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【小倉牝馬S回顧】開幕週の瞬発力勝負を外からねじ伏せたジョスラン “ポジション名人”ルメール騎手の判断も光る

2026/01/26 10:58
勝木淳
2026年小倉牝馬S、レース結果,ⒸSPAIA

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ルメール騎手、JRA全10場重賞制覇達成

冬の小倉開幕初日のメイン小倉牝馬Sはジョスランが勝ち、重賞初制覇。2着ボンドガール、3着ココナッツブラウンで決着した。小倉のハンデ戦らしく、1番人気ジョスランの単勝オッズが3.6倍と混戦模様だったが、終わってみればそのジョスランが勝利を収め、C.ルメール騎手はJRA全10場制覇を達成した。

混戦に拍車をかけたのがレース展開の読みにくさだった。主導権を奪うのは格上挑戦の軽量馬か重賞で逃げた経験があるエリカヴィータか。

大方はそんな予想だったが、ふたを開けてみれば、ハナは枠順を利したブラウンラチェット。内枠勢のスタートが比較的よく、逆に外枠は少し遅れた形になり、エリカヴィータも前に入られる形になってしまい、先手を奪えなかった。

そんな事情もあり、意外な並びになったとはいえ、ブラウンラチェットのハナは意表を突かれた。初角を上手く乗り切った形だったが、先手に慣れていない分、ペース配分が難しかったようだ。

1000m通過59.5は開幕初日の良馬場を踏まえると、スローペースに近く、馬群は一団で進んでいった。11秒台に突入したのは残り600mからと遅く、競馬自体は上がりの競馬になった。そのラップは11.5-11.6-11.4。牝馬限定戦らしい瞬発力勝負になった。

勝ったジョスランは枠なりのコース取りから中団の外を追走し、コーナーでじわりと加速しながら速い上がりを乗り切った。一見、開幕週で不利と思われた外枠だったが、それを逆手にとるような戦略はさすがルメール騎手といったところ。動きたいときに動けるポジションをとり、流れを読んで先に勝負を仕掛ける。改めてポジション名人であることを知らされた。


偉大なるケイティーズの血

勝ったジョスランはおなじみエフフォーリアの妹。母ケイティーズハートも偉大だが、その母の母ケイティーズはさらにその上をいく。

子孫の重賞勝利は名牝ヒシアマゾン、GⅠ3勝アドマイヤムーンやスプリンターズSを勝ったスリープレスナイトなど30勝を数える。日本にしっかり根を張った牝系の代表格であり、もはや欠かせない血といっていい。

ケイティーズハートの産駒はジョスランのほかにもペリファーニア、イゾラフェリーチェ、エヴィーヴァと牝馬が多く、枝葉をさらに広げてくれそうだ。エフォーリアのような大物がこの牝系から出る日を楽しみにしたい。

2着ボンドガールはこれが7度目の重賞2着になった。まだ1勝馬であることがちょっと信じられない。エタリオウなど時代ごとにこの手のなかなか勝ちきれない馬がいるが、どうしても重賞1勝が遠い。今回の2着でJRA重賞未勝利馬の重賞2着回数がサウンズオブアースと並びトップタイになった。

勝ちきれない要因の一つは折り合いの難しさ。マイル戦へのシフトも折り合いをつけやすいという意図があった。今回は再び2000mに舞台を移したが、やはりその分、前半、折り合いに気をつかったのは事実。ジョスランと同じ外枠に入りながら、道中は内へ寄せて、馬群に入れる形をとった。折り合い重視の姿勢がみてとれる。

その分、3コーナーからじわじわと外を意識して進めたものの、どうしても馬群をさばく分、ジョスランの仕掛けに対し、遅れてしまう。記録した上がり600m33.4は小倉芝2000mで記録された上がり600m最速タイ。1986年以降のデータを調べても、今回のほかに3度しか記録されていない。

直線が短いコーナー4つのコース形態を踏まえると、おそらく究極に近いタイムであり、よく2着まで押し上げたといえる。仕掛けが遅れたとはいえ、コーナー通過順をみると、きっちり3、4コーナーで順位を上げており、ボンドガールの性質を踏まえた最高の競馬だった。現状、これ以上は難しそうで、やはり広いコース向きではある。


収穫があったココナッツブラウン

3着ココナッツブラウンはボンドガールと同じく追い込み一手の脚質だったが、小回りを踏まえ、中団から競馬を進められたのは収穫だった。スローペースで追走しやすかった面もあるが、この形ならもう少しチャンスは出てきそうだ。

とはいえ、いつもより前につけたことで、末脚は追い込んだときほど繰り出せなかった。もどかしい部分であり、競馬の難しさでもある。後ろすぎるからと前に行けばいいというものでもないのか。このジャッジはやってみないと分からないというのが正直なところ。

陣営が今回のレースをどう解釈するかは次走にならないとなんともいえないが、個人的には中団にとりつく形の方がいいのではないかと考える。母ルアーズストリートの姉ブロードストリートは持続力が武器であり、この系統はダートをこなす馬もいて、ロングスパートが似合う。

3番人気4着テレサは最内枠を利して徹底したイン狙いで上位に顔を出したが、スローの瞬発力勝負になった分、上位馬たちの切れに屈した。ローズS2着をみても、こちらも持続力勝負型。おまけに2000mは少し距離が長い可能性もある。


2026年小倉牝馬S、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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