【POG】指名馬に悩んでいるあなたへ 役立つデータをご紹介

門田光生

皐月賞を制したサートゥルナーリアⒸ三木俊幸

Ⓒ三木俊幸

2019-20のPOGは6月1日から開幕

「競馬=馬券」という見立ては間違いないではないのだが、楽しみ方は他にもまだまだある。今回紹介するペーパーオーナーゲーム(POG)もその一つである。いつから始まったのかは定かでないが、以前勤めていた会社でグランドマーチス(1970年代に活躍した障害馬)を指名していた人がいたので、その起源はかなり古いと思われる。

まずは、簡単にPOGの説明をしよう。対象となる年齢の競走馬を指名し、決められた期間内にどれだけ活躍するかを競い合うもの。文字通り指名馬のオーナーになった気分で楽しめるゲームである。

頭数は1~10頭ほど。「他人とかぶらない」「新種牡馬から1頭」「ディープインパクト産駒は1頭だけ」「同じ厩舎は選べない」「東西5頭ずつ」など、多種多様なローカルルールが存在する。

参加人数や指名頭数が多くなると面倒になるのがポイントの計算だが、最近は賞金やポイントを自動的に計算してくれるツールがネット上にアップされている。また、様々な雑誌やサイトでもPOGが行われていて、1人でも気軽に参加できる。POGに関する本や特集もこの時期になるとよく目にするし、完全に世間に認知されたゲームといっていいだろう。

期間は新馬戦~ダービーまでというのが一般的。今年の中央競馬の新馬戦はダービーの翌週、つまり6月の頭に始まる。2歳馬に関する情報は各メディアなどでたくさん出回っており、すでに本命候補を決めている人も多いだろう。

そこで、まだ全馬指名が決まっていない、または隠し玉的な馬はどう選んだらいいのかなど、最後の1ピースを埋められるようなデータを紹介したいと思う(表は全て2014年1月1日~2019年5月19日まで)。

牡馬、セン馬の扱いのうまい厩舎は?

POGの究極の目標といえば、やはりダービー馬を指名すること。とはいえ、まずは1勝を挙げないと話にならない。特に大事なのは新馬勝ちで、強い内容で勝ち上がった日には「もしかしたら」の期待が膨らむ。

そういった夢(妄想?)もPOGには大事で、自分や仲間たちの指名馬の将来性がどうだとか、適性はどうだとか議論するのもまた、POGの楽しみの一つといえる。

新馬戦の牡・セン馬成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

まずは牡・セン馬から見ていこう。厩舎は東が堀厩舎、西は池江厩舎が1位。ともに勝率が素晴らしく、デビューした3頭に1頭は新馬勝ちしている計算だ。東西別に分けると西の厩舎の成績がいい。関東の競馬場で関西馬が新馬勝ちしているシーンをよく見かけるが、それがこの数字に表れていると考えていい。

続いて種牡馬。予想通りディープインパクトが勝ち星、勝率、連対率の全てで圧倒している。意外に思ったのはハーツクライ。成長曲線が緩やかなイメージがあるので、この新馬勝ちの数字には驚いた。また、圏外ではロードカナロアの数字がよく、勝率、連対率とも2~5位の種牡馬より上だ。この先サンプル数が増えてくればトップ5に入るのは時間の問題だろう。

ちなみに、勝利数と勝率順のどちらがいいか悩んだが、やはりPOGは走ってナンボ。勝ち星が多い=それだけ使ってくれるという意味で勝利数の順に並べている。

牝馬の調教師データはがらりと変わる

続いて牝馬。面白いもので、調教師の名前がガラッと変わった。

新馬戦の牝馬成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上位厩舎は牝馬より牡馬の方が在籍頭数が多いのも関係しているのだろう。東の1位は鹿戸厩舎、西の1位は河内厩舎。河内調教師は騎手時代に「牝馬の河内」と呼ばれていたが、調教師になってもその言葉は生きているようだ。

種牡馬の方はキングカメハメハとゴールドアリュールの代わりにクロフネ、マンハッタンカフェがランクイン。注目のロードカナロアは牡馬の時と比べて勝率、連対率ともに数字を下げている。ロードカナロアの代表産駒といえばアーモンドアイなのだが、全体的に見ると牡馬優勢なのが分かる。

馬主は法人クラブが独占

今度は全体で馬主と生産者を分析してみる。昔は「騎手3馬7」という言葉があったが、馬主や生産者もPOGの指名をする上で大事な要素となる。

新馬戦の馬主・生産者成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

まず馬主だが、上位は法人クラブが占めた。これも20年前では考えられないことであって、時代の流れを感じる。種牡馬で考えると、上位5頭を繋養している社台グループが上位を占めているのは当たり前ともいえる。ともかく、法人クラブ(一口馬主)の馬はクラブのHPやパンフレットに詳しく説明があるので、指名の際には参考になるだろう。

