【セントライト記念】“馬体増”が強いレースを「20kg減」で制したトーセンシャナオー 「記録」で振り返る
緒方きしん
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「20kg減」で勝利したトーセンシャナオー
9月16日、中山競馬場でセントライト記念が開催される。春までの実績馬と夏のあがり馬が激突する一戦。今年もコスモキュランダやアーバンシック、エコロヴァルツら実績馬とスティンガーグラスやタンゴバイラリンといった夏に走ってきた馬たちが火花を散らす。
この秋、3歳勢力図はどのように変わっていくのか。今回は1986年以降のセントライト記念に関するさまざまな記録を振り返る。
セントライト記念では、「どのように夏を過ごしたか」が問われる。その指標のひとつが馬体重だが、前走からの変化で見ると馬体重増で勝利した馬は23頭で、反対に馬体重減で勝利した馬は13頭となっている(増減なしは2頭)。馬体重増の理由としては、成長だったり余裕残しだったり調子の良さだったりといったところが推測されるが、結果は明白に『馬体重増の馬が良い』。
前走比で勝ち馬の頭数を見ていくと、最も多いのが8kg増で6頭。2位タイで2kg増と4kg増が続く。また、12kg増で勝った馬もキタサンブラックをはじめ3頭もいる点は見逃せない。
最も多い8kg増で勝利した馬にはガイアフォースやバビット、フェノーメノらがいる。6頭のうち1番人気での勝利はフェノーメノのみだが、1991年のストロングカイザー以外は4番人気以内の勝利だった。
ストロングカイザーは8番人気という伏兵評価を覆しての勝利。あのトウカイテイオーと同世代で、毎日杯では3着に入るなど春から実力の片鱗は見せていたものの、クラシックは未出走だった。
レオダーバンが勝利した青葉賞では1秒3差の11着、ツインターボが制したラジオたんぱ賞でも1秒3差の5着に敗戦した。
しかし、秋のセントライト記念では好位から突き抜ける強い競馬を見せると同時に、春の時点では後れを取ったレオダーバンやツインターボにリベンジを果たした。そもそもデビュー戦で490kgあったのが、ラジオたんぱ賞では456kgまで馬体を減らしていた。セントライト記念はそこから8kg増の464kg。この馬にとっては体調が回復傾向だったということなのだろう。
過去に最も馬体重の変動があったなかで勝利したのは、2006年のトーセンシャナオー。20kg減ながら好位から積極的な競馬で、4コーナーではマツリダゴッホやネヴァブションが落馬するアクシデントもあったなか、力強く押し切った。
この時の鞍上はニュージーランドのL.イネス騎手。同年を最後に来日はないが、ニュージーランドのGⅡチャンピオンシップSでワーザー(2018年宝塚記念にH.ボウマン騎手と参戦)に騎乗して勝利している。
トーセンシャナオーはデビューから後藤浩輝騎手、小牧太騎手、藤田伸二騎手、安藤勝己騎手、吉原寛人騎手、藤岡佑介騎手、G.ボス騎手と7戦連続で鞍上が変わった馬だったが、このセントライト記念もイネス騎手との初コンビで結果を出した。
「黄金配合」も注目を浴びたフェイトフルウォー
セントライト記念の勝ち馬を誕生月別に並べると、4月生まれの14頭が断トツ。以下3月生まれが7頭、5月生まれが6頭、2月生まれが5頭と続く。
唯一の9月生まれの勝ち馬が、ニュージーランド生まれのロックドゥカンブ。セントライト記念勝利後も菊花賞3着、有馬記念でも4着と活躍した。
セントライト記念の勝ち馬を誕生日の早い順に並べると、1位が1月11日生まれのフェイトフルウォー、2位が1月27日生まれのジェネラーレウーノ、3位が1月28日生まれのリオンリオンとなる。
フェイトフルウォーは2歳時から東スポ杯2歳Sで3着、ホープフルSで3着など世代上位の活躍を見せた。年明けの京成杯で重賞初勝利を飾るとクラシックへ向かったが、皐月賞12着、ダービー13着と惨敗。休み明けで巻き返しを期したセントライト記念で勝利を挙げた。菊花賞は4番人気7着と敗れたものの、クラシックで初の1桁着順と成長を感じられる走りであった。
このフェイトフルウォーが注目を集めたのは、走りだけではない。父ステイゴールド、母父メジロマックイーンという血統にもある。
同期の三冠馬オルフェーヴル、そして年下の二冠馬ゴールドシップが同じ「父ステイゴールド×母父メジロマックイーン」という組み合わせで活躍。「黄金配合」として一躍話題になった。フェイトフルウォーもまた、黄金配合の相性の良さを広めた1頭だったといえるだろう。
フェイトフルウォーの鞍上は柴田善臣騎手で、1996年ローゼンカバリー以来となるセントライト記念勝利となった。
ちなみに、セントライト記念2勝は横山典弘騎手、柴田政人騎手、田中勝春騎手、田辺裕信騎手と並んで3位タイ。勝利数では1位が蛯名正義騎手の5勝、2位が北村宏司騎手の4勝となっている。
フェイトフルウォーはセントライト記念の勝利が最後の勝ち星だったが、同父の姪っ子リープフラウミルヒが2020年の福島牝馬Sで13番人気2着に食い込むなど、一族で活躍を続けている。
夏をゆったりと成長に充て、馬体重を増やしてきた馬か。それともここに照準をあわせて仕上げてきた馬か─。今年はセントライト記念からどんな活躍馬が出るのか、楽しみだ。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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