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【阪神JF】アルテミスSは好内容の3着、タイセイボーグが本命 穴馬はスウィートハピネス

2025/12/13 17:30
山崎エリカ
2025年阪神ジュベナイルフィリーズのPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

中団以降に控えた馬の活躍が目立つ

阪神ジュベナイルフィリーズの舞台となる阪神芝1600mは初角までの距離も最後の直線距離も長く、展開の振れ幅が広いコースだ。しかし、このレースに関しては短距離路線で結果を出した馬が多数出走してくる影響もあり、2歳戦ながら緩みなく流れる傾向にある。

阪神開催時の過去10年を見ても、極端なハイペースが2019年と22年の2回。一方、ややスローペースになったのは17年のみ。この年は前走1200m出走馬が不在で、前走芝1400mで逃げた馬もいなかったため、前走1800mで逃げていたラスエモーショネスがレースメイクをしたことでスローになった。

脚質別成績も逃げ~中団が7勝、逃げ~先行まででも4勝と前からの押し切りも目立っているが、それらは15年メジャーエンブレム、16年ソウルスターリング、19年レシステンシア、20年ソダシといった強豪ばかり。馬券圏内で見ると中団以降が2着9回、3着8回と大活躍している。


能力値1~5位の紹介

2025年阪神ジュベナイルフィリーズのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 スターアニス】
前走は芝1400mの中京2歳Sで2着。7番枠からやや出遅れ、押して中団外まで挽回して追走。道中でもじわっと3列目の外まで上がって3角に入る。

3~4角でも3列目の外で仕掛けを待ち、4角で前の馬を壁にしながら出口で外に出し切って直線へ。序盤で好位列からすっと伸びて先頭に立ったが、外からキャンディードに3/4差まで詰められる。

ラスト1Fでも踏ん張っていたが内に刺さり、なぜか左ではなく右鞭を入れてゴール目前でラチに接触。そこでキャンディードに捉えられ、クビ差で惜敗した。

当時はコンクリートレベルの高速馬場で、前後半3F33秒3-34秒9というかなりのハイペース。前には厳しい展開だったが、序盤で位置を挽回しながらラスト1Fでも加速し、3着に7馬身差を付けたことは高評価できる。

また、勝ったキャンディードが3~4角で中団内目を通し、前が下がってくるタイミングでスムーズに外に誘導して完璧に立ち回ったのに対して、こちらは相手よりも前の位置で進め、3~4角では外目を回るロスを作っており、内容は本馬のほうが上だ。

ただ、ラスト1Fで内に刺さったのは苦しかったからだろう。かなりのハイペースだった小倉芝1200mの未勝利戦でも2列目から最後の直線で一気に突き抜けて7馬身差で圧勝しているように、本馬はスピード色が強く、現時点では距離延長や雨予報での加点材料は見つからない。

しかし、ファンタジーS優勝馬フェスティバルヒルやアルテミスS優勝馬フィロステファニなど、実績馬の相次ぐ戦線離脱で例年よりも能力値上位馬が手薄であることを考えると、通用の余地を残している。

枠の並びを見ても、本馬より内にテンの速い馬は少なく、好位の内目をロスなく立ち回れそうな点も好ましい。

【能力値2位 マーゴットラヴミー】
前走は白菊賞(1勝クラス/京都芝1600m内)を勝利して2戦2勝。そこでは11番枠から好スタートを決め、軽く押して進めると内からハナを主張したエスティヴァリスにじわっとプレッシャーをかけて最終的にはハナへ。坂の上りから3角の下り坂にかけてペースを落としたが、そこまで遅くない流れで進めた。

4角で仕掛けを待ち、後続に1馬身半差で直線へ。序盤すっと突き放してリードを2馬身半ほどに広げると、ラスト1Fでは内に刺さったが、右鞭で矯正しながら余裕を持って3馬身差で完勝した。

