視線の先は世界戦へ!中山記念の本命はスワーヴリチャード

Ⓒ明石智子
開幕週は逃げ・先行が有利
中山記念は今年で93回を数える歴史のあるレースだ。以前は有力馬の始動に京都記念、阪神大賞典、日経賞などを選択する傾向が強かったが、ステイヤー受難の時代背景もあって、ここをステップに大一番へ挑むパターンが増えてきた。
特に目立つのが海外遠征の前哨戦として使われる傾向があり、近5年で4頭の勝ち馬が同年に海外遠征し、なおかつ結果を残している。当然ながら出走馬のレベルも上がっており、頭数がそろわない年でも好勝負が行われる傾向にある。

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また2000年から開幕週に固定。前開催から1か月空くこと、気温が上がって芝の生育が良くなる時季というのも関係があるのだろうか、逃げ、先行脚質が待機組を圧倒している。軸にするなら差し脚質より先行タイプを選択する方が無難といえる。
上り馬より実績馬
前走データでは、下表の通りGⅠを使った馬が半分を占めている。海外遠征を見据えている馬が勝利していることからも分かるように、上り馬より実力馬優勢とみるべきか。

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また、中山に実績がある馬の活躍も目立つ。当地での実績がなかった7頭中、サクラアンプルールとステファノス以外は小回りの重賞で連対実績があった。

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上記の表は過去5年、中山芝1800mの重賞戦で勝ち星の多い種牡馬順に並べたものである。1位は毎度おなじみのディープインパクトだが、勝率、連対率とも抜けていいわけでもない。東京や京都だと勝利数に比例することが多いのだが、このあたりはさすがトリッキーな中山コースといったところか。勝率、連対率とも20%を超えているハーツクライ、ゼンノロブロイ産駒が出走してくれば要注意だ。
結論はスワーヴリチャード
データが出そろったところでまとめに入ろう。そうそうたるメンバーがそろって軸選びに頭を悩ませるが、冒頭に書いたように勝ち馬はここをステップにして海外進出するケースが、近年は特に目立っている。今年も実力馬が多数出走してきたが、そのうち実際に海外競馬へ登録し、すでに招待を受諾している馬が2頭いる。それはディアドラ(ドバイターフ)とスワーヴリチャード(ドバイシーマクラシック)。
問題はどちらを選択するかだが、軸にふさわしいのはスワーヴリチャードの方。発馬さえ決まれば前で運べるタイプで脚質面はクリア。続いて中山実績だが、重賞勝ちはないもののメンバーのそろった有馬記念で見せ場十分の4着があれば、GⅢ勝ち以上の価値はある。何より、中山1800mの重賞戦で好成績を残しているハーツクライ産駒というのは心強い。以前から左回りが得意と陣営が公言していた馬だが、古馬になって右回りの大阪杯を勝利。もう苦手意識はないはずだ。ここをステップとして、いい形で海外へ羽ばたいてもらいたい。
ディアドラはすでに海外で実績を残しているところは魅力だが、中山に良績がないのと差し脚質なのがマイナス。とはいえ、さすがはハービンジャー産駒だけあって秋華賞やクイーンSなど、小回りの競馬では実績を残している。中山に実績がないと侮れず、有力な1頭であるのは間違いない。
エポカドーロは先行脚質であること、そして過去に皐月賞で連対した馬が5回馬券に絡んでいるのは大きなプラス材料である。前走の菊花賞は気性を考えると距離が長かったと考えるのが正解か。皐月賞馬という額面通り、本質は中距離馬だろう。ステイゴールド直仔のオルフェーヴル産駒だから小回りへの適性はおそらく高い。何といっても強いといわれる4歳世代のクラシック馬である。海外遠征に積極的な厩舎でもあり、近い将来はきっと世界を舞台に戦っているに違いない。
同じオルフェーヴル産駒のラッキーライラックは中山はおろか小回りを走ったことがない。脚質や父系から適性はあるかもしれないが、やはり未経験というのはマイナス材料。
ステルヴィオはスプリングSを勝ち上がって皐月賞でも4着。先行脚質かといわれれば微妙だが、マイルCSのように器用な立ち回りもできる。減点材料は少なく、これも有力な相手候補といえる。
ウインブライトは昨年の覇者でコース実績は文句なし。世界で戦える器かどうかはさておき、昨年も3頭のGⅠ馬を相手に勝ち切ったように、このコースならGⅠ級の能力を発揮する馬とみていいだろう。今年は昨年より多い5頭のGⅠ馬が相手。コース巧者が実績馬を上回れるのかに注目だ。
データからも堅い予想になってしまったが、今回は海外遠征を視野に入れているハーツクライ産駒のスワーヴリチャードに期待したい。相手は実績馬のディアドラ、エポカドーロ、ステルヴィオ、ウインブライトの4頭を推す。
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。
