【函館スプリントS回顧】ピューロマジックが夏のタイトルへ好発進 持ち味を引き出した北村友一騎手の好騎乗

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ピタリとハマった北村友一騎手のスタイル
サマースプリントシリーズ開幕戦にして、夏の北海道に競馬の幕開けを告げる函館スプリントステークスはピューロマジックが逃げ切り、重賞4勝目。2着エーティーマクフィ、3着レイピアで決着した。
函館初日は朝から雨に見舞われ、馬場発表は稍重のままメインを迎えた。早朝に計測されたクッション値は6.5。洋芝で比較的軟らかい馬場の函館といえど、「6.5」はここ3年間でも記録されていない。天候は午後から回復しており、メインにこの数字を当てはめることはできないが、開幕週の緩い馬場は予想する側の頭を悩ませた。
おまけに、先行型のクラスペディアが放馬による疲労のため競走除外になり、逃げると目されたインビンシブルパパはさほど先手を主張しにこなかった。その要因の一つが、ピューロマジックのスタートだろう。
抜群のスタートで1馬身前に出たため、その相手に競りかけて先手を奪うのは無謀にうつった。結果的にその判断がピューロマジックの逃げ切りにつながったわけで、スタートひとつでレース展開を決めた。いかにも小回りのスプリント戦らしい競馬だった。
労せずハナに立ったピューロマジックが刻んだラップは11.8-10.5-11.1の33.4。2走前のオーシャンSを32.0でぶっ飛ばした過去を考えると、かなり楽なペースといえる。
また、ピューロマジックもムキになることなく落ち着いてリズムよく走れており、負担の少ない入りになった。この点はリズムと折り合いを重視し、柔らかく騎乗する北村友一騎手のスタイルによるところも大きい。
この前半の運びがあったから、後半600mを11.2-11.2-11.6の34.0でまとめることができた。ラスト200mは落ちたとはいえ、極端な差はなく、2着エーティーマクフィ以下の猛追にも余裕があった。
優秀すぎる牝系
ピューロマジックはこの勝利で重賞4勝目。過去のタイトルは葵S、北九州記念、アイビスサマーダッシュで、すべて5月以降の夏場にあげている。夏は牝馬という格言通りだが、この格言も夏は平坦の競馬場での開催が多いことが関係している。
ピューロマジックはまさにその典型で、タイトルはすべて坂がないコースであげたもの。急坂がなく、ラストまでスピードが発揮できる舞台を得意としており、今年もサマーシリーズで主役を張るだろう。
また、今回の落ち着いた序盤の入りをみても、逃げなくても競馬を組み立てられる。これが逃げ馬ならマークされる危険もあるが、控える形がとれれば競馬の幅も広がる。
母メジェルダはメディーヴァル、バグラダス、ピューロマジックとスプリント能力の高い馬たちを立て続けに送った。この牝系は4代母の輸入繁殖カスパースカイゴールドから村田牧場が30年近く連綿とつないできた血だ。
持ち込みの3代母メジェールは芝・ダートの短距離でJRA通算5勝をあげ、2代母メリュジーヌもダート短距離で同3勝と非常に優秀で、母メジェルダは競走馬としては1勝止まりだったものの、上記3頭を村田牧場で産んだ。
競走成績、繁殖成績ともに抜群の牝系であり、ピューロマジックはそれを次につなげる役割も担う。ひとつ下のメロディーロードが先に繁殖入りしているが、牝系をつなぐラインは多いに越したことはない。まずは無事に競走生活を全うしてほしいと願う。
能力と適性を示したエーティーマクフィ
2着は中団から差したエーティーマクフィ。3、4コーナーはなるべく外を回り過ぎないように運び、最後の直線はタイミングよく外に出して、進路をクリアできた。軟らかい馬場とはいえ、開幕週らしく差し馬には厳しい馬場だったことを踏まえると、最大限の競馬だったのではないか。
能力と適性の高さを存分に示す結果で、これで函館芝は【2-1-0-0】。ただこの先、函館芝1200mのオープンは中1週の青函Sしかない。連覇がかかるレースだが、ハンデ戦であり出走するかどうかは微妙。「次走買い」とはちょっと言いにくい。
3着レイピアは今年に入って重賞連続2着、高松宮記念5着とすっかり軌道に乗ってきた。ここもその充実ぶりを示すレース内容で、好位から安定感ある競馬だった。
後ろにいたエーティーマクフィが先に仕掛け、ワンテンポ遅れたのは痛かったが、差はその程度しかない。抜群の手応えだったので、もう少し自分から動くような競馬を展開できれば、勝利も見えてくるだろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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