【阪神JF】前走距離と馬体重も要チェック アルバンヌは素質・適性ともメンバー中屈指(訂正)

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傾向解説
2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズ。地力差の大きい2歳戦だけに素質の見極めが最重要ですが、仕上がりの早さやハイペース適性など素質が高いだけではクリアできない壁も少なくありません。本記事では2歳戦に強い血統を中心に、阪神JFのレース傾向を整理していきます。
まず、紹介したいデータは「前走距離別成績」。朝日杯フューチュリティステークスや桜花賞でも同様の傾向にありますが、阪神JFにおいても1600m以上からのローテーションの成績が高水準となっています。
日本競馬は芝1600~2500mを中心に番組が構成されており、2歳戦においても1500m以下のレースレベルは総じて低い傾向にあります。そのため、距離延長馬はよほど強い競馬を見せた馬でない限り軽視するのがセオリーといえるでしょう。

<前走距離別成績>
1500m以下【2-1-4-71/78】
勝率2.6%/連対率3.8%/複勝率9.0%/単回収率17%/複回収率26%
1600m以上【8-9-6-77/100】
勝率8.0%/連対率17.0%/複勝率23.0%/単回収率37%/複回収率70%
※過去10年
また、「馬体重別成績」にも要注目。阪神JFでは一定以上の馬体重がある馬の方が好走率も高い傾向にあります。
馬体重にはさまざまな要素が関係しており、あくまで一側面ではありますが、筋肉質でガッチリとした馬体の馬の方がスピードや早熟性の面でも期待が持てるため、2歳GⅠで好走するための素質につながるというわけです。迷った時は「馬体重460kg以上」を手がかりにしてみてはいかがでしょうか。

<馬体重別成績>
459kg以下【0-7-5-98/110】
勝率0.0%/連対率6.4%/複勝率10.9%/単回収率0%/複回収率45%
460kg以上【10-3-5-50/68】
勝率14.7%/連対率19.1%/複勝率26.5%/単回収率75%/複回収率60%
血統面では、オーストラリアで一大父系を築き上げたデインヒルに注目。オーストラリア競馬は2歳戦と短距離戦が充実しており、そのカテゴリーを牽引してきたのがデインヒル父系です。
同父系がつたえるスピードと早熟性は日本の2歳戦においても非常に強力で、馬券圏内の好走馬以外にも2020年5着ヨカヨカ(10番人気)、2021年5着ナムラクレア(6番人気)、2022年5着ミシシッピテソーロ(16番人気)など、早期から活躍できる馬を多く輩出しています。

<デインヒル内包馬>
該当馬【4-1-0-16/21】
勝率19.0%/連対率23.8%/複勝率23.8%/単回収率144%/複回収率84%
※過去10年
また、サンデーサイレンスを経由しないHalo系の血も活躍が目立ちます。
サンデーサイレンスは1990年代以降の日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬ですが、JRAでのGⅠ勝ちの2/3は芝2000m以上でのものという芝中距離指向の強いタイプ。現2歳馬で同血脈を持たない馬は少ないですが、母方からサンデーサイレンスらしさを強化するような仕掛けがあると本レースでの好走率は高くなるでしょう。
代表的な血筋にはGlorious Song = Devil's Bag、Machiavellian = Coup de Genie (バゴの母母)、グッバイヘイロー(キングヘイローの母)などが挙げられます。
【注目血統馬】
☆アルバンヌ
母プティフォリーは仏GⅠ3勝馬Persian Kingの半妹。初仔から2025年フローラステークス3着馬タイセイプランセスを輩出し、2番仔の本馬はアドマイヤマーズ産駒の牝馬に出ています。
父は二冠牝馬エンブロイダリーを筆頭に牝馬に活躍馬が偏っており、母がGalileo系×デインヒル系という組み合わせは2025年ローズステークス2着馬テレサと共通。牝馬の芝マイラーとしては欧州血統主体の配合形もピッタリです。
本馬は前走馬体重480kgと水準以上の馬格も有し、前走は芝1600mのサフラン賞を快勝。素質、適性ともにメンバー中屈指の好配合馬です。
☆ヒズマスターピース
母母Imperial Beautyは2001年アベイユドロンシャン賞を制したスプリンター。母イプスウィッチは仏GⅢ2着馬で、本馬の半兄ヴェローチェエラは2025年函館記念をコースレコードで勝利しています。
本馬は晩成傾向の強いスクリーンヒーロー産駒ですが、母方にデインヒルの血を持つ馬は2018年京成杯とセントライト記念を制したジェネラーレウーノや、2020年新潟2歳ステークス2着馬ブルーシンフォニーがおり、若駒時から活躍できる馬が多い傾向にあります。
加えて前走馬体重が496kgで、東京芝1600mの赤松賞を快勝。阪神JFのレース傾向にもピッタリ合う伏兵馬です。

※「2025年ローズステークス勝ち馬テレサ」と記載しておりましたが、正しくは「ローズステークス2着馬テレサ」でした。お詫びして訂正いたします。(12月11日19時20分)
《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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