生産者も社台系が上位を占めているのだが、その中でもノーザンファームが圧倒的。2位の社台ファームにダブルスコア以上の差をつけており、指名馬が複数取れるシステムなら、ノーザンファーム生産馬を1頭は指名しておきたい。

GIへの道

新馬戦を勝ち上がったら、続く目標は重賞、そしてGI出走となる。そこで、ダービーまでのGI(阪神JF、朝日杯FS、ホープフルS、桜花賞、皐月賞、NHKマイルC、オークス、ダービー)に最も出走させているのはどこか調べてみた。

POG開催期間内のGⅠでの馬主・厩舎・生産者成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

厩舎は池江厩舎が1位。ここ5年半ほどで30頭もの馬をGIに送り込んでいる。馬主はサンデーレーシング、生産者はノーザンファーム。POGで上位に食い込みたいのなら、この3つは絶対に外せない条件となる。

ダート馬を交ぜるのも一つの手

続いてダート。昔と違ってダート路線もだいぶ整備されてきた。交流重賞でもポイントに加算されるルールがあるなら、1頭ぐらい交ぜてみるのも一つの手だ。

POG開催期間内のダートでの馬主・厩舎・生産者成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

2歳戦のダートで絞ると上位厩舎がガラッと入れ替わった。馬体の好みは調教師それぞれ違うもの。大型が好きな調教師もいれば、黒光りする見栄えのいい馬、足の長い馬が好きな調教師もいる。それが厩舎の特徴になることも多い。

1位の武井厩舎は毎年ダートの方が勝ち星が多く、特に今年はダートですでに10勝を挙げている。2歳の交流重賞を2勝したリエノテソーロを手掛けている実績のある厩舎。ダート馬はなかなか指名されづらいので、ダート路線を目指す馬を1頭入れておくのも面白い選択だ。

予想するのが難しい新種牡馬について

新種牡馬について。当然ながらサンプルがなく、どんな産駒が出現するかは現役時代の成績や血統から推測するしかない。しかし、それを予想するのもまた一つの楽しみだし、その年のリーディングを取る新種牡馬の産駒を指名すれば、周囲に一目おかれること間違いなし。

新種牡馬の種付け数ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

当然ながら期待の大きい種牡馬は初年度の種付け数が多いのだが、意外に大事なのが2、3年目。もちろん、種牡馬の体調、値段の変動によって種付け数の増減もあるが、馬産地で初年度産駒の評判が高ければ、次の年の申し込みが増える。

普通は2、3年目と減少傾向にあるところが、逆に増えている種牡馬は産駒の出来がよかったと考えていい。今年でいえば2、3年目とほぼ増減がないエピファネイア、3年目に最大の種付け頭数を記録したマジェスティックウォリアーが狙い目かもしれない。

スタートダッシュを決めるには池江厩舎×ダイワメジャーの馬?

最後に変わったデータを。POGで最初に勝ち名乗りを挙げるのは気持ちのいいもの。そこで、新馬戦が始まる6月から2か月間で最も多く新馬勝ちを収めたデータ調べてみた。

6~8月の新馬戦の種牡馬と厩舎成績ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

すると、厩舎の1位はまたしても池江厩舎。早くに勝ち上がり、そしてGIにも最多頭数を送り込んでいるということである。これは素晴らしい数字といえる。

種牡馬はディープインパクトを抑えてダイワメジャーがトップ。ダイワメジャー産駒は距離に限界こそあるものの、スピードがあって仕上がりも早い。まさにPOG向けの種牡馬といえるだろう。今年もダイワメジャー産駒のアドマイヤマーズがNHKマイルCを優勝。ディープインパクト産駒より競合することは少ないと思うので、血統馬でも一本釣りできる可能性が高い。そういう意味でもお薦め。

以上、データに基づいて分析してみたが、POGを長年やっていると過去に活躍した指名馬の妹弟やその産駒など、愛着のある血統がどんどん出てくる。それを取るのもよし、また対戦相手にしてやられた血統をあえて取りにいくのもよし。普段は見向きもしない午前中のレースに興味が沸いたり、週中も自分の指名馬の情報をネットで調べたりと、競馬の楽しみ方がぐっと広がる。POGをきっかけにしてますます競馬に興味を持ってくれれば、いち競馬ファンとしてうれしく思う。

《関連記事》再び対決!エピファネイア対キズナ 2019年に産駒がデビューする種牡馬たち

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬などの記事も執筆中。

おすすめ記事