【日本ダービー】臨戦過程が魅力的な超良血馬シンエンペラーが本命 穴は“逃げたら怖い”サンライズアース
山崎エリカ
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あまりに後方からだと届きにくい
過去10年で先行5勝、中団3勝、追込1勝、捲り1勝。2着も逃げ~中団が8回。追込馬がワンツーを決めたのはご存じのとおり、2022年のドウデュースとイクイノックスだが、この年は緩みなくレースが流れていた。
基本的にはスローペースの傾向で、前走から大幅距離延長となる前週のオークスとは違い、3角時点での位置取りがあまりに後方からだと届きにくい。今年はメイショウタバルの取消で逃げ馬不在。中団よりも前でレースを進められる馬を中心に狙いたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 コスモキュランダ】
1勝馬ながら弥生賞を捲る競馬で優勝すると、前走の皐月賞でも2着と好走した。
前走は12番枠からやや出遅れ。そこからコントロールしながら中団と、いつもよりも前の位置を追走した。1角で内に入れ、道中は中団の内目で我慢。3~4角ではシンエンペラーをマークして、かなり押しながら鞭も入れて中目に誘導、4角出口で外に出して直線へ。序盤は4列目。そこからじわじわ伸びて2列目付近まで上がり、ラスト1Fで内から先に動いたジャスティンミラノと一緒に伸びる。ジャンタルマンタルは捉えたが、勝ち馬にはクビ差届かなかった。
前走はメイショウタバルの大逃げで、前後半5F57秒5-59秒6とかなりのハイペース。3~4角のペースダウンで各馬が前を捉えに動いていく中、本馬はほぼ動かなかったことで展開に恵まれての好走だった。
似たような例では、オークスに出走したコガネノソラがスイートピーSで同様に恵まれたことで上位の指数を記録するも、次走のオークスでは展開に恵まれながらも末脚不発で12着に敗れている。
コスモキュランダはそこまで遅くはないペースの弥生賞を捲って勝利した内容が強く、前走皐月賞での指数も高いことからコガネノソラとは異なるが、展開に恵まれて能力を引き出された後の次走を狙うのは怖いもの。ダメージが出る危険性があり、今回は本来の能力を出し切れないと見る。
【能力値2位 ジャスティンミラノ】
超絶スローペースの新馬戦、共同通信杯はともに2番手でレースを進めて連勝した。
前々走の共同通信杯は8番枠から出遅れたが、そこからかなり押すとスピードに乗り、かつ前がペースを落としたことで楽に2番手まで上がった。そこからはコントロールし、3~4角でもペースが上がらなかったが、逃げ馬をかわさずに2馬身ほどの差で直線へ。序盤で追われると徐々に前との差を詰め、ラスト2Fですっと伸びると一気に抜け出して1馬身差。そのままジャンタルマンタルの追撃を楽に振り切って1馬身半差で完勝した。
ペースが遅い中でも抜群の操縦性で、しっかりと折り合いがついていた。さらにラスト2F10秒9-10秒8と加速していることからまだ余力があり、次走の皐月賞ではどこまで上昇するのか楽しみにしていた。
その皐月賞では13番枠からやや出遅れたが、二の脚が速く、好位の外を取り、道中は大逃げのメイショウタバルから離れた好位をコントロールしながら追走。3~4角で前のジャンタルマンタルにやや置かれたが、直線序盤で同馬と2馬身差の2番手まで上がる。ラスト1Fでしぶとく伸びて同馬を捉えると、コスモキュランダの追撃をクビ差で振り切った。
皐月賞は想像以上に強い内容。皐月賞は2、4、5、6、7、8着馬が差し・追込馬だったように、かなりのハイペースで前に行った馬には不利な流れ。ジャスティンミラノは3番手ジャンタルマンタルの一列後ろでレースを進めての優勝だった。
今回で不安点を挙げるとすれば、レコードタイムを記録した疲れがどの程度残っているかになるが、馬場が軽かったことから、そこまで疲れが残らない一戦だったと見ている。実際に3着のジャンタルマンタルは次走のNHKマイルCを優勝した。また、今回は15番枠と外枠に入ったが、操縦性が高く自在に動けるのでそこまで不利な枠でもないだろう。
ただし、05年ディープインパクト、06年メイショウサムソン、11年オルフェーヴル、15年ドゥラメンテ、20年コントレイルなど、皐月賞・ダービーの二冠馬が誕生した年の皐月賞はいずれも平均ペースよりも遅かった。ハイペースの皐月賞馬はダービーで取りこぼす傾向がある。ジャスティンミラノには目立った死角がなく、馬券圏内には食い込めそうだが、対抗評価に止めたい。
【能力値3位タイ シンエンペラー】
凱旋門賞馬ソットサスの全弟という超良血馬。新馬戦ではラスト2Fを11秒1-11秒0という素晴らしい内容で勝利すると、デビュー2戦目に京都2歳Sを優勝。素質の片鱗を見せた。
次走はGⅠホープフルSに出走。6番枠からまずまずのスタートを切って、そこからじわっと先行争いに加わっていった。道中は2列目の内を、前にスペースを作って追走。その後、3~4角のペースダウンで前とのスペースがなくなり、ブレーキ気味で仕掛けを待たされた。4角では外へやや膨らみ他馬に接触しかける幼さも見せたが、直線序盤で早々と抜け出すと、後続との差を2馬身まで広げた。ラスト1Fも加速していたが、レガレイラに差し切られて3/4差の2着だった。
