【競馬】セン馬にすると競走寿命が延びるのは本当か?過去3年のデータから見えたものとは?

Ⓒ三木俊幸
セン馬にすると競走寿命が延びるのは本当か
種牡馬としての価値が重要視される日本の競馬界において、セン馬にすることをためらうオーナー、調教師は多い。しかし海外競馬を見てみると、オーストラリアや香港では何のためらいもなく、去勢手術を行い、セン馬にすることが多い。すなわち一日でも長く競走生活を続けて多くの賞金を稼ぐことが望まれているのだ。
一般的には、セン馬にするとホルモンバランスが変わり、筋肉が柔らかくなるため競走寿命が伸びると言われているが、果たしてそれは本当なのだろうか。過去3年のデータから分析してみる。
まずは過去3年のセン馬と牡馬の成績について見ていこう。

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セン馬の成績を見てみると勝利数は393。平地競走での勝率は5%台で、牡馬とは差がある。そんな中で勝率、連対率、複勝率で牡馬に勝っているのが障害競走。平地では勝ち上がれない馬だったとしても、去勢によって気性を落ち着けることで距離が長い障害レースに活路を見いだしていると言える。

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次に年齢別の成績を調べてみた。2~4歳くらいはさすがに牡馬に負けるが、年齢が上がるにつれて、牡馬と成績が同等、もしくは上回る率が出てくることが分かる。
セン馬で活躍している馬は?
2019年4月8日現在、JRAに登録されているセン馬は376頭。そのうち30頭が平地、3頭が障害のオープンクラスに在籍している。ではどのセン馬が多くの賞金を獲得しているのか見ていこう。

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1位はダート戦線で活躍しているノンコノユメ。現在までに獲得した4億4966万円断トツでトップだ。3歳時にはユニコーンS、ジャパンダートダービー、武蔵野Sを勝利し、その後のチャンピオンズCでも2着となるなど、安定した活躍を見せていたが、同時に気性面での難しさもあった。
そこで4歳夏に去勢され、セン馬になった。気性が安定することで、今まで以上に活躍が期待されていたが、不振に陥り去勢は失敗だったのかと思われた時期もあったが、2018年の根岸Sで豪快な差し切り勝ちを見せた。そして勢いそのままにGⅠのフェブラリーSでも勝利し、見事に復活を果たしている。
障害馬の中では、7位のマイネルプロンプトがトップだった。同馬は3歳の夏までJRAに所属していた際には、未勝利すら勝てない馬だった。その後オーナーが変わり、去勢されると地方で3連勝、中央に再転入すると500万下でも安定した成績を残し、その後障害を使われるようになった。7歳を迎えた現在までに障害で5勝を挙げており、障害界で成功しているセン馬の一頭だと言っても過言ではないだろう。
これらの馬は、ほんの一握りの成功したパターンで、実を結ばない馬の方が多いのが現実である。しかし、その裏にはオーナーや調教師、牧場側の「少しでも走る可能性にかけたい」という強い思いがあってのことだということを忘れてはならない。いち競馬ファンとして牡馬、セン馬を問わず、全ての競走馬が一日でも長く競走生活を続けられることを願いたい(データは2019年4月10日現在)。
