【京都新聞杯回顧】ショウヘイとエムズがダービーへ前進 共通点は「良血」と「名門」、大舞台で波乱の使者となるか

勝木淳

2025年京都新聞杯、レース結果,ⒸSPAIA

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後半を決める序盤の挙動

ダービーへの東上最終便はショウヘイが勝ち、2着エムズ、3着デルアヴァーで決着。上位2頭が賞金を加算し、ダービー出走圏内に滑り込んだ。

落ち着いた頭数に逃げ馬不在の中距離戦となれば、ほぼスローペース。緩やかな流れに身を投じ、冷静に走り、リズムを合わせられるかどうか。ゆったり走り、勝負所で瞬時に加速できる。そんなチェンジオブペースへの対応力が求められる。

まして舞台は京都外回り。天皇賞(春)で話題になった3、4コーナーに構える丘のどこで仕掛けるのか。これらポイントをみていくと、京都新聞杯の勝因も敗因もみえてくる。

スタート直後、先頭はエムズだったが、インをとると先へ行く気配はなく、かわってナグルファルがハナに立ち、1コーナーへ。ぎこちないコーナリングも手伝い、この時点でペースは一気に落ちる。

3ハロン目12.9から13.2-13.1-13.4と3区間連続で13秒台を叩き、超がつくスローペースへ。コーナーでゴチャついたネブラディスクや、スタートひと息で後方を進むトッピボーンは相当行きたがり、リズムを乱した。

ダッシュしてすぐにゆったりと。大人びたギア操作を求められ、戸惑ってしまった。成長途上の若駒には難しい局面であり、経験値が足りなかった。勝ったショウヘイは2番手。2着エムズは3、4番手のインのポケット。好走圏内、勝利ポジションは結果的にこの2頭だけだった。

とはいえ、このまま黙ってダービー出走の好機を逃すわけにはいかない。3番手オーシンエスが3コーナーの上りで外から動き、レースを動かしていく。だが、淀の丘は上りで動くと、ゴールまで末脚が続かない。イチかバチかの賭けに近い。

それでも、賭けないことには成功はない。馬券と同じ。リスクを背負って買わないことには、当たりは永遠にやってこない。ショウヘイもエムズも足元が下りに転じるまで慌てなかった。仕掛けをひとつ待てたのも、序盤で好ポジションをとっていたからだろう。後半の動きは序盤の挙動と連動する。序盤の大切さを改めて感じる。


超良血ショウヘイとエムズ

後半800mは11.4-11.6-10.9-11.3。前半が遅かった分、後半はかなり速く、1~4着馬の上がり600mを見ても3着デルアヴァーの34.0以外は最速タイの33.8。もはや使える脚に限りがある。そんな状況だった。

こうなると、4コーナー出口での隊列と各馬の差が結果に出る。ショウヘイは先につけた物理的な差を最後までいかした。きさらぎ賞4着でクラシック戦線から一歩後退したものの、見事に立て直した。クラシック常連の友道康夫厩舎の手腕も光る。

関西の名門もこの世代は皐月賞に出走馬がおらず、目立つのはマイルのアドマイヤズームとフローラSを勝ったカムニャックぐらい。ショウヘイが勝ったことで、ダービー出走は叶いそう。さすがは常連厩舎。少ないチャンスを逃さない。

ショウヘイの祖母はミュージカルウェイ。オークス、秋華賞を制したミッキークイーンの母でもある。この牝系はブレイディヴェーグやミッキーゴージャス、エピファニーといった重賞勝ち馬を多数輩出する名門だ。

さらに父サートゥルナーリアはシーザリオ牝系の出で、ショウヘイは名牝系の交差点に位置する。母の父は三冠馬オルフェーヴルであり、東京芝2400mは血統の底力を発揮できる舞台でもある。

2着エムズも、母は南米GⅠを2勝したライフフォーセール。姉にはダノンファンタジーがいる良血馬だ。

こちらはショウヘイの母の父オルフェーヴルを管理した池江泰寿調教師の管理馬。この世代ではエムズが重賞初出走だったというのは意外である。

2勝馬も同馬とミッキーゴールドだけ。前週はジョイエッロでプリンシパルS2着と悔しい結果だっただけに、今回の2着は大きい。他馬の動向次第にはなるが、ダービー出走に向けて前進した。

今回の1、2着馬の共通点は「良血」と「名門」。無事にダービーを迎えることができれば、不気味な存在になりそうだ。


2025年京都新聞杯、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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