えそろそろ大人になってきてもいいはず。どこまで落ち着いて臨めるかがカギとなりそうだ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。