当時は標準馬場で、前後半4F47秒2-46秒4の平均ペース。2歳1勝クラス戦としては流れており、逃げ切るのはそこまで楽ではなかったはず。ラスト1Fで内に刺さったのも、最後は苦しかったからだろう。

過去10年の阪神JFにおける白菊賞勝ち馬の成績は【0-1-0-5】。白菊賞は秋の京都開催最終日の時計の掛かる馬場で行われ、2歳馬にとっては負担が大きいことや、さらにそこから中1週しかなく疲れが取れにくいことも影響して、昨年のプシプシーナのように2桁着順に大敗するケースも少なくない。

唯一の好走馬は2017年2着のリリーノーブルで、同馬は翌年の桜花賞で3着、オークスでも2着とクラシックで活躍した馬だった。また、その年の白菊賞は前後半4F49秒2-47秒1と極端なスローペースとなり、比較的消耗の少ないレースでもあった。

本馬は末脚型のリリーノーブルとは違い、前に行ってこそのタイプ。ハイペースに巻き込まれる危険性もあるが、キャリア2戦で白菊賞を勝利した馬がここで能力値上位にランクインするのはリリーノーブル以来。競走馬はデビュー3戦目くらいまでは着実に上昇することも多く、ここも警戒が必要だ。

【能力値3位 アランカール】
前走・野路菊S(OP/阪神芝1600m外)を勝利して2戦2勝。4番枠から出遅れ、促したが二の脚でも置かれて単独最後方からの追走。道中も前から離れた位置で軽く促しながら進め、最後方列の外まで挽回して3角に入る。

3角でじわっと前との差を詰めてひとつ外に誘導し、4角でローザレイアの後ろから外に出して直線へ。序盤で追われてしぶとく伸びて2番手に上がり、ラスト1Fでは3/4差ほど前にいたスウィッチインラヴを捉え切って突き抜け、3馬身半差で圧勝した。

当時はコンクリートレベルの高速馬場で、前後半4F47秒9-45秒6とかなりのスローペース。前有利の展開を出遅れ、最後方からから早い段階で前に取り付いての圧勝だった。

前が団子状態だったことで楽に前に取り付くことができた面はあるが、ここでは上がり3F2位のスウィッチインラヴを1秒2も上回る上がり3F33秒3を記録しているように、断トツの内容だった。

ただ、福島芝1800m新馬戦のデビュー戦でもやや出遅れ、二の脚も遅く最後方に下がり、向正面で3番手まで押し上げて4馬身差で圧勝しているように、大味な競馬をしている点が不安だ。

ゲートはそこまで悪くないが、二の脚でどうしても置かれてしまうので、ここも後方からの追走になるだろう。その上で4番枠となると、位置を下げ切って外を狙う形になりかねない。

そうした不安はあるが、二の脚で置かれるのはスピード不足というよりも口向きの悪さがそうさせている面もあり、成長力や馬具の変更で変わる要素はある。

まだキャリア2戦で、前走後に休ませて成長を促した効果で変わってくる可能性も視野に入れたい。

【能力値4位 ショウナンカリス】
前走は京都芝1400mのファンタジーSで2着。8番枠からやや出遅れ、コントロールしてやや後方からの追走。道中はペースが上がらずやや掛かっていたが、3番手までじわっと外から中団に進出すると折り合いがついた。

3~4角では中団外目で仕掛けを待ち、4角出口で外に誘導して中団の外から進出したが、ここで少し置かれる。

序盤の伸びは地味で、まだ3列目付近。ラスト1Fでしぶとく伸びたが、中目を捌いて抜け出したフェスティバルヒルにはクビ差及ばずの2着までという結果だった。

この日は稍重スタートだったが、ファンタジーSの頃にはほぼ回復して標準馬場。前後半5F35秒3-34秒0のスローペースで前有利の展開ではあったが、馬場の内側が荒れており、外差し有利だった。