暮れの中山で行われたホープフルSは外差し有利の馬場で緩みない流れ。追込のレガレイラが届くような流れを、早め先頭からの2着という結果は着順以上の強さや豊富なスタミナを感じさせた。そこからは日本ダービーにピークがくるように逆算し、使い出した弥生賞で2着。前走の皐月賞は外枠から勝ちに行き、直線序盤でふらつく場面がありながらも5着に健闘した。
前走時は追い切りの動きが良くなく、陣営も状態面がやや不安であることに言及しており、完調手前の状態だったはず。それを考えれば合格点の内容であり、かつてのダービー馬ワグネリアンを思い出させる臨戦過程。全ては日本ダービーにピークを持ってくるためだ。
今回、13番枠と外枠に入ってしまったのはやや不安材料だが、このあたりもワグネリアン(17番枠からダービー制覇)に似ている。まだ幼さを見せる走りではあるが、それでもここまで通用してきた。日本ダービー馬になることを期待する。
【能力値3位タイ レガレイラ】
ホープフルSの勝ち馬。当時は13番枠から出遅れたが、ある程度挽回して後方2列目の外を追走。道中は緩みなく流れていたが、中目のスペースを拾って中団まで進出し、3~4角で押し上げる。4角でペースが落ち、そこで好位列が外に広がったが、ワンテンポ待って4角出口で外へ。直線序盤はジリジリとしか伸びなかったが、ラスト1Fで一気に伸びると3/4馬身差で勝利した。
ホープフルSは5回中山9日目で外差し有利の馬場。さらにレースが緩みなく流れたことで展開の後押しもあった。ここでは馬場の悪化した内を先行したシンエンペラーのほうが強いレースをしている。そのうえ、皐月賞はあくまでもダービーを目標とした始動戦だったこともあり、このコラムでは軽視した。
結果は6着敗退。10番枠から五分のスタートを切ったが、やや進みが悪く後方外からの追走となり、アーバンシックをマーク。しかし、同馬とは0.1秒差でゴールとそれほど差を詰めることができなかった。
それでも上がり3F最速タイを記録した辺りに、それなりの能力の高さを感じさせる。レガレイラは叩かれた今回が本番。あとは牡馬トップ級を相手にどこまで通用するかになる。
【能力値5位 ゴンバデカーブース】
デビュー2戦目でGⅢサウジアラビアRCを優勝した馬。同レースでは2番枠から五分のスタートを切ったが、そこまで進まず中団からの追走。前のエコロマーズが下がってきたのに巻き込まれたことで、後方まで下げ切った。
そこから促して3~4角でペースが落ちてくると、コントロールして後方の外へ誘導。4角で逸走しかけた前2頭の内から押し上げて直線へ。序盤で追われるとジリジリ伸びて3列目。残り200mで一気にボンドガールらを捉えると、ラスト100mでそのまま突き放して2馬身差で完勝した。
このサウジアラビアRCは2歳秋の重賞としては緩みない流れ。前半脚を溜めたことで、最後の直線で末脚を炸裂させることができた。しかし、デビュー2戦目での重賞勝利は素質が高ければこそである。
ノド鳴りの手術による休養明けとなった、前走のNHKマイルCでは4着敗退。中団でレースを進め、最後の直線は序盤の加速でやや置かれながらもラスト1Fで伸びてきた。エンジンの掛かりがやや遅いことを感じさせたが、ここでも長くいい脚を使っており、悪い内容ではなかった。
今回はレガレイラ同様に叩かれての前進が見込まれる。また長くいい脚が使える点からは距離が延びても良さそうだが、もともとノド鳴り持ちだっただけに不安もある。現状で能力面の疑問もあるが、まだキャリアは3戦と浅く、伸びしろがあるはず。警戒しておきたい馬だ。
穴馬はスタートを決めたら怖いサンライズアース
サンライズアースは大味なタイプで、デビューから一度もまともに走っていない馬といえる。
京都芝2000mの新馬戦では8番枠から五分のスタートを切ったが、すぐに首を上げて尻尾をクルクル回転させていた。そこから促されるとすっと加速して1角までに先手を取ることに成功。そこからはマイペースの逃げ。3~4角で外からシュクルノアールにプレッシャーをかけられると、それに抵抗して気合をつけられ、2馬身差のリードで直線へ。ラスト1Fで外からヴィスマールに迫られたが、振り切って3/4差で勝利した。
新馬戦のラスト2Fは11秒7-11秒7。新馬戦としてはそこまで遅いペースではなく、最後まで減速しなかったことにスタミナの豊富さを感じさせた。
また次走のすみれSでは出遅れ、後方2番手からの追走になったが、向上面で一気に上がって3角手前で先頭のミカエルパシャに並びかける。同馬が抵抗して3~4角でペースが上がったが、持ったままついて行き、直線序盤で追われると楽に抜け出した。ラスト1Fでもしぶとく粘り、外から迫るジューンテイク(後の京都新聞杯優勝馬)を寄せ付けず、1馬身半差で完勝した。
前走の皐月賞は15番枠から出遅れ、終始中団やや後方で外々を回る形。さらに、4角では逸走しかけて大外に膨らみ12着に敗れた。大型馬で完成度が低いが、それでもデビュー2戦目でリステッド競走を勝つあたり、非凡さを感じさせる。
今回は1番枠。メイショウタバルが不在のここはスタートさえ決めれば、新馬戦のように逃げられるはず。逃げて持ち前のスタミナを生かした場合は怖く、今回の穴馬候補とする。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)コスモキュランダの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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