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【大阪杯回顧】クロワデュノールが捲土重来のGⅠ3勝目 「前半58.1」武豊騎手の完璧な逃げをねじ伏せる

2026/04/06 10:30
勝木淳
2026年大阪杯、レース結果,ⒸSPAIA

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恐ろしいまでに精緻なメイショウタバルの逃げ

春の中距離王決定戦・大阪杯はクロワデュノールが制し、GⅠ3勝目。2着メイショウタバル、3着ダノンデサイルで決着した。終わってみれば上位人気に支持されたGⅠ馬3頭による競馬だった。三者三様、テーマと見どころの詰まった極上のGⅠレースは改めて競馬のおもしろさを伝えてくれた。

まずは2着に敗れたメイショウタバルから。昨夏宝塚記念を制してから半年、ちょっとしたスランプが続いた。休み明け、先を見据えた天皇賞(秋)はスローに落として6着。あえてスローの逃げを打った意図は有馬記念への意識があったとみた。

その有馬記念では前日に入った中山の出張馬房で落ち着けず、気性面の弱点を露呈し、13着と大敗。そのリズムの悪さから気性の課題は長引くかもしれないと思わせた。

だが、そこから3ヵ月。陣営はあえて待った。もっとも力を発揮できる阪神を。それもただ待っていたわけではない。この日、パドックに姿をみせたメイショウタバルは明らかに有馬記念とは内面の落ち着きが違っていた。レースまでに消耗しなければ力を出せる。陣営は理想の状態にもっていった。

苦心の末の立て直しを武豊騎手は絶対に無駄にはしない。最初の一完歩で遅れをとりながらも、あえて軽く促し、出していく姿勢をみせる。かつてのメイショウタバルなら怒ってしまう場面だが、そんな素振りもなし。明らかに心が落ち着いていた。

そうなれば、武豊騎手が得意とする精密機械のような逃げも可能になる。前半1000mは12.4-11.0-11.5-11.7-11.5、58.1。メイショウタバルが消耗しすぎず、ライバルたちが追いかけにくい。58.1という数字は完璧だった。

その後は12.1-11.9-11.8-11.6-12.1。勝負の前に絶妙なタイミングでひと腰入れてからスパートしていった。完璧な逃げだったといっていい。


北村友一騎手の戦略も冴える

それを差したのがクロワデュノール。こちらも背景を考えると、大阪杯は負けられない一戦だった。

ダービーで世代の頂点に立ちながら、マスカレードボール、ミュージアムマイルが古馬を破ってGⅠ馬になったため、この世代のトップではなく、横並びの一員になった。本来なら一歩前にいなければならないダービー馬にとって、タイトルを上積みしないと前に出られない。ジャパンCから4ヵ月。こちらも捲土重来を期す戦いに挑んだ。

関西馬ながら関西圏初登場のクロワデュノールにとって初めての阪神競馬場、それも内回り、さらに大外枠とクリアせねばならない関門が立ちはだかった。それも序盤のポジション争いで解決しており、北村友一騎手の戦略が冴えた。

大外からから位置をとりにいくと、1コーナーで外を回り過ぎて、収まらない可能性があるが、ここでクロワデュノールに前を狙わせず、自然流で収まりのいいポジションをとった。かといって後ろになりすぎず、前にアドバンテージを与えない位置につけた。

1コーナーの入りをみて、これは勝てると思わせてくれた。外目を追走し、包囲網をつくらせず、4コーナー手前で自ら動いて、後ろをひきつけつつ、突き放すという心を折るような仕掛けもにくい。直線に入った段階で、相手はメイショウタバル1頭だった。

しかし、自分のリズムを貫いたメイショウタバルもしぶとく、最後の攻防はどちらの馬券も買っていなくても声が出た。どちらの背景も応援に値するだけのものがあり、困るほど。ゴール板できっちり差し切ったクロワデュノールを讃えるよりほかにない。


メイショウタバルとの付き合い方

メイショウタバルは次の宝塚記念に連覇をかけるだろう。急坂があり、単調にならない阪神はコースレイアウトも心落ち着く環境もベスト。最有力と考えていい。

それを見据えて一つ提言すると、前後半58.1-59.5というペースを演出するメイショウタバルには一緒に好走できる馬とそうでない馬がいる。分かりやすく分類するなら、持続力型と瞬発力型。メイショウタバルは持続力型の力を引き出す。

クロワデュノールは持続力に長けており、位置をとったり、早めに動くことで瞬発力型に対し、優位に戦える。対して、3着ダノンデサイルはどちらかといえば瞬発力寄りであり、2着から1馬身差の3着は奮闘した結果といっていい。

ちなみに昨年の宝塚記念は2着ベラジオオペラ、3着ジャスティンパレスと中長距離チャンピオン。4、5着のショウナンラプンタ、チャックネイトと持続力型が上位を独占した。メイショウタバルが宝塚記念連覇に近づくなら、相手はこの手のスタミナ志向か持続力型になる。馬券戦略上、この分類は頭に入れておいてほしい。

3着ダノンデサイルは流れも距離もどちらかというと不向きであり、好走は底力によるものだったといえる。前半の追走や勝負所のモタつきをみてもダノンデサイルにとっては忙しすぎた。

もう少しゆったり構えられる距離がベストであり、やはり東京芝2400mで最大限の力を発揮するようだ。繰り返すが、得意とはいえない条件下で好走したのは王者にしかできない芸当であり、悲観することはなにもない。

クロワデュノールの父キタサンブラックがGⅠ昇格元年の勝ち馬であり、GⅠ10年目にして初となる父子制覇を達成したが、その裏で父子そろって「それ4」を記録したのが4着タガノデュード。父ヤマカツエースは17、18年大阪杯の3、4着。親子で「それ4」は決して名誉な記録ではないが、タガノデュードの直線の伸び具合は価値があった。

小倉大賞典同様、短い直線での差し脚は見どころがあり、内回りの鬼に育つ可能性がみえた。鋭い差し脚をいかそうと外回りに出走してくれば、差し負ける場面を想定したくなるが、短い直線なら買い。人気になりにくいキャラクターも心強い。


2026年大阪杯、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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