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【宝塚記念回顧】武豊騎手の戦略が生んだ「離れた2番手」 メイショウタバルに見えた凱旋門への道

2026/06/15 10:10
勝木 淳
2026年宝塚記念、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

メイショウタバル、味な競馬で連覇達成

上半期の総決算ドリームレース宝塚記念はメイショウタバルが制し、連覇を決めた。2着クロワデュノール、3着ダノンデサイルで決着した。

レース直前の豪雨は表彰式のころに止み、まるで宝塚記念のために降ったかのようだった。雨雲レーダーを確認すると、六甲山の東側、宝塚市周辺だけが真っ赤に染まり、非常に狭い範囲のゲリラ豪雨だったことがわかる。

武豊騎手や石橋守調教師もレース後に「亡くなった松本オーナー(先代の松本好雄氏)が降らせたかのようだった」と語ったように、明らかにこの豪雨はレースに大きな影響を与えた。なにせ良馬場が稍重を飛び越え、一気に重馬場へ変わっており、尋常ではない雨量だった。

雨が降ってパフォーマンスを上昇させるのは上位人気馬のなかではメイショウタバルだけ。競馬はダービーを運がいい馬が勝つと言われるように、自分たちでは選べない運が介在する部分が大きい。その最たるが天候と馬場。レース直前の重馬場がメイショウタバルにプラスに働いたのは間違いない。

とはいえ、メイショウタバルは馬場だけで豪華メンバー相手に勝ったわけではない。外枠に入り、さらに外にミステリーウェイがいる状況下で、先手をとりにいかなかった序盤の入り、結果的に先手をコスモキュランダが奪ったが、あえて行かせて、2番手に収まった戦略が見事だった。

おそらくコスモキュランダを追いかけていれば、メイショウタバルは目の前にいる馬を追い抜きに行こうとしたはずで、追いかけずに離れた2番手で落ち着かせていった。これは安田記念のシックスペンスと同じ状況であり、行きたがる騎乗馬を冷静にさせ、かつ3番手以下を自分のペースにはめ込んでいった。

まさに武豊スペシャルといっていい。メイショウタバルもシックスペンスも前進気勢のコントロールが課題だったが、そこに武豊騎手の騎乗馬を導くような強みが相乗効果を生んでいった。


勝負を分けた4コーナー

コスモキュランダがつくったペースは序盤600m35.4、800m47.8、1000m通過1:00.3と決して速くなかったが、1000m通過後から12.0-12.1-12.1と緩めすぎず、一定のリズムをつくった。

後続の体力を削る形もメイショウタバルの得意とする展開であり、残るは前のコスモキュランダを捕まえるタイミングと背後にいるクロワデュノールとの間合いだけ。武豊騎手はそこを決して間違えない。3コーナーすぎから差を詰めていき、直線に入ってからコスモキュランダをかわす。絶妙だった。

さらに芸術的だったのは4コーナー出口のコーナリング。加速しながら効率よくコーナーをパスしていき、ここでクロワデュノールとの間合いがわずかだが開いた。結果的にこの差がゴール板でのクビ差につながった。

これは武豊騎手もそうだが、メイショウタバルの走りによるところが大きい。決して器用そうには見えないが、阪神のコーナリングは上手い。坂や重い馬場を苦にしない強みは確かに凱旋門賞でも通用しそうだ。

この勝利で宝塚記念史上初となる父子連覇を達成した。ゴールドシップは阪神大賞典を3連覇し、宝塚記念連覇と阪神に滅法強かった。

また、ステイゴールド系はオジュウチョウサンなど特定のコースで連覇を達成する馬が多い。得手不得手がはっきりしており、得意舞台なら何度でも勝つ。個性がはっきりしているのがステイゴールド系の特徴で、これが愛されやすいキャラクターにつながる。

とはいえ、メイショウタバルはこれまで逃げ馬という強烈な個性の持ち主だったが、2番手から宝塚記念を勝ったことで、幅を広げた。その成長を見守れたこともステイゴールド一族を愛する者としてはうれしい限り。精神的な逞しさもまたフランス挑戦のあと押しになる。


タフさを示せたクロワデュノール

クロワデュノールは春の古馬三冠に挑むも惜しくも2着に敗れた。メイショウタバルが控える競馬をとったことで、マークする形で進められ、優位なポジションをとれたものの、4コーナーで勝ち馬に離され、そこで生じた差が結果として2着につながった。

4コーナーでややバランスを崩しているように映り、そこは馬場の影響だろう。道悪で極端にパフォーマンスを落とさない名馬らしい素養は感じたが、今回はメイショウタバルの加点が上回った。だが、この春、GⅠ3戦1、1、2着は立派な戦歴であり、タフさも証明した。悲観することはなにひとつない。

ダノンデサイルは最後の最後にコスモキュランダをとらえ、3着にあがった。ゴール前の底力というか、最後まで諦めない姿勢はさすがダービー馬といっていい。

一方で昨年のジャパンCから4戦連続3着と善戦止まりが続く状況は歯がゆい。どの舞台でもそれなりに走れるものの、明確な適性というか強みが見えなくなりつつあり、そこは陣営も悩ましいのではないか。

4着コスモキュランダは有馬記念と同じく積極策で見せ場をつくった。こちらは強みがはっきりした馬で、鞍上もそれを踏まえた組み立てができる。厳しいシチュエーションで強みを発揮するタイプなので、前哨戦は案外な結果に終わりやすいが、本番で買い忘れないようにしよう。今回は「それ4」だったが、昨年の有馬記念の再現は十分考えられる。


2026年宝塚記念、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。

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