【NHKマイルC】ここ2戦が勝ちに等しい内容、本命はモンドデラモーレ 対抗は指数1位アドマイヤズーム

山崎エリカ

2025年NHKマイルカップのPP指数,ⒸSPAIA

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逃げ~中団が8勝

過去10年のうち、外差し有利の馬場だった2018年と、稍重でややハイペースだった23年は差し・追込馬が優勝しているが、それ以外は逃げ~中団までが8勝と前目が有利。ただし、2着や3着には差し・追込馬が計9回突っ込んできている。

土曜に本格化した雨で悪化した馬場がどこまで回復するかにもよるが、ある程度、前の位置を取れる馬を本命にするのがベストだ。


能力値1~5位の紹介

2025年NHKマイルCのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 アドマイヤズーム】
昨年の朝日杯FSを勝利し、2歳マイル王となった馬。同レースでは2番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促して楽に先行。ペースが遅かったが、我慢させながら2番手外を追走した。道中も逃げ馬を見ながらコントロールして2番手外で折り合わせ、3角手前で強烈にペースが落ちても我慢させた。

3~4角で外の各馬が我慢できずに絡んできたが、本馬はコントロールしながら先頭に並びかけて直線へ。直線序盤で追われて突き抜け2馬身半差。ラスト1Fで後の皐月賞馬ミュージアムマイルの追撃を許さず2馬身半差で完勝した。

ここは標準馬場で前後半4F48秒0-46秒1とかなりのスローペース。前有利の展開に乗じての勝利ではあったが、2番手からメンバー最速の上がり3Fを記録しての勝利は高評価できる。

復帰戦となった前走のニュージーランドTは朝日杯FSと比べると高速馬場でハイペース。逃げ馬から離れた好位の外目で進め、ラスト1Fでやや甘くなったところをイミグラントソングに差され、クビ差の2着に惜敗した。しかし、順当に体調面が上昇すれば通用するはず。対抗評価だ。

【能力値2位 ランスオブカオス】
チャーチルダウンズCの勝ち馬。その前走は7番枠からまずまずのスタートを切り、促して先行し、好位の中目をコントロールしながら追走。3角でペースが落ちても折り合わせ、前にスペースを作って我慢した。

4角で各馬が外から仕掛けてきたが、本馬は仕掛けを待ってモンテシートの後ろから3列目で直線へ。直線序盤で前が壁だったが、ワンテンポ待って前の馬の狭い間をすっと割って先頭列に上がり、ラスト1Fで抜け出して1馬身3/4差で完勝した。

ここは超高速馬場で前後半4F46秒1-46秒1の平均ペース。3~4角で包まれる場面もあったが、直線ではすっと動いて抜け出した辺りに素質の高さを感じさせる。

また本馬はデビューから1~3戦は出遅れ続きだったが、前走ではスタートを決め、先行策でしっかり結果を出した。後方からだと展開やレース運びに左右されるところが大きいが、先行できればよりチャンスが広がる。

ただし、2023年にデビュー2戦目の朝日杯FSで3着に健闘したタガノエルピーダがその後の成長を欠いたように、デビュー2戦目でGⅠに挑戦して好走すると伸び悩む傾向がある。本馬もデビュー2戦目の朝日杯FSで3着と健闘し、今回は前走で自己最高指数を記録した後の一戦となる。全幅の信頼は置けない。

【能力値3位 モンドデラモーレ】
デビュー1~2戦は中距離を使われていたが、マイル路線で素質が開花した。8月の札幌2歳S4着以来となった2走前のジュニアCでは馬体重20kg増で出走すると2着で、一気に指数を上昇。勝ち馬ファンダムは次走の毎日杯で強い勝ち方をした。

2走前は10番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながら好位の中目を追走。道中は好位の中目で我慢させて前のスペースを維持していたが、かなり掛かって3角手前で前のスペースを詰め切ってしまった。

3~4角では進路がなくなりブレーキ気味。4角で外に誘導し、ファンダムの後ろから追われて3列目で直線へ。それまでがブレーキ気味だったこともあって直線序盤の伸びは地味だったが、追われて2列目に上がり、ラスト1Fでファンダムとの差を3/4馬身差まで詰めた。

高速馬場で前後半4F47秒2-46秒3のややスローペース。やや前が有利な展開だった。折り合いを欠くことなく、スムーズにレースができていればファンダムを逆転した可能性もあったと感じさせる内容だった。

