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ニュージーランドTはワイドファラオがV ウオッカの縁がつないだドラマ

2019/04/08 15:00
三木俊幸
ワイドファラオ,Ⓒ三木俊幸

Ⓒ三木俊幸

角居厩舎のワイドファラオが勝利

「なんと牝馬のウオッカ!先頭ゴールイン!」

ラジオNIKKEI佐藤泉アナの実況が場内に響き渡った東京競馬場のゴール手前の一般席。友人が徹夜で確保してくれた席に座り、ウオッカが目の前を通過した瞬間に感じた、異空間に吸い込まれたかのような感覚と今まで経験したことが無いくらいの鳥肌が立った出来事は今でも鮮明に記憶している。

牝馬として64年ぶりに日本ダービを制し、GⅠ7勝を挙げた名牝ウオッカが4月1日に蹄葉炎のため、イギリスの牧場で死亡した。突然の訃報は競馬ファンに大きな衝撃と悲しみを与えた。そんなウオッカを追悼して、競馬場には献花台と記帳台が設置されたほか、4月6日の3場のメインレースは「ウオッカ追悼競走」としてレースが施行された。

中山競馬場で行われたニュージーランドTを制したのは、ウオッカも在籍していた角居勝彦厩舎のワイドファラオ。好スタートを切って、600mを35.9で通過する絶妙なペースで逃げる展開となった。

3コーナーでミッキーブラックがまくったのでペースアップしたが、内田騎手は「外から来られたが、それ以上に手応えがよかった」とコメントしたように、馬なりのまま先頭は譲らなかった。ゴール前では3番手の内で脚をためていたメイショウショウブが急追するが、内田騎手の檄に応える快心の勝利だった。

2着のメイショウショウブと3着のヴィッテルスバッハまでの3頭が5月5日に行われるNHKマイルCの優先出走権を手にした。注目の穴馬ショーヒデキラは中団からいい脚を使って伸びてきたものの、5着という結果に終わっている。

「そんな偶然があるのか」

レース後の検量室前、誰もがやっぱりウオッカと縁がある厩舎の馬が勝ったという思いにふけっていたが、実はドラマはそれだけではなかった。黒のヘルメットをかぶり、黒のスーツに黒縁メガネの男性がつぶやいた。

「ウオッカの娘を担当していたんです」

感慨深げにそう話していた男性は、競馬場に来られなかった角居調教師に変わり、代理で臨場していた調教助手だったのだ。その場にいた人からは、次々と「そんな偶然があるのか」と驚きの声が上がるなど、まさにウオッカの追悼競走にふさわしい結末だった。

ワイドファラオ関係者,Ⓒ三木俊幸

Ⓒ三木俊幸

名馬が厩舎全体にもたらすものは大きい。そして得た経験は、人馬とも次の世代へと受け継がれていく。そんな縁を紡ぐ素晴らしいドラマを現場で見ることができ、改めて競馬のすばらしさを感じることができた。だから競馬はやめられない。