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JRA最後のGⅠを締めくくるのは「ホープフル」な良血馬

2018/12/26 15:00
門田光生
競馬

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中山に場所を移して様相が変わった

今年で35回を迎えるホープフルSだが、その前身は2013年まで阪神で行われていたラジオNIKKEI杯2歳S(GⅢ)。ラジオNIKKEI杯2歳Sの勝ち馬はそうそうたるもので、ここ10年(6回)で見てもロジユニヴァース、ヴィクトワールピサ、エピファネイア、そしてワンアンドオンリーと5頭のクラシック馬を輩出している。このレースの勝ち馬はまさに「希望に満ちた」未来が待っていたというわけだ。

当時中山で行われていた朝日杯FS(GⅠ)より格は下でも質は上。それは業界内でもよく言われていたことで、そんな背景もあってGⅡ、そして昨年に待望のGⅠへと昇格した。

しかし、中山へ移行して1回目の勝ち馬シャイニングレイ、2回目のハートレーとともに故障でクラシックに出走できず。一昨年のレイデオロはダービーを勝って面目躍如となったが、昨年の勝ち馬タイムフライヤーはこのレース以降、馬券にすら絡んでいない。

いろいろ理由はあるだろうが、一番の原因は阪神から中山へ場所を移したからではないかと思っている。暮れの中山といえば馬場が荒れに荒れているイメージ(実際のところ、馬場整備の技術が向上して以前ほど悪くはないのだが)。そんな馬場で激走すれば反動が怖く、将来のある2歳馬にそこまでのリスクは背負わせたくない、というのが陣営の正直な気持ちではないか。

クラシック級の素質馬がもうひとつ集結しないのはそこが大きいように感じる。逆に中山から阪神へ移った朝日杯FSの方がレベルが上がったのは何とも皮肉な話である。

キャリアの浅さは関係なし!

このレースは重賞に昇格して今年でまだ5回目。データ的に心もとないが、まずはこちらの表を見ていただきたい。

3着以内条件,ⒸSPAIA

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キャリア成績,ⒸSPAIA

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新馬戦で連対していること、そしてキャリアは浅くても全く問題ないことから、素質だけで勝負になるレースといえる。加えて当該距離である2000mで連対経験があればなおいい。今年のメンバーでキャリア2戦以内かつ新馬、2000mで連対している馬はキングリスティア、ジャストアジゴロ、タニノドラマ、ブレイキングドーンの4頭。

続いて、種牡馬別成績は、下表のようになる。

3着以内種牡馬成績,ⒸSPAIA

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キングカメハメハ、ディープインパクト、ステイゴールドの著名種牡馬が複数好成績を挙げているが、その他にも5頭いることからも特に気にする必要はなさそう。朝日杯FSが中山で開催していた時、バラエティーに富んだ種牡馬の産駒が活躍していたのと似ている。

3着以内条件,ⒸSPAIA

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上の表は中山芝2000mで過去4年50走以上産駒が走った馬の成績である。1位はディープインパクト。これに関してはさすがのひと言。キングカメハメハ、ステイゴールドは勝利数こそ多いが、勝率ではディープに負けているところが興味深い。

名牝からまた1頭、名馬誕生の予感

今年の出走馬で最も印象的な勝ち方をしたのがサートゥルナーリア。母は名牝シーザリオで、兄に菊花賞とジャパンカップを勝ったエピファネイアや、朝日杯FSを勝ったリオンディーズがいる超良血馬だ。また、2つ上のグローブシアターはこのレースの3着馬でもある。

圧巻だったのは2戦目の萩S。手綱を持ったまま外を回って勝つ馬はよく見かけるが、持ったままインを突いて楽勝する馬はほとんど記憶にない。2000mは初めてだが、母系から距離延長はむしろ好都合。今年はロードカナロア産駒アーモンドアイが1年を通して大活躍。締めくくるのもロードカナロア産駒となるか。

続いては上記のデータで取り上げたブレイキングドーン。前走は切れる馬にやられたが、自身も競走除外明けの一戦で、その影響も多少はあったはず。交わされてからの粘りが上々で、今回につながるレースだったといっていい。馬名の由来は「新時代」。まさに次代の担い手にふさわしい名前だ。

注目のジャスタウェイ産駒アドマイヤジャスタは、やや重心の高いところがあるので中山の急坂が合いそう。この条件と相性がいいディープインパクト産駒のヴァンギャルドも注目の1頭だろう。

有馬記念の反省が早くも活きる

ところで、有馬記念で推したキセキはゴール前で力尽きて5着。これに悔いはないのだが、自分の甘さを痛感したのは、ブラストワンピースの能力を見抜けなかったこと。3歳世代が強いといえばそれまでだが、この馬の父はハービンジャー。産駒は傾向としてダートより芝、短距離より中長距離が得意で、そして長い直線より小回りを好む。

これはまさに大種牡馬ステイゴールドにそっくり。当初は個人的に「底力のないステイゴールド」と評していたのだが、産駒が3年目からGⅠでも結果を出すようになって「底力のない」冠を返上。ますますステイゴールドに近づいた印象だ。そしてステイゴールドもそうだったように、ハービンジャーも枠からはみ出した産駒は大物になる可能性が高いようだ。

ハービンジャー,ⒸSPAIA

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ハービンジャーGⅠ連対してないやつ,ⒸSPAIA

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上記はハービンジャーの重賞馬を表にしたもの。注目は内回りのGⅠで馬券に絡んでいる全ての馬が、苦手としている直線が長いコースの重賞を勝っていること。逆に、外回りの重賞を勝ってGⅠで連対していないのはヒーズインラブだけ。そのヒーズインラブも勝ったのは中山の外回りで、東京や京都、阪神、新潟など広いコースや外回りでは重賞で連に絡んでいない。

何が言いたいのかといえば、産駒が苦手とする直線が長いコースで重賞を勝てる馬は、GⅠ級の馬に育つ可能性が高いということだ。毎日杯、新潟記念を勝ったブラストワンピースはまさにそのパターン。それに気づかなかった自分は愚かというよりほかない。
 
前置きが長くなったが、東京スポーツ杯2歳Sを勝ったハービンジャー産駒のニシノデイジーは、内回りのGⅠで通用する確率はかなり高いとみている。

20年以上競馬に携わってきた者として、ホープフルSが1年の締めくくりとなることにどうもしっくりこないが、今回ばかりは有馬記念のリベンジの機会を与えてくれたことに感謝しなくてはならない。今年最後のGⅠはサートゥルナーリアとニシノデイジーの1点勝負という結論。ズバッと当てて良い年を迎えたいものだ。

《ライタープロフィール》門田 光生(かどた みつお) 競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。晩年は編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。