【NHKマイルC】Storm Cat内包馬は下位人気でも活躍 ジャンタルマンタルは実績、血統面で文句なし
坂上明大
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傾向解説
2024年5月5日に行われる3歳芝マイル王決定戦・NHKマイルカップ。スプリント路線から中距離路線、そして牝馬路線など幅広いカテゴリーから実力馬が集結する非常に難解な一戦です。本記事では血統面を中心に、NHKマイルカップのレース傾向を整理していきます。
まず押さえておきたいポイントは各路線の力関係について。3歳牝馬路線は1600m>1400m、1800m以上>1200m以下という力関係が明確にあり、これは桜花賞を大目標にする馬がほとんどであるためです。それに対して、3歳牡馬路線はクラシック第1戦・皐月賞が2000mで行われるため、1800m以上に素質馬が集まりやすく、そこから距離が短くなればなるほどメンバーレベルは落ちる傾向にあります。
そのため、3歳マイル王決定戦であるNHKマイルカップにおいても前走で1600m以上を使っていた馬の好走率が高く、特に牡馬は1800m以上組、牝馬は1600m組を中心に狙うのが本レースのセオリーといえるでしょう。
<前走距離別成績(過去10年)>
1200m【0-0-0-1】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回率0%/複回率0%
1400m【1-1-1-29】勝率3.1%/連対率6.3%/複勝率9.4%/単回率92%/複回率90%
1600m【6-5-7-85】勝率5.8%/連対率10.7%/複勝率17.5%/単回率50%/複回率111%
1800m【0-3-1-19】勝率0.0%/連対率13.0%/複勝率17.4%/単回率0%/複回率86%
2000m【3-1-1-12】勝率17.6%/連対率23.5%/複勝率29.4%/単回率84%/複回率140%
血統面では第1回から北米血統馬がとにかく強いレース。短距離馬も多く参戦するためハイペースになりやすく、特に2001年1着クロフネ(父フレンチデピュティ)→2着グラスエイコウオー(父フレンチデピュティ)から始まったDeputy Minister系の強さは20年以上が経った現在も変わっていません。2013年10番人気1着マイネルホウオウ、2016年12番人気3着レインボーライン、2022年18番人気3着カワキタレブリーなど大穴馬の好走も多数見られます。
また、Deputy Ministerと同様に北米の主流血統であるStorm Catも大活躍。2014年17番人気2着タガノブルグ、2017年13番人気2着リエノテソーロ、2019年14番人気2着ケイデンスコール、2020年9番人気1着ラウダシオンなど、こちらも数多くの下位人気馬が波乱を演出しており、昨年は3番人気以下の該当馬が4着内を独占する結果となりました。
<血統別成績(過去10年)>
Deputy Minister【2-1-4-23】勝率6.7%/連対率10.0%/複勝率23.3%/単回率40%/複回率215%
Storm Cat【3-6-2-30】勝率7.3%/連対率22.0%/複勝率26.8%/単回率143%/複回率286%
血統解説
・ジャンタルマンタル
母インディアマントゥアナは2018年レッドカーペットH(北米GⅢ、芝11F)の勝ち馬で、父Palace Malice(2013年ベルモントS)はアイアンバローズやジャスティンパレスの半兄。距離適性の幅も広く、手先が強いためダート適性も高そうな北米血統馬です。Deputy MinisterとStorm Catという本レースと特に相性の良い血を兼備し、ハイレベルな皐月賞で3着という実績も今回のメンバーでは最上位。実績、血統面ともに文句なしの一頭です。
・アスコリピチェーノ
母母リッスンは2007年フィリーズマイル優勝馬で、母アスコルティのきょうだいにはタッチングスピーチやサトノルークスなどがいます。さらに、母はデインヒル系Danehill Dancer産駒で、繁殖牝馬としてはアスコルターレ(2021年マーガレットS)などスピードと早熟性に優れた産駒を多く輩出しています。
Deputy MinisterやStorm Catの血は持たないものの、ダイワメジャー産駒という点は高評価。特にDanzigとSadler's Wellsを併せ持つ形は2016年1着馬メジャーエンブレム、2020年2着馬レシステンシアと同じで、ダイワメジャー産駒の牝馬としては満点の配合形といえるのではないでしょうか。
・ボンドガール
母コーステッドは2016年BCジュベナイルフィリーズターフの2着馬で、本馬の半兄にはダノンベルーガ(2022年共同通信杯)がいる良血馬です。アスコリピチェーノと同じダイワメジャー産駒の牝馬ですが、本馬は母が北米血脈主体のスピード馬で、NHKマイルCで好走したダイワメジャー産駒の牝馬と比較するとやや重厚さに欠く印象も。本馬にとっては高速馬場をスピードで押し切る競馬が理想でしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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