【ジャパンC】“内枠有利”で追い風クロワデュノールを本命視 穴はサンライズアース

山崎エリカ

2025年ジャパンカップのPP指数,ⒸSPAIA

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内枠有利の舞台

ジャパンCは1週前にCコースへと替わり、馬場がかなり高速化することもあり、過去10年では馬番1番が【3-2-1-4】、2番が【3-1-1-5】。馬番1~6番までで9勝している。外枠の馬は、海外馬で最後にジャパンCを勝ったアルカセットのように、1角で最内に入れないと勝ち負けするのは難しい。2015年に15番枠のショウナンパンドラが優勝しているが、同馬も1角で内側に入れていた。

この傾向は超高速馬場で中盤でもペースが落ちにくく、走破タイムが速くなることも影響している。スローペースなら2桁馬番にもチャンスがあるが、それでも2022年に2億8千400万円の報奨金を懸けて出走したシャフリヤールが15番枠で2着に敗れており、決して有利とは言えない。

能力値1~5位の紹介

2025年ジャパンカップのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 サンライズアース】
3走前の阪神大賞典で国内で断トツの指数を記録した馬。ここでは9番枠から五分のスタートを切り、促してじわっと先行しハナを取り切る。スタンド前でもコントロールしてかなりのスローでレースを支配し、向正面で徐々にペースを引き上げていく。それでも遅かったため、マコトヴェリーキーが内から一気に動くと、同馬を行かせて2番手の外で3角に入った。

3~4角で内のマコトヴェリーキーを目標にひとつ外から仕掛け、4角で同馬に並びかけて直線へ。序盤で追われて楽に抜け出すと3馬身差。ラスト1Fでそのまま突き抜けて6馬身差で圧勝した。

このときは高速馬場で、前半5F63秒1-中盤5F62秒4-後半5F57秒8のスローペースだったが、レース最速はラスト5F目(3角手前)の11秒2。かなり仕掛けが速かったなか、先頭を取り返して突き抜けた内容は濃い。

2走前の天皇賞(春)は3走前に自己最高指数を記録した後の疲れ残りの一戦だった。さらに、2角では好位の外から2列目に押し上げ、本馬がマイネルエンペラーをけしかける形となり、2周目の向正面からペースアップ。ラスト7F目からペースが上がったことで先行馬総崩れの展開となったなか、4着に粘ったのはスタミナがあればこそだ。

このように本馬はトップスピードこそ速くないが、スタミナはあるタイプ。超絶スローペースだった昨年の日本ダービーでも最後方追走から前のコスモキュランダがマクるとそれを追って進出し、3角では先頭列に。3~4角で3頭分外を回るロスを作ったことで、4角では2列目まで下がりながらも、最後まで踏ん張って4着を死守している。

前走の京都大賞典では逃げたが、向正面でペースを落とすとドゥレッツァに捲られて抵抗する形。3~4角でじわっと仕掛け、4角出口では外に膨らむ場面がありながらも最後までしぶとく伸びていた。内有利の馬場を中団最内で上手く立ち回ったディープモンスターにラスト1Fで抜け出されて半馬身差の2着に敗れたが、しっかり前の位置を取ったことは好感が持てる。

今回、同型はホウオウビスケッツのみで先行型が手薄。ホウオウビスケッツは距離不安があり、さらに鞍上がハイペースの逃げを嫌う岩田康誠騎手である。同馬の2番手で進め、道中で捲ってペースを引き上げるか、阪神大賞典のように自ら逃げて、他馬に捲らせてペースを引き上げることができれば一発ありそうだ。

【能力値2位 ダノンデサイル】
昨年の有馬記念では逃げて3着だったが、以降は末脚を活かす形で上昇し、今年はドバイシーマクラシックを優勝した。 そのドバイシーマクラシックは3番枠からまずまずのスタートを切ったが、外にヨレてやや位置取りが悪くなり、中団最内を追走。そこから折り合いに苦労しながらもコントロールして進める。向正面で前のレベルスロマンスが捲って先頭に立ったが、それでもさほどペースが上がらなかった。

3~4角でも中団最内で進め、4角でじわっと仕掛けながら上手くシンエンペラーの後ろから直線で外に誘導。序盤で3列目からすっと伸びて一気に先頭列まで上がる。ラスト1Fでしぶとく抜け出して、外から迫るカランダガンに1馬身1/4差と余裕を持って勝利した。

このときは5F通過がおおよそ65秒の超絶スローペース。カランダガンに徹底マークされていたが、ラスト3Fで仕掛けて外に出してからの反応の鋭さ、一瞬のキレがすさまじかった。

前走の英インターナショナルSは、ドバイシーマクラシックを大目標にした後の始動戦。ここでは優勝馬オンブズマンのラビットとして出走していたバーキャッスルの2番手を追走。道中は同馬から10馬身以上離れた位置で進めていたが、約900mもある最後の直線で20馬身くらい離されたために、早仕掛けしたのが主な敗因とみる。

