【中山金杯回顧】父が歩んだ道をたどるアルナシーム 持続力が問われた一戦、見直したい6着パラレルヴィジョン
勝木淳
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力量接近のハンデ戦
2025年1月5日に中山競馬場で開催された中山金杯は、6歳アルナシームが昨夏の中京記念以来となる重賞2勝目を挙げた。
今年の中山芝は例年と異なり、1週目だけBコースを使用。その後3週間はCコースになる。Cコースの金杯は内枠優勢で、7~8枠は過去10年【0-2-2-43】と苦しい。
Bコースの中山金杯は同じなのか。外枠に人気どころが集まり、それもホウオウビスケッツ、シンリョクカ、クリスマスパレードと先行タイプがそろった。
力量接近の鞍だけに、枠順が与える影響は大きい。勝ったのは1枠2番アルナシーム。終始内を立ち回った内容を踏まえると、枠順が出た時点で想像できたレースではある。
中山芝2000mは1コーナーまで正面直線を目一杯使うため、先行争いが思いのほか速くなる。今回のように外枠に先行意欲の高い馬たちが入れば、そこに拍車がかかる。
ホウオウビスケッツがややダッシュがつかないとみるや、ハナに行ったのはクリスマスパレード。そこにホウオウビスケッツがついていき、ボーンディスウェイやセイウンプラチナが前に行く。
外から内へ先行勢が押し寄せ、1コーナーへ。勢いがつきすぎたか、その後もペースは落ちない。序盤600m34.9の入りから11.9-11.9と続き、1000m通過は58.7。ペースダウンがないまま進んだ。
後半1000mも11.9-11.8-11.9-11.8-12.0の59.4と、スタートからゴールまでほぼ一定のペースを維持した。いわゆる息の入らない流れとなり、切れ味よりも持続力に長けていないと残れない。
ペース、コース、枠順を味方につけたアルナシーム
そんなスキのない流れに対し、枠なりに内を進み、4コーナー出口まで最短コースを抜けたのがアルナシームだ。
スローなら周囲の手応えもよく、前が壁になる中団インだが、淀みない流れの脱落戦になったことでスペースもつくりやすかった。直線入り口のコース取りも見事で、最後だけ外に出てくることで、馬場の恩恵も受けた。
昨夏、小倉芝1800mで行われた中京記念と同様に器用で機動性の高さを示した。かつては派手に行きたがる不器用な面もみせたが、キャリアを重ね、心身ともに成長している。
富士SとマイルCSは、マイル適性の差というより瞬発力の差が出た。33秒台前半の末脚は決してないが、34秒台後半で間に合う競馬に強い。この成長力と持続力は父モーリス譲りだ。
母の母はドバイマジェスティで、アルアインやシャフリヤールの近親。母系も持続力の血であり、コーナー4つの中距離戦は上がり時計的にちょうどいい。
モーリスもマイル路線から最後は2000mのGⅠを連勝と、距離を延ばしてキャリアを重ねた。アルナシームも父の歩みをたどっていく。
グラスワンダーの系統は距離適性の幅も魅力のひとつ。大阪杯も極端なスローに落とされなければ、強みをいかせる。ジャックドールとは競馬のイメージが異なるが、適性自体は近い。
距離も展開も合わなかったパラレルヴィジョン
2着マイネルモーントは、アルナシームの背後からあとを追うように伸びてきた。こちらは直線入り口で外に出せず、勝ち馬ほどきれいに抜けられなかったが、それでも追ってしぶとい。消耗戦に強いゴールドシップ産駒らしく、同産駒が苦にしがちな中山の急坂でも鈍らない。
得意コースに得意な流れ、さらに6着だったチャレンジCよりライバルとの比較で2kg減と、味方も多かった。とはいえ、走破時計1:58.3は自己最速。これまでは58秒台だと凡走していただけに、きっかけをつかんだのは確か。アルナシームと同じく34秒台で間に合う舞台設定なら、チャンスは回ってきそうだ。
3着ボーンディスウェイは中山3勝のコース相性をいかした。一定のスピードで進む流れを好位で構え、最後はバテながらもしぶとさを発揮した。
前走は東京でリステッド競走を勝っており、若い頃よりコース適性の幅も出てきている。父ハーツクライにドイツ牝系という軽さのなさが長所であり短所でもあったが、以前より先行できるようになり、粘りが出てきた。粘りに特化することで、東京でも残せる。
今回の好走でさらに中山専用とみられそうだが、そうも決められない。自ら持続力勝負に持ち込める強みを武器に、攻めた競馬で適性の幅を広げてくるだろう。
外を回ると伸びきれない展開だったなら、6着パラレルヴィジョンは見直せる。4コーナーを外から追い上げたため、最後に伸びなかった。
また、2000mも気持ち長く、ベストはマイル。この敗戦で評価を下げすぎないようにしよう。こちらも本来は伸びるより粘るに特化すべきで、今回は距離を踏まえ、大事にいきすぎた。得意距離で強気にいけば、あっさり巻き返していい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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