【北九州記念】葵S覇者ピューロマジックはペース上がっても問題なし 今年の3歳世代は一定のレベルにあると評価
貴シンジ
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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
今回は6月30日(日)に小倉競馬場で行われる北九州記念について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった24頭を検討対象とし過去10年のデータを使用する。
重要データ:年齢別の成績
宝塚記念が終わりいよいよ本格的に夏競馬が開幕する。北九州記念はサマースプリントシリーズの第2戦目で、秋に向けて飛躍を誓う古馬や成長の真っ只中にある3歳馬たちが激突する。
データで確認したいのは年齢別成績。スプリント戦は中長距離戦やダート戦に比べてスピード性能の高さが求められるため、若い馬が活躍する傾向があるが北九州記念においてはその限りではない。3歳【1-1-2-17】、4歳【3-2-3-16】、5歳【2-7-1-42】、6歳【3-0-4-39】、7歳以上【1-0-0-29】となっている。
単勝回収率では5歳馬の352%、複勝回収率では6歳馬の167%がそれぞれトップ。ただ勝率、複勝率は4歳馬がトップで、4歳の人気馬が走っているといった印象だ。小回りコースの小倉競馬場ではスピード性能だけでなく機動力も求められることが、ベテラン活躍の要因の一つだろう。
3歳馬の成績はあまり良くなく、有力になりそうな葵S組は重賞になってから、北九州記念で好走できたのは19年2着のディアンドルのみだ。ただ、今年は葵Sの1~3着馬が特別登録しており、例年より登録馬のレベルが高そうだ。古馬と3歳馬の力関係の比較が重要になりそうで、今年はどうなのか、よく検討した方がいい。
前走の内容:葵S
上位3頭が特別登録している葵Sについて振り返っていく。葵S時の京都競馬場は綺麗な馬場状態で内外のトラックバイアスの差はなし。経済コースを通った馬が有利だったように感じる。
勝ち馬のピューロマジックはゲートこそ若干遅れたがそこからの出脚が速く最内を走っての逃げ切り勝ち。レースラップは前半3Fが33.2秒、後半3Fが33.9秒で前傾0.7秒。単純な数字から重賞にしては楽に逃げさせてもらえたが、時計は優秀で評価できる。また、やや行きたがる面を見せていてペースが上がるのは問題ない。
2、3着のペアポルックス、ナナオはそれぞれ内側の2、3番手を先行。通過した順位のままの着順だった。2頭ともピューロマジックとほぼ同じ上がりだったため、逆転するにはピューロマジックより前に構えるのが理想的な展開。ナナオはマーガレットSでピューロマジックに勝っているがこのレースは重馬場で、適性面に差があったからだろう。当日の天気にも注目だ。
血統解説:サーマルウインド、ピューロマジック
・サーマルウインド
日本での牝祖は3代母のウインドインハーヘア。いわずもがなディープインパクトの母だ。本馬の近くでは叔父アサヒ(父カレンブラックヒル)、従姉妹アドマイヤミヤビ(父ハーツクライ)など重賞で活躍した馬が名前を連ねる。成長力のあるファミリーで前走の春雷Sや3走前の信越Sの内容を見るとここにきて馬が完成してきたように見える。
また、前走が初めての1200m戦だったが問題なく走れていた。父がドレフォンだから一定のラップで走るのは得意なタイプ。古馬の代表格となるのは本馬だろう。ただ、スプリンターにしてはストライドの大きいタイプで、小回りの小倉競馬場がどうか。
・ピューロマジック
日本での牝祖は6代母ビバレジナ。母メジェルダは1勝馬ながらファンタジーS2着の実績馬だ。本馬の全兄メディーヴァルは芝ダート問わず短い距離でJRA4勝のOP馬。半兄バグラダス(父マジェスティックウォリアー)も同じく芝ダート問わず短い距離でJRA4勝を挙げている。本馬を含めてJRAで出走した産駒3頭が全てOP馬となっているためメジェルダは非常に優秀な繁殖といえる。本馬は父がアジアエクスプレス。メディーヴァルも芝でOPクラスを勝っているが、本馬は牝馬なのでより芝に適性が高く出ている。
馬格がそこまで大きくないので馬場が渋ると苦しくなるが、開幕週の綺麗な馬場状態はベスト条件。ここもハナを取れば面白い存在になりそうだ。
Cアナライズではピューロマジックを推奨
今回はピューロマジックを推奨する。3歳馬対古馬という構図になりそうな北九州記念だが、古馬勢はそこまで強力なメンバーではない。またピューロマジックが制した葵Sは好時計で、今年の3歳世代はスプリント路線においては一定のレベルにありそう。ここもハナを主張すれば、たとえ前走よりペースが上がっても開幕週なら逃げ切れる。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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