【ローズS回顧】トライアルらしい流れでクイーンズウォーク、レガレイラに明暗 両頭、次走は仕上げがカギに
勝木淳
ⒸSPAIA
ローズS4勝目の川田将雅騎手×中内田充正厩舎
オークス最先着馬クイーンズウォークが重賞2勝目をあげた。例年ほどオークス上位馬がそろわないなか格の違いをみせつけた。
川田将雅騎手と中内田充正厩舎は中京ローズS3勝目。ローズS通算4勝と凄まじい。4頭はすべて前走オークス。20年リアアメリアこそ馬体重+14kgだったが、クイーンズウォークを含め残る3頭はオークスから増えても2kg以内。夏休みを挟み9月に結果を残すノウハウがある。
一方で3頭の次走秋華賞は8、13、5着。休み明けの仕上げが次走に与える影響も同時に考えなくてはいけなくなった。クイーンズウォークも同じ轍を踏まないといい。それも陣営が過去を踏まえるだろう。ひとまず今、私が心配しても意味がない。
レースを主導したのはセキトバイースト。レディーヴァリューが1コーナーでマイペースを決め込むところを外からハナをかっさらった。
この動きから、後ろを離し気味に進むセキトバイーストをみて急流を想像しそうなものだが、実際は前後半1000m60.3-59.6とスローペースに近かった。
飛ばすセキトバイーストをみんな追いかけず、いわゆるスローペースのタテ長。前が残る絶好の状況をつくった。藤岡佑介騎手のファインプレーといっていい。
それにしてもなぜ、こうもセキトバイーストを追いかけなかったのか。ひもとけば、春はチューリップ賞で逃げて9番人気2着の実績があった。本来はノーマークにしてはいけない存在だ。
だが、桜花賞で逃げずに7着と見せ場がなく、その後休養に入ったため、すっかり存在感が薄くなっていたか。これぞ盲点というやつだ。
トライアルでは得てしてこんな展開も多い。GⅠ出走に向け、出走権がかかった大切な一戦ということもあり、うかつに動きにくい。どの馬も最後に脚を残し、その脚力にかけたいところ。その想いが各馬の動きを鈍らせる。これも競馬のおもしろさだ。
レガレイラが最後尾を進み、クイーンズウォークが動かない限り、上がり馬たちはそう動けない。そして、レガレイラが後ろにいる以上、クイーンズウォークは先に動くメリットがない。しっかり脚をため、直線でキレ味のある末脚を繰り出せばいい。実際、そんなレースで完勝しており、定石通りの競馬だった。
遅れ差しレガレイラの苦悩
いいかえれば、スローペースのタテ長の隊列は、最後尾のレガレイラにとって最悪の展開になった。
前がしっかり末脚を残した状態で物理的に距離が開いてしまえば、いくら速い脚を繰り出しても届かない。もともと春二冠をみても、アイリッシュチャンピオンS3着のシンエンペラーと似た遅れ差しタイプ。反応の速さが求められる日本の競馬において、遅れ差しタイプはよほどタフな流れにならない限り間に合わない。
坂を上がってからの末脚に迫力を感じ、上がり33.1とインパクトを残しはしたものの、着順は4着。結果がついてこないもどかしさをこの先も抱えそうだ。
その要因はなにか。ひとつはゲートだろう。スタートも反応が大事なので、ちょっと反応が悪いレガレイラはどうしても遅れてしまう。そして、レガレイラ自身が前半は速く走らず、後ろをついていけばいいとレースを覚えている可能性もある。
この習慣をいかに矯正していくのか。陣営の手腕にかかっている。秋華賞までの4週間を注視しよう。
勝ったクイーンズウォークの母ウェイヴェルアベニューといえば、グレナディアガーズのイメージが強いが、フランケル産駒の持ち込みとキズナ産駒では適性は違う。
キズナの父ディープインパクトを父に持つ姉アストロフィライトは小倉芝1800mで2勝目をあげた。グレナディアガーズより反応が遅い分、距離の幅はあった。
クイーンズウォークも序盤、1コーナーあたりで行きたがる素振りがあり、ちょっと怪しいところもあったが、やはりグレナディアガーズほどの反応はなく距離は問題ない。秋華賞も初角の入りでスイッチが入らなければ勝負になる。
2着チェレスタは離れた3番手追走で、スローペースのタテ長の展開を味方につけた。コーナー4回の2000m戦で好位から立ち回るのが得意な形であり、今回はその強みを完璧に表現できた。
さて、本番で同じ形をとれるのか。もし、とれるようなら京都内回りでも残る可能性もある。5戦して4着以下なし。クラスが上がっても崩れない堅実さは実力の裏返しだ。
3着セキトバイーストはチューリップ賞2着がポイントだった。同じ急坂があるコースでみせた粘りを今回も上手に引き出した。だが、これで本番は同じ手は使えないかもしれない。今度は今回のようにひとり旅はさせてもらえない。後続を引きつけても、粘れるか。
3歳上の兄マテンロウアレスは3勝クラスの身だが、驚異的な粘り腰で大穴を連発しており、セキトバイーストもその素養はある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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