レーン騎手が大活躍している理由とは 3つの成功の秘訣に迫る

Ⓒ三木俊幸
44戦13勝、勝率29.5%
常に冷静沈着で、思ったとおりのレースをやってのける。それがダミアン・レーン騎手だ。4月27日から短期免許で騎乗を開始し、ここまで44戦13勝で勝率29.5%、連対率38.6%、複勝率54.5%と抜群の成績を残している。一流騎手といえども、初来日から短期間でここまでの騎乗ができる騎手はそうはいない。そんなレーン騎手について調べてみた。
レーン騎手はオーストラリア出身の25歳。15歳で騎手としてのキャリアをスタートさせ、2013年に重賞初制覇、2014年にはGⅠを初制覇するなど、オーストラリアを代表するダレン・ウィアー厩舎の主戦として、その名を轟かせた。
日本に所縁のある馬では、オーストラリアに移籍したトーセンスターダムに騎乗してGⅠ2勝をあげており、2017/18シーズンはオーストラリアVIC地区2位となり実績を積み重ねていた。
だが、今回の来日が実現したのは、今年2月に下された「ウィアー厩舎、4年間の調教停止処分」があったからとも言える。でなければ、このタイミングでの来日し、これまでのすばらしい騎乗の数々は見られなかったかもしれない。
真面目で礼儀正しい性格
そんなレーン騎手は、3つの成功の秘訣を兼ね備えている。それは①性格の良さ、②実現性の高さ、③柔軟な対応力だ。
まず性格については、競馬場での取材をしていて真面目で非常に礼儀正しい人だと感じた。レースが終わり検量室前に引き上げ、下馬した際には「ありがとう」の一言。当たり前のことだが実はとても大切なことで、できているようでできていない人がいるのも事実。
また、日本の文化に溶け込もうとしている姿も好印象。簡単な挨拶だけでも日本語で答えようとする姿勢を見せ、ジョッキーパンツには初騎乗の時から「D・レーン」とデザインされたものを着用している。
ヴィクトリアマイルの表彰式後に気がついたのだが……そのジョッキーパンツは「HYLAND」というメーカーのもので、日本のメーカーではない。ということは、来日前から準備してきたものではないかと推測する。

Ⓒ三木俊幸
今まで多くの外国人騎手を見てきたが、初日から日本語のジョッキーパンツを着用していた外国人騎手は記憶にない。そこにも「日本の文化に馴染み成功したい」という彼の思いが現れているように感じた。
常に先をイメージした騎乗
先週の京王杯SC、ヴィクトリアマイルの制覇は、クリストフ・ルメール騎手が騎乗停止になったことによる代打騎乗だった。こういったチャンスを得られたことも、運を持ち合わせていたからだろう。
だが、勝利の裏では常に冷静な騎乗。直線で進路がない場面があったヴィクトリアマイルでも、前が空くまで追いだしをワンテンポ遅らせるなど、常に先をイメージした騎乗をした。そんなレースを当たり前のようにやり遂げる実現性の高さはとてもすばらしく、事実、レースで前がふさがり不利を受けるというシーンは、皆無と言っていいほど見られていない。
また、インタビューでもインタビュアーからの質問に丁寧に受け答えし、レースについてもしっかりと冷静に振り返っており、その口調からは知性さえ感じる。25歳という若さでこれだけの対応ができているというあたり、ただ者ではない。
柔軟な思考と対応力の高さ
レースでの対応力についてはどうだろう。まずは脚質別の成績を見てみよう。

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オーストラリアでは、2、3番手で内めの位置を取ることが勝利につながるという。そうしたことからも、過去に来日したクレイグ・ウィリアムズ騎手は先行させることが多かった。
しかし、レーン騎手の場合はどの脚質でも複勝率50%以上の好成績を残しており、型にはまることなくレース展開や馬の個性を活かした乗り方ができているということが見てとれる。柔軟な思考と対応力の高さは、世界トップクラスだと言っても過言ではない。
続いてコース別の成績についてはどうだろう。

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13勝中10勝が芝でのレース。勝率37.0%、連対率44.4%、複勝率59.3%という数字もすばらしく、芝では無類の強さを誇っている。
また、ダートも勝率、連対率こそ平均的な数字だが、複勝率47.1%と好成績を残しており、今のところ初来日の外国人騎手にありがちな、「ダートを苦手とする傾向」は見られていない。今後、慣れてくるとダートでも成績が向上すると予想されるだけに、注視していきたい。
GIでは今週と来週、引き続きルメール騎手からの乗り替わりで有力馬に騎乗予定となっている。もはや代打とは言えないほどの活躍を見せているレーン騎手。今後、どのようなレースを見せてくれるのか楽しみだ。
