【セントウルS】スタミナ問われる中京は“距離短縮◎” 条件好転のトウシンマカオが面白い

勝木淳

中京芝1200mのコースデータから見るセントウルS,ⒸSPAIA

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今年は熱いセントウルS

2006年のサマースプリントシリーズ創設当初、セントウルSは優勝を決する重賞だった。シーイズトウショウ、サンアディユ、カノヤザクラと3年連続、優勝馬はセントウルSを勝って決まった。

その後、優勝馬の不出走が目立ちはじめ、20年以降は4年連続でセントウルS以外でサマースプリント王は決まった。だったら、スプリンターズSの前哨戦としての意味合いが強いのかというと、そうでもない。20年以降、前走セントウルSは【1-2-0-18】、近2年では【0-0-0-8】と連続で全滅中だ。

ローテに対する考え方は、外厩調整を取り入れながら馬をつくる流れにあわせ、目まぐるしく変化を遂げた。ここ2年は中5週の北九州記念から勝ち馬が出ている。今年は変則日程なので、CBC賞だろうか。いずれにしても、セントウルSは少し宙ぶらりんな気がしてならない。

だが、今年はCBC賞を重ハンデで回避したピューロマジックが、アイビスSDを制したモズメイメイとともにサマースプリントチャンピオンをかけ出走。そこに前年スプリンターズS勝ち馬ママコチャ、今春GⅠ勝ちを決めたテンハッピーローズが顔をそろえる。

久々にサマースプリントチャンピオンを決めるレースになるのか、それともGⅠ馬が立ちはだかるのか。見どころたっぷり。夏と秋が交錯する、これがセントウルSだ。舞台を中京に移すため、データは2014以降から2024年8月18日まで、中京芝1200m古馬オープン以上30レースを使い、コース傾向から切り込んでみる。


人気別成績,ⒸSPAIA


中京といえば、波乱が似合う競馬場だ。コース図から見て右半分の緩やかなのぼり、勝負所手前から続く下り、そして直線入り口から残り200mの急坂に最後の平坦。なかなか上手に走るのは難しく、コース巧者を生みつつ、苦手とする馬も多い。

曲者は最後の急坂をあがってからの200m。最後の時計を要する部分に設けられた平坦が予想外に長い。ここで逆転も起きるが、平坦を生かして粘り込みもある。なにせ脚質の有利不利がつかみにくく、展開が読めない。それが中京という競馬場だ。

馬券を買う側にも苦手意識をもつ人もいるだろう。しかし、芝1200mの上級条件は実はそんなに難しくない。1番人気【6-4-3-17】勝率20.0%、複勝率43.3%、2番人気【7-6-5-12】勝率23.3%、複勝率60.0%、3番人気【5-5-5-15】勝率16.7%、複勝率50.0%と上位人気は手堅く、ついでに4番人気【4-0-5-21】勝率13.3%、複勝率30.0%まで含めると、全30レース中22勝を占める。

波乱のイメージは23年高松宮記念ファストフォース12番人気1着、19年同セイウンコウセイ12番人気2着などGⅠでの激走が原因だろう。素直に上位人気を軸に置けば、そうハズレはしないはずだ。


狙いたいのはトウシンマカオ

となると、ピューロマジック、ママコチャ、モズメイメイは素直に軸馬候補として信頼してよさそうだ。別のデータでこれを確信へと昇華させたい。


年齢別成績,ⒸSPAIA


データは古馬オープン以上なので、3歳は6~12月の半年間と期間の短さもあるが、それにしても【0-1-0-12】複勝率7.7%は悪すぎる。

2着は21年セントウルSピクシーナイトだけ。同馬は次走スプリンターズS1着だから、ピューロマジックも古馬相手に好走できれば、シリーズ優勝とその先もみえてくる。中京の急坂で古馬相手に好走するのは至難の業。軽さだけでは乗りきれない。

古馬勢は4歳【9-7-5-73】勝率9.6%、複勝率22.3%、5歳【13-10-9-108】勝率9.3%、複勝率22.9%が中心。脂の乗り切ったスプリンターなら、中京の坂も決して苦にしない。

位置取り別成績,ⒸSPAIA


次は、決まり手を比べてみたい。逃げは【2-0-7-21】勝率6.7%、複勝率30.0%と好走はあるものの、逃げ切りは30レースで2勝とそう決まらない。

理想は先行【12-10-8-75】勝率11.4%、複勝率28.6%で、差し【13-18-13-178】勝率5.9%、複勝率19.8%も勝ち切れないものの、悪くない。先日のCBC賞を勝ったドロップオブライトのような好位のインから抜け出す形がベストに近い。

序盤で位置をとり、勝負所の下り坂をリラックスして駆けおり、最後の急坂に備える。競馬の形としてはほかの競馬場とさほど変わらない。


前走距離別成績,ⒸSPAIA


急坂がある分、最後にスタミナも問われるのが中京芝1200m。前走1200mのスプリンターは【18-15-20-260】勝率5.8%、複勝率16.9%、距離短縮組は【12-15-9-139】勝率6.9%、複勝率20.6%で互角。スプリンターがスピードでねじ伏せるか、短縮組が最後の200mで逆転できるか。どちらに転ぶのか、ここが勝負となる。

テンハッピーローズ、トウシンマカオら短縮組にも注目だ。もとよりトウシンマカオは重賞3勝を含め1200mで4勝のスプリンター。約4カ月ぶりの実戦なので、距離短縮云々はあまり関係ないとしても、有力だ。中京1200m重賞はGⅠもあわせて4、15、6着。GⅠ2戦は不良、重馬場だった。良馬場なら、問題ない。


中京芝1200mのコースデータから見るセントウルS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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