実際に外から差して本馬とハナ差の3着だったメイショウハッケイは、次走・白菊賞に出走して1番人気に支持されていたが、マーゴットラヴミーから0秒8離された5着に敗れている。前走から1Fの距離延長で好位からレースを進めた影響もあるが、本馬も今回は距離延長に加えて大外18番枠。位置を取りに行って苦しくなる可能性が高く、ここでは狙いにくい。

【能力値5位 タイセイボーグ】
2走前の新潟2歳Sで2着好走。3番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながら好位の中目を追走。道中では折り合いを意識し、一列下げると中団の内目に押し込まれてしまう。

3~4角では中団の最内で進めていたが、ここで逃げ馬が前を離し、やや離れた4列目で直線へ。序盤で中目に誘導しながら追われてじわじわと伸び、ラスト2Fでは3番手争い。ラスト1Fで内から伸びたフェスティバルヒルにハナ差まで詰められたが、ハナ差で2着を死守した。

勝ち馬リアライズシリウスには4馬身離されたが、当時は高速馬場で前後半4F47秒8-45秒6というかなりのスローペース。前有利の展開で単独2番手から進めていた相手には展開利があり、そもそも今年の新潟2歳Sはこれまでに行われた牡馬も含めた重賞でもっとも指数が高かったレースで、離されてしまったのは仕方ない。

また、フェスティバルヒルにハナ差まで追い詰められてはいるが、同馬はその後のファンタジーSの勝ち馬であり、今回ここには出走してこない。

前走・アルテミスSでは3着に敗れたが、1番枠から出遅れて最後方からの追走となり、最後の直線では馬場の荒れた内を通った。それでもメンバー中最速の上がり3Fタイムを記録しているように、本馬は芝1600mで末脚を生かしてこそだ。

今回は17番枠。この舞台は大外枠でもそこまで不利はないが、本馬のように末脚型の馬がロスを嫌って勝ちに行くと脚が溜まらず、末脚が不発に終わるリスクはある。

しかし、中団くらいで脚を温存できれば、緩みない流れを利する形で上位争いに加われるはず。乗り型に制約がつくが、人気薄のここは本命に推したい。


穴馬は白菊賞の2着馬スウィートハピネス

スウィートハピネスは前走・白菊賞2着。3番枠から五分のスタートを切ったが、そのあと挟まれて後手を踏む形。しかし、そこから徐々に挽回して3角ではマーゴットラヴミーの後ろにつけた。

3~4角でも2列目の内で進めていたが、4角でペースダウンすると外から被されて進路がなくなり、仕掛けを待たされる形に。直線序盤で内を捌いて2列目に上がり、ラスト1Fで食らいつくバースデイフライトらを振り切って2着を確保した。

当時は標準馬場で、前後半4F47秒2-46秒4の平均ペース。2歳戦としてはレースが流れた前半で2列目まで押し上げ、最後の直線でもしっかり脚を伸ばしている。しかもこの日は最後の直線では荒れた内よりも外のほうが伸びたが、外から食らいつく馬たちを振り切った点も高評価できる。

また、この白菊賞は5着馬がファンタジーSの3着馬メイショウハッケイであるように、ファンタジーSはもちろん、アルテミスSをも上回る指数で決着している。それゆえに同レースの勝ち馬であるマーゴットラヴミーは疲れを残す要素を残してしまったが、本馬は小さな不利がいくつか重なったこともあり、能力を出し切っていない。

アルテミスSを回避してここを目標に調整され、乾坤一擲の抽選にかけたギャラボーグも穴馬で面白いと見ていたが、同馬は前哨戦をスキップして疲れを残さない近年の穴馬のトレンド。枠に恵まれたこともあり、過剰人気になってしまった。

そのぶん、スウィートハピネスはわりを食って過小評価されている。この馬を穴でお勧めしたい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)スターアニスの前走指数「-14」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.4秒速い

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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