前走で能力を出し切っていないので、ここで走れても不思議ない。ただし、今回は14番枠と外枠であることや、海外帰りの一戦で急仕上げ気味なのが不安材料だ。

【能力値3位 セイウンハーデス】
2023年の七夕賞で重賞初制覇を飾った後に屈腱炎を発症。約1年5ヵ月に及ぶ長期休養を余儀なくされた。復帰後の2戦は不振だったが、再調整した2走前のエプソムCで見事な復活を果たした。

エプソムCは好スタートを決めたが、無理をせずに控えて好位の外を追走。道中では少し促しているが、位置が下がって中団外目。3角手前で外のダノンエアズロックを行かせ、その後ろで3角に入る。

3~4角でも同馬の後ろを通し、4角出口で外に誘導。序盤で追われてまだ中団だったが、ラスト2Fで一気に突き抜けて2馬身ほど前に出る。ラスト1Fで馬場の良い内に切りながらリードを広げたところで、外からドゥラドーレスに突っ込まれたが、余裕を持って1馬身3/4差で完勝した。

このレースは1分43秒9のコースレコードで決着しているように、高速馬場で前後半5F46秒0-46秒6の緩みない流れ。前がラスト2Fで早々にバテたところを一気に突き抜けての勝利だった。

休養明けの前走・天皇賞(秋)では0秒4差の7着。当時はコンクリートレベルの高速馬場で前後半5F62秒0-56秒6という、絶句するほどのスローペース。あまりに遅すぎて、本馬を含め大半の馬が折り合いを欠く、特殊な展開だった。ここでは上がり3F6位を記録している。

本馬は極悪馬場で行われた2023年の新潟大賞典を逃げて3着に8馬身差をつける2着の実績がある。このときも2走前のエプソムCと同等の指数を記録しており、前走のような上がり勝負よりも、道悪や緩みない流れがベストだ。

今回はひと叩きされての前進が見込め、ペースもさすがに前走より上がるだろう。前売り時点では単勝万馬券となるほどのオッズだが、能力値上位馬が軒並み外枠に入ったここはノーチャンスではない。

【能力値4位 シンエンペラー】
昨年のジャパンC2着馬。逃げ馬不在のなか、7番枠からまずまずのスタートを切り、押してじわっとハナを主張。ハナに立つとかなりのスローに落とし込んだ。向正面で外からドゥレッツァが捲ってくると、これを行かせて2列目の最内に収める。

3~4角でもペースが上がらず、ここで包まれたが直線序盤でドゥレッツァの後ろで仕掛けを待ち、ラスト2F手前で追われて4番手。ラスト2Fで最内から伸び始めて3番手に上がったが、ここでドウデュースにかわされる。ラスト1Fで同馬との差を詰めたが、クビ差の同着2着までだった。

当時は高速馬場で前後半5F62秒2-58秒5の超絶スローペース。前有利の展開だったが、ラスト2Fで1馬身ほど前に出られたドウデュースとの差をラスト1Fでクビ差まで詰めている。

ドウデュースが最後に甘さを見せたのもあるが、本馬が記録した国内での指数はサンライズアースが記録した今年の阪神大賞典に次ぐ、No.2タイのもの。東京芝2400mでの指数は、当時同着だったドゥレッツァと並んでNo.1だ。

2走前のドバイシーマクラシックは7着。前半5Fおおよそ65秒の超絶スローペース。ここでも逃げてかなりのスローでレースを支配し、向正面ではレベルスロマンスに捲らせて2列目の最内に収める形。昨年のジャパンCの再現のようなレースぶりだったが、最後の直線で伸びなかった。これは休養明けのネオムターフCで好走した疲れによるものが大きく、またこのあと肺出血も発症している。

その後、立て直された前走の愛チャンピオンSでも6着に敗退。ここでも1番枠から好スタートを切って、促してハナを切り、最終的には控えて2列目の最内という形だったが、昨年のジャパンCや今年のドバイシーマクラシックとは決定的にペースが違っていた。

当時は稍重で前後半5F62秒04-62秒65(日本の計測法なら前半が1秒速い)のハイペース。スタミナ不足の休養明けで、欧州馬が相手のハイペース2番手となると、大敗するのが普通だ。

肺出血は一度発症すると、癖になってしまうところがあり、その後に予定していた凱旋門賞を肺出血の再発と喘息で回避した。ちなみに、肺出血が癖になった馬は強い追い切りが行えないリスクや、ハードなレースをした場合に再発するリスクをかかえており、そのままスランプになる馬もいる。

しかし、前走で厳しい流れを経験した本馬にとって、逃げ・先行馬が手薄のここは展開が楽になる。16番枠はマイナスでしかないが、今回のメンバーであれば2列目を狙っていける。上手く内に入れられれるかが課題だが、近走の不振と枠が嫌われて人気薄となったここは積極的に買いたい。

