【フィリーズレビュー回顧】前半3Fはレース史上最速タイ 「キャリア5戦」ショウナンザナドゥの経験が実を結ぶ

勝木淳

2025年フィリーズレビュー、レース結果,ⒸSPAIA

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ハイペースの対応力がカギに

桜花賞トライアルのフィリーズレビューは、阪神JF4着のショウナンザナドゥが勝ち、2着は連れて追い込んだチェルビアット、3着ボンヌソワレで決まり、この3頭が桜花賞の優先出走権を手に入れた。

今年も桜花賞の切符を勝ちとる戦いは厳しく、ハイペースの対応力が求められた。芝内回り1400mのフルゲートに、前走で逃げ切った馬が3頭、1200m戦で好位から抜け出した馬も2頭出走。「マイルは厳しいかもしれないが、1400mでならなんとか出走権を獲れるかもしれない」という祈りが集まる戦いとなった。

序盤から3、4頭が馬体を併せ、主導権争いを演じたため、ラップ推移は12.0-10.2-11.0で600m通過は33.2秒。シングザットソングが勝った2023年と並ぶフィリーズレビュー最速ラップとなった。ダッシュがつく2ハロン目で1秒8も加速し、先行勢は突っ込み、かなり体力を使った。

中盤に11.7を挟み、後半600mは12.0-11.8-12.0の35.8秒。ほぼ一定のラップ構成となり、前が引っ張りきれず、最後は差し、追い込みのステージに移った。奇しくも後半35.8秒は前記の23年と同じ。その23年はラップ構成が11.8-10.3-11.1-11.7-12.0-11.8-12.0であり、後半800mはまるで同じだった。勝ち時計も同じ1:20.7であり、これほどそっくりな例も記憶にない。


ショウナンザナドゥの精神力

ショウナンザナドゥは中団後ろの外目を追走し、抜け出した。ペースの手助けもあったが、内容的には一枚上であり、池添謙一騎手も自信をもって騎乗できた。その源は経験だろう。キャリア5戦で崩れたのは前走クイーンCだけ。アルテミスS、阪神JFと2歳牝馬の主要ルートを通り、3、4着。実力を証明し、同時に様々な経験を積んできた。

足りなかったのは賞金のみ。立場上は1勝クラスの収得賞金400万円止まり。このままでは桜花賞出走が難しく、落とせない一戦だった。クイーンC9着で閉ざされかけた道をこじ開けてきた。ショウナンザナドゥの精神力も見落としてはいけない。

母ミスエーニョはひとつ上のミアネーロやミファヴォリートなど日本で着実に枝葉を広げた。持込馬のミスエルテが父フランケルの影響か気難しかったので、気性への言及が多い一族だが、国内の種牡馬との仔では、通算成績【2-1-1-5】のミディオーサなど堅実な馬も目立つ。

サンデー系、キングカメハメハ系が交配され、ショウナンザナドゥの父はキズナ(サンデー系)。海外のスピード血統と掛け合わせることでスピード兼備の産駒を送り出す。タピット、マリブムーンなど、母ミスエーニョの属するエーピーインディ系とも数こそ少ないが、好相性だ。

揉まれ弱いなど気性面の弱点を抱えるエーピーインディ系と、真面目な産駒の多いキズナはお互いの弱点を補う関係にある。ショウナンザナドゥも当然、1400mまでの馬ではなく、マイルへの距離延長もなんら問題ない。

ただ、昨秋のアルテミスSから5戦目となるローテーションが疲労につながらないといい。また今回は外を追走し、揉まれずに進めたが、馬群に入れた際の不安はまだ拭えない。母の父プルピット(エーピーインディ系)の負の面が出ないことを願う。


1400mがベストのボンヌソワレ

2着チェルビアットは小倉芝1200mの未勝利戦から中2週という厳しい状況を乗り越えた。スプリント戦に近い流れになったことで、違和感なく競馬には入れたのもあったが、道中はショウナンザナドゥをマークする態勢をとり、背後をなぞるように伸びてきた。ヘッドワークに定評がある北村友一騎手の作戦も見事にマッチした。

臨戦過程のせいか14番人気という人気薄だったが、母はキューティゴールドで、姉にはGⅠ2勝ショウナンパンドラがいる一族。この血統ではじめてサンデー系以外が配合されたチェルビアットは、父ロードカナロアの色がよく出ている。ハイペースへの強さは今後も記憶しよう。

3着ボンヌソワレはハイペースを踏まえれば、道中4番手からよく粘った。1400mに距離短縮し、1、2、2、3着とクラスが上がっても崩れず、この距離がベストのような気がする。たとえ厳しい流れであっても、踏ん張れるのは適距離だからだろう。権利こそ獲得できたが、溜めをつくれないと粘り切れないマイルへの対応はカギになりそうだ。

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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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