【東京新聞杯】キングヘイローが単勝2.1倍に応え連敗ストップ 長い歴史を誇るマイル戦を「記録」で振り返る
緒方きしん

ⒸSPAIA
今でも血統表に名前を残す名馬たちが勝利
今週は東京新聞杯が開催される。1951年に創設された歴史ある重賞(創設当初は東京杯、1966年から東京新聞杯に名称変更)で、初代勝ち馬トサミドリ以降、ハクチカラやタカマガハラ、モンテプリンスなど様々な名馬が勝利をあげてきた。
1984年からマイル戦に移行し、ギャロップダイナやホクトヘリオスをはじめ名馬が続々と勝利。近年もリスグラシューやインディチャンプなど、GⅠを複数回勝利する馬たちが出ている。今回はそんな東京新聞杯の歴史を振り返る。なお、データは1986年以降のものを用いる。
昨年は7番人気サクラトゥジュール、4番人気ウインカーネリアンによる7歳馬のワンツーで馬連が万馬券となった。近5年で馬券圏内に入った1番人気は2022年2着ファインルージュのみと、波乱の多い一戦でもある。
一方で、圧倒的な人気を集めながら勝利した馬もいる。
<勝ち馬の単勝オッズランキング>
1位 1.3倍 ベストタイアップ(1997年)
2位 1.5倍 トウショウマリオ(1989年)
3位 1.6倍 ハットトリック(2005年)
4位 2.1倍 キングヘイロー(1999年)
5位 2.2倍 トロットサンダー(1996年)
ベストタイアップは良血馬として期待されていた。3歳秋から4歳はじめ(当時の表記では4歳秋から5歳はじめ)にかけて条件戦から4連勝で中山金杯を勝利し、重賞馬の仲間入り。
GⅠでは天皇賞(春)で13着、天皇賞(秋)も6着と壁に跳ね返されたが、5歳シーズン初戦の中山金杯で連覇を達成すると、勢いそのままに圧倒的人気を受けた東京新聞杯を快勝した。
いよいよGⅠ制覇にも期待が高まったが、脚部不安により、その後はレースに出走することなく引退。その年の東京新聞杯の3着馬オフサイドトラップが翌年に天皇賞(秋)を制覇していることを考えても、能力の高さは相当なものだったと考えられる。
なお、ベストタイアップは引退後に種牡馬となり、2021年かしわ記念の勝ち馬カジノフォンテンの母父などでその名を残している。
種牡馬として名前を残したという点では、3位ハットトリックと4位キングヘイローも同様だ。
ハットトリックは5戦4勝で3歳シーズンを終えると、4歳初戦の京都金杯と次走の東京新聞杯を連勝。そこから4戦連続で掲示板外(6着以下)に敗れるも、11月以降はマイルCSと香港マイルで連勝と見事に復活した。
引退後に海外で種牡馬となったハットトリックは、2011年フランスの年度代表馬ダビルシムを出したほか、フランスにおける2歳リーディングサイアーに輝いている。
4位のキングヘイローは1998年有馬記念6着からの参戦。8連敗中だったが、単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持された。結果は2番人気ケイワンバイキングに3馬身差をつける久々の勝利。続けて中山記念も勝利した。
その後はさらに7連敗と再び勝利から遠ざかるも、2000年の高松宮記念で遂にGⅠ馬の仲間入りを果たした。
引退後はローレルゲレイロやカワカミプリンセスなどを輩出する人気種牡馬に。特にローレルゲレイロは2008年の東京新聞杯で親子制覇を達成したほか、2009年にはJRA賞最優秀短距離馬に輝いている。
キングヘイローは母父としても、日本歴代最強馬の一頭に挙げられるイクイノックスをはじめ、ディープボンドやキングズソード、ピクシーナイト、アサマノイタズラなど多数の活躍馬を出した。その血はイクイノックスを通して、これからも大きく広がっていくことだろう。
ほか、2位のトウショウマリオも種牡馬として活躍し、中央と地方で合計6197万円を稼いだファイアーマリオなどを出した。5位のトロットサンダーも2020年のエーデルワイス賞3着馬マーサマイディアの母母父や、今も名古屋で活躍しているゼントユウイの母母父として名前を残している。
芦毛の牝馬2頭が6歳で勝利
近5年の3着以内馬15頭のうち、牝馬は6頭と健闘している。
1986年以降で牝馬の着度数は【5-5-6-58】。ベテラン牝馬の活躍も印象的で、馬券圏内に入った牝馬を年齢でランキングにすると以下の通りになる。
<3着以内馬の最高齢(牝馬のみ)>
1位 7歳 メジロディッシュ(1989年2番人気2着)
2位 6歳 ホエールキャプチャ(2014年8番人気1着)
2位 6歳 スマートレイアー(2016年5番人気1着)
メジロディッシュは1980年代後半にマイル戦を中心に活躍した実力馬。マイルCSでも5着に食い込むほどで、重賞勝ちこそなかったが、1998年の中山記念や同年のダービー卿チャレンジトロフィーでも2着と強さを見せた。
メジロディッシュの娘メジロシャープも、愛知杯2着や日経新春杯3着など、重賞勝ちはないものの母から受け継いだ強さを見せた。ベテラン牝馬として活躍し、母としても活躍する名牝だったと言える。
2位タイの2頭はいずれも芦毛の名牝。スマートレイアーは6歳で東京新聞杯を制した後も現役を2年半以上続け、7歳秋には京都大賞典でシュヴァルグラン、サウンズオブアース、ミッキーロケットらを撃破している。
スマートレイアーは半弟に京都新聞杯の勝ち馬プラチナムバレットもいる良血で、引退後は母として活躍。2番仔のスマートワイス(4歳)は現在6戦3勝で一度も掲示板を外していない。
ホエールキャプチャは現役最後の白星が2014年の東京新聞杯だった。ただし同年に6回もレースに出走し、札幌記念と府中牝馬ステークス(現・アイルランドトロフィー)で3着、ヴィクトリアマイルでも4着と現役上位の実力を証明した。
ホエールキャプチャは4代母がチヨダマサコ(息子にGⅠ馬ニッポーテイオー)という良血馬で、初仔のアルママはその素質から大きなニュースになった。
ちなみにアルママの父はオルフェーヴルだが、ホエールキャプチャはデビュー3戦目の芙蓉Sでオルフェーヴルを撃破している。まさにライバル同士の配合からの活躍馬で、ファンからも多くの喜びの声が聞こえた。
今年はブレイディヴェーグやボンドガール、コラソンビートといった有力な牝馬が集結。牝馬が上位を独占するのか、それとも牡馬が意地を見せるのだろうか。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
《関連記事》
・【東京新聞杯】距離短縮ボンドガールなど上位拮抗 注目は東京マイル連勝のウォーターリヒト
・芝ではキタサンブラック産駒、ルメール騎手が圧倒 東大HCが東京巧者を徹底検証
・【東京新聞杯】過去10年のレースデータ
おすすめ記事