【能力値5位 マスカレードボール】
ホープフルSでは酷く外にモタれて、最後の直線で追えずに11着と敗退したが、その後はモタれ癖もマシになり、今春の皐月賞では3着、日本ダービーでは前が止まらない展開を差して2着に善戦。夏場の休養中に成長し、前走の天皇賞(秋)では初GⅠ制覇を果たした。

天皇賞(秋)では7番枠から五分のスタートを切り、促して中団やや後方からの追走。道中でじわっと位置を下げて中団中目のスペースを拾ってタスティエーラの後ろで3角に入る。

3~4角でも徹底してタスティエーラをマークし、4角で同馬を追いかけて直線へ。序盤でタスティエーラの後ろからじわじわ伸びて3列目に上がり、ラスト2Fで同馬の外に誘導して2列目に上がる。ラスト1Fでしっかり伸び、最後は外から迫った同期の皐月賞馬ミュージアムマイルを3/4差で振り切った。

当時は高速馬場の前後半5F62秒0-56秒6という、衝撃的な超スローペース。セイウンハーデスの章で触れたが、あまりにスローのため折り合いを欠く馬が大半で、最後の直線ではブレイディヴェーグなど、ドン詰まりになる馬もいた。そのなかで本馬は比較的折り合いもついており、タスティエーラをマークしたことで、最後の直線でもスムーズに進路確保ができている。

ただ、超高速馬場だったにせよ、追走に余裕がなく、もっと長い距離や上がりが掛かる展開が好ましいと感じさせる一戦でもあった。おそらく芝2000mよりも2400mのこの舞台のほうが合うだろう。

また、今回は15番枠だが本馬のような直線一気型なら外枠もそこまで悪くない。あとは休養明けの前走で自己最高指数を記録した後となる一戦で、その疲れがどうかだ。

前走から前進可能 クロワデュノールが本命候補

クロワデュノールは国内で5戦4勝・2着1回と、幅広い展開や馬場に対応できる馬。また唯一の2着は今年の皐月賞で、このときは鞍上の判断ミスによるものが大きい。

皐月賞は前半3F34秒5と前半から速く流れていたが、ここで位置を取りに行って好位の外4番手を追走。向正面でファウストラーゼンが捲ったタイミングで外からぶつけられ、一旦位置が下がり、ここで鞍上が焦ったのか、ファウストラーゼンを追いかけてしまった。

まだペースが落ちていない3角の外々から押し上げ、4角では4頭ほど外を通す大きなロスを作ったことで、最後の直線ではしんどくなってしまった。この内容で展開に恵まれたミュージアムマイルと0秒3差なら、普通に乗っていれば勝っていたはず。

続く日本ダービーでは巻き返して優勝。13番枠から五分のスタートを切り、外から前を主張したサトノシャイニングを行かせてからじわっと先行。その後、外からホウオウアートマンが前を主張すると、同馬も行かせて4番手で進めた。道中はショウヘイの外4番手。2番手のサトノシャイニングがややペースを落とすと外からプレッシャーをかけた。

3~4角で先頭のホウオウアートマンがペースを落とすと、サトノシャイニングが内からじわっとペースを引き上げ、ここで先頭との差が詰まる。昨年の東京スポーツ杯2歳Sを再現するかのようにサトノシャイニングをマークして3番手で直線へ。

序盤で徐々にエンジンが掛かり、ラスト2Fで前を捉えて1馬身ほど前に出る。ラスト1Fでは甘くなったが、踏ん張ってマスカレードボールの追撃を3/4差で振り切った。

当時は超高速馬場で前後半5F60秒0-59秒5の平均ペース。格下のホウオウアートマンこそ11着に失速しているが、2角2~4番手を追走していた馬が1着、3着、4着と上位着順を拾っているように、前が止まらない展開だった。

このときは13番枠だったこともあり、上手く前の位置が取れるかどうか半信半疑だったが、当日の前が止まらない傾向が、鞍上の判断を後押ししたのか前の位置を取って完璧に乗ってきた。

本馬はホープフルSを勝利した時のように中団から差し切ることもできれば、日本ダービーのように先行し、抜け出して勝利することもできる。まず、この点が今回の大きな武器である。

前走の凱旋門賞では17番枠からコントロールして進めていたが、掛かって2番手の外まで押し上げる形となり、3角下りでコントロールしていたが押し出されて先頭に。フォルスストレートでは何とか我慢させていたが、今年の凱旋門賞は超絶タフな馬場で、暫定の前後半5Fは62秒81-61秒22。平均ペースだが、近年の凱旋門賞としては前半が相当速く、全体的にも流れている。折り合えずに早め先頭に立ってしまっては14着大敗でも仕方ない。

前走が能力を出し切ったとは言えない内容だっただけに、ここでの前進が見込める。さらに皐月賞、日本ダービーではマスカレードボールに先着しており、東京芝2400mでも実績があること、2番枠と内枠を引いたことから本命に推す。3歳馬だけにまだ伸びしろもあるはずだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)サンライズアースの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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