そこから再び休養明けとなった前走のファルコンSでは2着。ここでは大外18番枠から出遅れ、中団の外目からの追走となった。道中で好位列が横に広がっていく展開を押し上げて好位の5頭分外から3角へ。

3~4角でも好位列が雁行している状態の一番外。それを嫌って4角でやや追っつけて4角で内に切ったが、それでも4頭分外から2列目に上がって楽な手応えで直線へ。直線序盤で追われての反応は地味で外から一気にヤンキーバローズにかわされたが、ラスト1Fで意外と食らいついてクビ差に迫った。

ここは標準馬場で前後半3F34秒4-35秒0。中盤で緩んでおらず、ややハイペースだったこともあり、ここでは折り合いもついていた。また、大外枠から3~4角でペースが落ちてはいないのにかなり外を回す距離損の大きい競馬で、並みの馬ならば大敗のパターンだった。

本馬はここ2戦のレースぶりに反して人気がないが、強い相手とも戦っており、地力上位は明らか。ややスローペースの2走前はかなり掛かっていたが、GⅠのペースならば折り合いもつきやすいだろう。ここは本命に推す。

【能力値4位 イミグラントソング】
前走のニュージーランドTでアドマイヤズームを2着に下して勝利した。前走では13番枠から五分のスタートを切り、無理なく中団の外目を追走。道中で後方の外に下げてプリティディーヴァをマークしながら3角に入った。

3~4角でプリティディーヴァは動いていったが、本馬は仕掛けを待った。4角でややペースが落ちるとプリティディーヴァの外に誘導し、仕掛けて中団で直線へ。直線序盤でじわじわ伸びて3列目に上がり、ラスト1Fでしぶとく伸び続け、先に仕掛けたアドマイヤズームを競り落としてクビ差で勝利した。

ここは高速馬場で前後半4F45秒7-46秒7のややハイペース。差し馬有利の展開のなか、ラスト1Fでアドマイヤズームが休養明けでやや甘くなったところを差し切ったもの。一方、こちらはレースを順調に使われ、後方からでも4角でややペースが落ちたところで動いて、それほど脚も使わずに押し上げることができた。

本馬は2走前の1勝クラス(東京芝1600m)では好位の外で進め、ラスト1Fで甘くなって3着。前走は末脚特化でかなり上手く乗られていただけに、さらなる相手強化となると不安はある。

【能力値5位タイ アルテヴェローチェ】
デビュー2戦目に東京芝1600mのサウジアラビアRCを優勝。休養明けで馬体重14kg増の朝日杯FSでは、先行勢が雁行状態の中目を追走したが、ペースが上がらずコントロールに苦労して中団まで下げ、包まれて3角では後方についた。結果、前有利の展開に泣く形で5着に敗れた。

体が絞れた2走前のシンザン記念では2着。ここでは8番枠からまずまずのスタートを切って軽く促されていたが、内と外から来られたため、中団に下げて外に誘導した。そこから折り合い重視で進めて3角に入った。

3角手前でさらに外に誘導し、3~4角で仕掛けて4角では外から押し上げながら2列目外で直線へ。直線序盤で大外に誘導して追われて伸びたが、内のリラエンブレムに来られてクビほど前に出られる。ラスト1Fでは同馬に離されたが、後続には2馬身半差をつけた。

ここはややタフな馬場で前後半4F46秒8-47秒8のややハイペース。やや大味な競馬ではあったが、差し有利の展開に恵まれた面もあった。

前走のチャーチルダウンズCでも休養明けながら2着。ここでは6番枠から駐立が整わず、2馬身も出遅れてしまった。そこから後方外目まで挽回し、道中では中団馬群の後ろで流れに乗って3角に入った。

3~4角でも中団外から動いて、4角出口で大外に誘導して3列目で直線へ。直線序盤で追われてじわじわ伸びて2列目付近に上がり、ラスト1Fではランスオブカオスには離されたが1馬身3/4差で2着に入った。

大きく後手を踏んだ時点で後方からの追走に徹してもよかったが、急かして位置を取り過ぎた面があり、敗因の一つといってもいい。またこの日はBコース替わりで内がやや有利だったが、外から位置を挽回し、3~4角の外からも動いた時はさすがに苦しいかとも思ったが、案外がんばった。

本馬は2走前に挟まれかけ、前走は出遅れて先行できていないが、サウジアラビアRC時のようにある程度、位置を取りに行っても問題のないタイプ。前走は駐立不良による出遅れで癖ではないので、ここはスタートを決める可能性が高いと見ている。これまでの実績は十分なだけに、叩かれての前進に期待して重い印を打ちたい。

