【ヴィクトリアマイル】三冠牝馬アパパネが単勝1.5倍ブエナビスタを撃破 新旧女王の頂上決戦をプレイバック

前年の年度代表馬vs三冠牝馬
今週はヴィクトリアマイルが開催される。過去にはウオッカやヴィルシーナ、ソダシらが制したレース。今回はその中から2011年の一戦をピックアップして当時を振り返っていく。
2011年のヴィクトリアマイルは1強とも、2強対決とも捉えられる一戦だった。単勝1番人気に支持されたのは、前年覇者ブエナビスタ。2009年の二冠牝馬で、2010年にはJRA賞年度代表馬にも選出された誰もが認める競馬界を牽引する存在である。牡馬との混合戦でも多くの実績を残してきた。
前走のドバイワールドカップこそ大きく敗れたが、昨秋は天皇賞(秋)で1着→ジャパンCで2着(降着)→有馬記念2着と、能力の高さは明白。牝馬同士のここでは負けられない──。前年同様に単勝1.5倍の圧倒的人気を集めた。
そんな名牝に待ったをかけようとしたのが、2番人気アパパネである。2年前に2歳女王の座に就きと、昨年は牝馬三冠を達成。エリザベス女王杯でGⅠ初黒星を喫したものの、GⅠでの3着以内率は依然100%と、こちらも圧倒的な安定感を誇っていた。
4歳始動戦のマイラーズCでは牡馬相手に4着に敗れたが、これまでも前哨戦ではチューリップ賞2着、ローズS4着と敗北しており、大舞台での巻き返しを信じるファンは多かっただろう。それでもなお、単勝オッズはブエナビスタの1.5倍に対し、4.1倍と大きな差がついており、ブエナビスタへの信頼感は高かったと言える。
ほか、3番人気レディアルバローザ(11.7倍)以下にも、アニメイトバイオ、ショウリュウムーン、コスモネモシンら実力馬が顔をそろえていた。
息を呑んだ、ラスト数秒の攻防
ほぼ揃ったスタートからレディアルバローザやアプリコットフィズが前をうかがう中、鞍上に促されてオウケンサクラが先頭に立つ。同馬が単独で後続を突き放していくが、2番手以下はかなり密集した隊列となる。
ブエナビスタとアパパネはともに中団後方を追走。外を回りながら進んでいくアパパネを見ながら、ブエナビスタはその一段後ろで構える。アパパネの鞍上はデビューからコンビを組んできた蛯名正義騎手。対するブエナビスタは、今回が初コンビとなる岩田康誠騎手だった。対照的なコンビを背に、2頭は静かに火花を散らしていた。
3、4コーナーに差しかかっても、オウケンサクラは6馬身ほどのリード。しかし徐々に後続が差を詰め、3馬身ほどのリードで最後の直線を迎えた。各馬が横に広がるが、アパパネとブエナビスタはまだ後方。ブエナビスタはアパパネの後ろから、さらに外へ持ち出される。
残り400mを過ぎると、先頭のオウケンサクラにグランプリエンゼル、レディアルバローザが迫る。2頭がオウケンサクラを交わしたところで、スタンドの歓声は一段と大きくなった。外からアパパネとブエナビスタが、ジリジリと差を詰めてきたのだ。
だが、先頭のレディアルバローザは驚異的な粘りを見せる。一方のアパパネも力強く伸び、さらに後方からはブエナビスタが鋭く迫る。
ラスト50m付近、ついにアパパネがレディアルバローザを交わす。すると今度は、ブエナビスタが外から一気に並びかけた。差したアパパネが、最後の最後で追われる側に。粘るアパパネ、迫るブエナビスタ。差は詰まる。しかし、詰まり切らない。
息を呑む数秒の攻防は、アパパネの粘り勝ちでゴールを迎えた。ブエナビスタはクビ差の2着、さらにクビ差でレディアルバローザが3着に食い込んだ。
蛯名騎手が渾身のガッツポーズを見せる。「ブエナビスタ、敗れる」というファンのざわめきと、三冠牝馬アパパネへの賞賛がスタンドに響き渡った。
ブエナビスタが敗れこそしたが、馬券的には2番人気→1番人気→3番人気の順当決着。三連複は620円と堅実な配当となった。一方、馬単が740円とやや付いたことからも、当時のファンたちのブエナビスタへの厚い信頼が伺える。4着には14番人気の伏兵グランプリエンゼルが来たが、3着レディアルバローザとの差は1馬身半。やはり上位人気3頭が強かった。
チェルヴィニアvsカムニャック オークス馬2頭の対決が実現
アパパネはその後も、同年のエリザベス女王杯で3着、翌年のヴィクトリアマイルでも5着と存在感を示し続けた。しかし、このヴィクトリアマイルが現役最後の勝利となった。
引退後はジナンボーやラインベックらが活躍。さらに長女のアカイトリノムスメは桜花賞4着、オークス2着から秋華賞を制し、母娘制覇という偉業を達成した。現在もアマキヒらが活躍を続け、今年の2歳馬はマカヒキ産駒のククイプカが控えている。
ブエナビスタは続く宝塚記念も2着と惜敗し、夏を越しての天皇賞(秋)は4着と敗北。しかし、続くジャパンCでは久々の勝利を挙げ、同年の最優秀4歳以上牝馬に選出されている。母としてもソシアルクラブやタンタラスといった牝馬を多く送り出し、今後も牝系を広げていくだろう。
ブエナビスタvsアパパネは、年度代表馬vs三冠牝馬であると同時に、オークス馬同士の対決でもあった。そして今年のヴィクトリアマイルにも、直近2年のオークス馬であるチェルヴィニアとカムニャックが参戦予定。さらに、先輩側がサンデーレーシング、後輩側が金子真人オーナーの勝負服という構図まで重なっている。
当時のような1強オッズにはならない見込みだが、世代を代表する2頭がどのような火花を散らすのか、注目の一戦となりそうだ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ストレイトガール、ドウデュース。
《関連記事》
・【ヴィクトリアマイル】過去10年のレースデータ
・【ヴィクトリアマイル】阪神牝馬S組は5着以下が近10年で3勝 カナテープ、ラヴァンダに逆襲のシナリオ
・単複回収率100%超の逃げに妙味、複勝率44.3%誇る川田将雅騎手 東京芝1600mを徹底検証