【ラジオNIKKEI賞回顧】サノノグレーターが重賞初制覇 福島を知り尽くした鞍上の巧みな仕掛けが光る

ⒸSPAIA
時計が速かった福島開幕週
夏の福島開幕週の名物重賞ラジオNIKKEI賞はサノノグレーターが勝ち、重賞初制覇。2着ディールメーカー、3着リッツパーティーで決着した。
勝ち時計1:45.2は、1998年の吾妻小富士オープンでアンブラスモアが逃げ切って記録したレコードを0.1秒更新する記録だ。馬柱からアンブラスモアの名が消えるのはベテラン勢にとって惜しい気もするが、記録は破られるためにあるもの。28年間も破られなかったことを讃えたい。
それにしても、開幕週の福島はレコードが連発していた。この日の3Rでは芝1200mの2歳レコードが更新され、4Rはそのレコードタイ。さらに前日メインのバーデンバーデンカップでは芝2000mのレコードが0.6秒も更新された。ついでにダートでも1150mのレコードが破られるなど、開幕週からインパクトある競馬が続いた。
これだけ速い時計が出る馬場とあって、サノノグレーターのレコード更新はそこだけを評価することはできないが、その競馬っぷりとレース展開は讃えてしかるべき内容だったといえる。
速い時計が出る馬場状態を意識し、先行勢は積極的に運んで前で大きな集団を形成。馬群はほぼひと塊で、それぞれが“勝負は前”と考えていたことが透けて見えるような隊列だった。
といっても、1000m通過59.0は馬場を考えればそこまで速くない。アンブラスモアのレコードに並んだ24年のこのレースの1000m通過は58.4だった。ちなみに、このときも勝ったオフトレイルに騎乗したのは田辺裕信騎手。福島の仕掛けどころを知り尽くした男だ。
この24年はラップに緩みがなく、残り1000mすべて11秒台という先行勢に厳しい競馬になったが、今年は向正面で12秒台が2区間入り、ペースが上昇したのは残り800m。逃げたディールメーカーはペースをコントロールできていた。むしろその後ろの好位勢が早めに仕掛け、かえって脚を失っていった。やはり前への意識が高かった。
残り400mにかけた田辺騎手の仕掛け
対して、勝ったサノノグレーターは前優位のなか、先に先行勢がまくり気味に動いても仕掛けなかった。残り400m標識を過ぎてから、田辺騎手は合図を送り、大外を追いあげる。
これで間に合うのかと不安になったが、それは私の余計なお世話。前半のリズムと勝負所の手応え、サノノグレーターが使える末脚、すべてを踏まえた上での仕掛けだった。ラスト800mは11.7-11.4-11.4-11.7なので、600~400mの11.4で勝負に出なかったことが末脚につながった。
サノノグレーターの戦歴をさかのぼると、2歳12月の葉牡丹賞(中山芝2000m)で似たような競馬で直線勝負から勝利をあげており、もともと小回り向きの器用な加速力と末脚の持ち主。その特性はスプリングSの0.2秒差5着などでも発揮されていたが、その経験が今回の勝利につながった。
父グレーターロンドンはこの世代が4世代目で、重賞は初年度のロンドンプランがあげた小倉2歳S以来2勝目となった。勝率が高いのは福島、新潟、中京、中山で、勝利数は関東の新潟、東京、中山が目立つ。
距離は自身が重賞を勝ったマイルが中心になるが、2400mの勝率も高く、1200、1400mも悪くないので、距離の守備範囲が広い。また、芝ダートどちらでも結果を残せるので、万能型の才がある。まだまだ成績を伸ばすポテンシャルを感じる。
選択肢が広がった2、3着馬
2着は逃げたディールメーカー。前を狙う好位勢に対して強気な姿勢を見せつつ、飛ばしすぎない絶妙なペース配分だった。
好位勢の動きに合わせて残り600mからペースを上げさせられた面はあるにせよ、ソツないレース運びはできた。前走のニュージーランドトロフィーなど、マイル戦でスピード耐性と持続力を鍛えた成果が距離を延ばして発揮できた形だ。楽にいかせてもらえる1800mもよさそうで、選択肢が広がった。
3着リッツパーティーは逃げるディールメーカーについていく形で上手く脚をため、ポジションの優位もいかせた。2勝を含め過去3戦すべて東京だったので、小回りへの対応はカギだったが、一定の結果を残せた。
父は宝塚記念を勝ったミッキーロケット。福島はそこまで結果を残せていないが、中山や小倉に良績が集まっており、器用な立ち回りは強み。こちらも今回で選択肢が広がったのではないか。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
《関連記事》
・【ラジオNIKKEI賞】結果/払戻
・【ラジオNIKKEI賞結果速報】サノノグレーターがレコードV! 2着は逃げたディールメーカー
・【ラジオNIKKEI賞】4角5番手以内の80%が連対 京大競馬研の本命はディールメーカー