LデットーリやRムーアが来日 外国人騎手が短期免許を取得できる条件は?
三木俊幸
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2017年に現行のルール変更
近年の外国人騎手は、年間を通じたほぼ全ての時期に来日し、短期免許で騎乗している。今回は、外国人騎手が日本で騎乗するために、どのような条件をクリアしなければならないのかをまとめた。
外国人騎手の短期免許は、1994年にJRA騎手の技術向上と国際親善を目的に導入された。しかし、負担重量の超過や荒い騎乗、禁止薬物で制裁を受けるなどの問題があったため、2017年に下記の条件(いずれかを満たしていれば取得可能)に変更された。
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「母国でのリーディング上位に入る」という条件は国ごとに基準が違い、イギリス、フランス、北米は1位〜5位までが対象となっている。アイルランド、オーストラリア、香港は1位〜3位まで、ドイツとニュージーランドに至っては1位のみという厳しい条件が設けられており、過去2シーズンの成績が適用される。 また、障害騎手の短期免許の交付条件は「本拠地において過去2シーズンで1位の騎手」と定められている。
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2つ目の「指定外国競走」は全部で56レースあり、ドバイワールドC、英ダービー、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS、凱旋門賞など、9か国のGⅠレースを過去2年と当該年に2勝すれば、リーディング上位に入っていなくても短期免許を取得することができる。ライアン・ムーア騎手は近年リーディング上位には入っていないが、指定のレースを数多く勝利しているため、毎年短期免許で来日することができている。
3つ目は、「過去2年と当該年にJRAのGⅠを2勝することで短期免許が取得できる」ということが条件。これは簡単な条件ではなく、満たしている騎手も少ない。しかし、ダミアン・レーン騎手はわずか2ヶ月の短期免許期間内に、ヴィクトリアマイル(ノームコア)、宝塚記念(リスグラシュー)を制しており、早くも2021年までの短期免許取得条件をクリアした。
なお同時期に取得できる人数は5人までで、新規申請者と騎乗停止処分を1回受けた騎手に加え制裁点数が15点を超えた騎手は、通常3か月まで認められている免許期間が2か月までに制限される。
現時点でミシェル騎手は条件を満たさず
2017年から短期免許の取得条件が厳しくなったことで、それまで来日していた騎手の中には条件を満たせず、来日することができなくなった騎手もいた。その代表的な例として、フランシス・ベリー騎手(2019年4月に引退)が挙げられる。
JRAでは2010年に初来日して以来79勝を挙げる活躍を見せていたが、アイルランドではリーディング3位以内に入ることができず、指定のGⅠレースの勝利もなかった。このことから、以降短期免許での来日はできなくなったのだ。
また、2018年はドイツリーディング12位、2019年はリーディング6位(10月29日現在)のフィリップ・ミナリク騎手も2020年の短期免許は取得できない。明るいキャラクターでファンからも愛されていたミナリク騎手の騎乗が見られないのは残念だが、再び母国でリーディング騎手となり、その姿を見ることができると信じている。
その他、現行の条件では2019年ワールドオールスタージョッキーズでJRA初勝利を挙げ、日本で注目を浴びた女性騎手ミカエル・ミシェル騎手も、短期免許を取得するのは容易ではないだろう。2018年のリーディングは72勝で12位、2019年は22勝でリーディング55位(10月29日現在)と、リーディング上位という条件を満たしていない。
指定のGⅠレースの勝利という面でも重賞すら勝利しておらず、かなり高いハードルを超えなければならない。現実的に再び彼女の雄姿が見られるのは、早くて2020年のワールドオールスタージョッキーズになるのかもしれない。
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