ムーア騎手が短期免許を取得　馬券的に妙味がある条件は？

ⒸSPAIA（写真はゲッティイメージズ）

2016年以降のGⅠ勝利は50勝以上

ⒸSPAIA（写真はゲッティイメージズ）

イギリス所属のライアン・ムーア騎手が2019年11月16日（土）～12月23日（月）まで短期免許を取得した。身元引受調教師は美浦の堀宣行氏。契約馬主は吉田勝己氏。

「アイスマン」の異名を持つライアン・ムーア騎手は、1983年9月18日生まれでイギリス出身。祖父と父も調教師という競馬一家で育った。2000年に障害騎手としてデビューして初騎乗初勝利、2002年に平地競走で初勝利を挙げた。

イギリスの名調教師であるリチャード・ハノンの後押しを受けて、2003年に同国の最優秀見習騎手に輝き、2006年にGⅠ初勝利。この年、182勝を挙げて23歳で英リーディングジョッキーの座に就く。

マイケル・スタウト厩舎の主戦騎手として、2009年にはコンデュイットでキングジョージⅥ世＆クイーンエリザベスSを制覇。2010年にはワークフォースに騎乗してイギリスダービー、凱旋門賞を制するなど、世界を代表する騎手への階段を駆け上っていった。

近年はアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎の主戦騎手として世界を股にかける大活躍をみせ、2016年以降のGⅠ勝利数は50勝以上という驚異の数字を残している。

日本でムーア騎手の名を知らしめたのは2010年のエリザベス女王杯だろう。イギリスから遠征してきたスノーフェアリーに騎乗し、直線では蛇のように内からスルスルと馬群を割ってくる好騎乗で勝利。JRAのGⅠ初制覇を果たした。その翌週に初の短期免許を取得、以降ほぼ毎年短期免許を取得してJRAの舞台でも大活躍している。

日本馬で最も印象に残っているのはモーリスとのコンビだ。2015年にマイルCSを制すると香港に遠征して香港マイルを勝利。翌年は天皇賞・秋、香港Cを制覇するなど、圧倒的なパフォーマンスを引き出した。

ムーア騎手の特徴は、何と言っても力強いヨーロピアンスタイルの騎乗フォーム。内から馬群を割ってくるレースを得意としており、その姿はまさしく“仕事人”と呼ぶにふさわしい。常に馬の力を100%発揮させられる数少ない騎手だ。

体重が54キロと意外と重く、騎乗できる斤量が限られているため、1日あたりの騎乗数は多くはないが、騎乗するからには勝機ありと言っていいだろう。

ダートの単勝回収率は101%

ムーア騎手の日本での成績データを分析した。まずは脚質別の成績を見てみよう。

ⒸSPAIA

逃げが最も好成績で、騎乗数は27回と少ないが、勝率33.3%、連対率44.4%、複勝率63.0％。また先行脚質でも勝率29.9％、連対率48.1%、複勝率59.4％とほぼ同じ成績を残しており、先行させる競馬が得意だと見てとれる。豪快な追い方のイメージが強かっただけに、少し意外な数字だった。

ⒸSPAIA

クラス別の成績では、新馬戦で勝率30.2%、連対率49.2%、複勝率63.5%と好成績を残している。未勝利戦でも勝率27.0%、連対率40.9%、複勝率48.7%で下級条件では無類の強さを誇る。もちろん人気馬に乗るケースが多いので当たり前かもしれないが、馬の能力をしっかりと発揮できている証しだろう。

馬主別の成績についても調べてみた。

ⒸSPAIA

金子真人HDと吉田和美氏の馬での成績がすばらしい。金子真人HDでは最多の10勝を挙げており、勝率34.5%、連対率48.3%、複勝率は58.6%となっている。特に身元引受調教師の堀宣行厩舎所属の馬に騎乗する頻度が高いので、よく覚えておきたい。

また吉田和美氏は勝利数では8勝で3位だったが、勝率は36.4%と高かった。このコンビの成績はモーリスの活躍によるものが大きいが、所有馬には海外のセリで高額落札された外国産馬も多いので、先述の下級条件での騎乗も多そうだ。

最後に芝コースとダートコースの成績を比較する。

ⒸSPAIA

ダートは、勝利数では53勝と芝の70勝より少ないものの、勝率21.2%、連対率37.2%、複勝率47.2%といずれも芝での成績を上回っている。通常、ヨーロッパ所属の騎手はダートが苦手なことが多いのだが、ムーア騎手の場合はズブい馬を動かす能力に長けており、それがこの成績に表れていると思われる。

単勝回収率も101%と抜群。ノーザン系のクラブ馬が出ていないダートのレースでは、個人馬主の馬への騎乗も多々あるので、人気を落とせば妙味がありそう。