【能力値5位タイ マピュース】
2走前のクイーンCでは、後の桜花賞馬エンブロイダリーの2着に健闘。この時は6番枠から五分のスタートを切り、ほぼ出たなりで中団中目からの追走。道中は2番手のエンブロイダリーが逃げ馬にプレッシャーをかけていく形で緩みなく流れたが、本馬は中団中目で脚を温存した。

3~4角では中団中目のスペースを拾って好位列まで押し上げ、直線序盤でエンブロイダリーの後ろから外に誘導して3番手。ラスト2Fで2番手に上がってなんとか同馬に食らいついたが、ラスト1Fで甘くなって2馬身半差の2着に完敗した。

ここは高速馬場で前後半4F45秒7-46秒5のほとんど緩みない流れ。2番手から押し切ったエンブロイダリーには完敗だったが、エストゥペンダ(次走のフローラSで小差4着)よりも前の位置でレースを進めて1馬身半差で先着したことはなかなか評価できる。

前走の桜花賞でも4着。前走は逃げた1番人気のエリカエクスプレスが5着に敗れているように、雨の影響を受けて後半になるにつれて時計を要しており、前に行った馬には厳しい展開。本馬は出遅れて中団最内で脚を温存していたが、ラスト1Fでやや甘くなっての4着だった。

本馬は2走前のように緩みない流れで上がりの掛かる競馬がベストのタイプ。前走時は2走前よりも上がりが速かったにせよ、上位2頭に0秒9差も離された辺りに物足りなさもある。超高速馬場の東京芝1600mなら不安があるが、土曜に本格化した雨が回復しきれていないようなら侮れない。

【能力値5位タイ ヤンキーバローズ】
前走のファルコンSを休養明けで勝利した。前走は6番枠からやや出遅れ、促しながらも無理をさせずに中団中目から追走。道中ではやや掛かってはいたが、好位列が横に広がっていく展開を、上手く中団内目を拾って3角手前で最内に入れた。

3~4角でも仕掛けを待って前のスペースを維持。4角で最内から仕掛けて前のスペースを詰めながら直線で中目に誘導。直線序盤ではモンドデラモーレの後ろでやや進路取りに苦労していたが、同馬の外に誘導してしぶとく伸び2列目の外に上がる。ラスト1Fで逃げ粘るリリーフィールドを捉え、内から食らいつくモンドデラモーレをクビ差で振り切った。

ここは標準馬場で前後半3F34秒4-35秒0。中盤で緩んでおらず、ややハイペースでやや差し馬有利の展開。最後の直線序盤で進路確保にやや苦労していたが、前半で無理をしなかったのと、3~4角で最内を通ったことが主な好走要因と考えられる。

本馬は函館芝1200mでデビューし、芝1400mで良さが出たタイプ。1400mでもやや追走に苦労しており、折り合い以外の観点からは距離が延びても良さそうに映る。しかし、休養明けの前走で上手く乗られ、自己最高指数を記録した後の一戦となると狙いにくい。


大穴は新潟2歳Sの覇者トータルクラリティ

トータルクラリティは京都芝1600mの新馬戦と新潟2歳Sを連勝した。その新潟2歳Sでは9番枠からまずまずのスタートを切り、コントロールして好位の外目を追走。道中は我慢させ、折り合いに専念した。

3~4角でペースが落ちたが、ここでもコントロールして3列目の外。直線序盤で2列目から馬なりで上がり、ラスト2Fで追い出されると先頭。そこでややささり、この隙に外からコートアリシアンに半馬身ほど前に出られてしまった。しかし、一騎打ちとなったラスト1Fで同馬を差し返して半馬身差で勝利した。

ここは標準馬場で前後半4F47秒7-46秒5のかなりのスローペース。新潟開催10日目で外差し有利の馬場ではあったが、2歳8月の時点としては指数が高く、後に行われたサウジアラビアRCを上回る指数での勝利だった。

秋に復帰してからは順調さを欠いて朝日杯FSでは13着、そこから立て直されたファルコンSでも10着と結果を出せていないが、この中間の追い切りではキビキビ動いており、初めてのブリンカー着用、休養明け2戦目で一変する可能性がある。驚くほど人気がないここは一考したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アドマイヤズームの前走指数「-14」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.6秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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