【中山記念】大幅馬体増で勝ったドゥラメンテ、横山典弘騎手が最多5勝 中山名物GⅡの「記録」を振り返る
緒方きしん
ⒸSPAIA
18キロ増の復活劇、二冠馬ドゥラメンテ
今週は中山記念が開催される。3歳時に活躍した実力馬たちが古馬となって最初のレースに選ぶことも多い一戦。過去にはサイレンススズカやキングヘイロー、ヴィクトワールピサといった名馬が勝利を収めてきた。今年も皐月賞馬ソールオリエンスら勢いある4歳勢が飛躍を誓い参戦、注目が集まる。ここでは、中山記念の記録を振り返る。なお、データは1986年以降のものだ。
年明け初戦の馬が多いこともあり、大幅な馬体重の増減をもって参戦するケースも多い。勝ち馬として馬体重の前走比が大きかったのは、3位が2023年ヒシイグアス(+14キロ)で2位が2017年ネオリアリズム(+15キロ)。ヒシイグアスは前年の宝塚記念後に熱中症となった影響もあり8ヶ月ぶりの実戦。7歳にしてキャリア初の馬体重500キロ台での出走となったが、2年前に制した舞台で復活劇を披露した。
一方のネオリアリズムは馬体重の増減の多い馬で、前年も2月の小倉大賞典を20キロ増で出走し3着に入ると札幌記念では18キロ減で出走して勝利。マイルCSでは6キロ増の502キロで3着に入ると、香港を挟んで挑戦した中山記念は15キロ増の514キロで勝利をあげた。様々な増減があったが、これは前年の同時期に出走し好走した小倉大賞典の516キロと比べると2キロしか変わっていないように、ネオリアリズムにとって"この時期のベスト馬体重"だったと言えるかもしれない。
そして馬体重増減のトップは、2016年の勝ち馬ドゥラメンテの18キロ増。ダービー後に放牧先で骨折が判明した同馬は、それ以来となる9ヶ月ぶりの実戦を中山記念で迎えた。デビュー時は480キロ、ダービー制覇時は484キロと、それまで474~488キロの間で歩んできた同馬だが、ここで一気に500キロ台に突入しての参戦だった。レースでは好位から早めに抜け出し、アンビシャス、リアルスティールといった同期やイスラボニータ、ロゴタイプといった年長馬を撃破。次走はドバイシーマクラシック2着、その次が宝塚記念2着。この宝塚記念の直後に引退したため、中山記念がドゥラメンテにとって最後の勝ち星でもあった。
そしてこの馬体重増減のトップ3(ヒシイグアス、ネオリアリズム、ドゥラメンテ)は、いずれも堀宣行厩舎。なかでもヒシイグアスが2021、2023年と2勝をあげていることもあり、中山記念で計4勝。調教師別の最多勝に君臨している。
中山記念5勝をあげる横山典弘騎手
ヒシイグアスのほかにも、ローエングリン、バランスオブゲーム、カンパニー、ウインブライトと、中山記念で2勝をあげた馬は多い。ウインブライトの2勝目となった2019年の上がり3Fは33.7で、歴代勝ち馬における上がり3F最速でもある(最も遅い上がり3Fで勝利をあげたのは、1998年のサイレンススズカで38.9)。
リピーターの多いレースではあるため3勝目に近づく馬はいるが、実際に3勝をあげた馬はまだいない、というのも中山記念の特徴だ。カンパニーは本格化前に2、4着があるものの、勝利をあげたのは現役ラスト2年の7、8歳シーズン。ローエングリンも4歳で勝利し翌年も3着と好走したが、それ以降、中山記念2勝目となる8歳シーズンまで出走がなかった。どちらも現役期間を伸ばしたり出走する年を増やしていれば……と感じてしまうような戦績ではある。果たしてヒシイグアスは、待望の中山記念3勝目にどこまで迫れるだろうか。
一方、3勝以上をあげている騎手は多い。M.デムーロ騎手と後藤浩輝騎手は3勝、柴田善臣騎手が4勝。そして横山典弘騎手が5勝で、これが最多だ。
横山典騎手にとって初の中山記念勝ち星は1996年サクラローレル。同馬は約13ヶ月ぶりの実戦ということもあり9番人気と低評価だったものの、レースでは上がり最速の末脚を繰り出してジェニュインらを差し切った。コンビ結成の初戦で結果を出した横山典騎手はその後もサクラローレルに騎乗。同年の天皇賞(春)と有馬記念などを制した。
横山典騎手の中山記念2、3勝目はどちらもカンパニーであげた。これに続く勝ち星となったのは、2014年ジャスタウェイとの勝利であった。次走でドバイDFを制覇し世界的な名馬となったジャスタウェイの充実ぶりを見せつける勝利と言える。そして5勝目は、2020年のダノンキングリー。ラッキーライラックやソウルスターリングといった強力な牝馬が出走していたが、明け4歳初戦となったダノンキングリーをしっかりと導いた。
実績を持つ馬や騎手が今年も結果を出すのか、それとも若き4歳世代が台頭するのか。今年の中距離戦線を占う一戦に注目したい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
《関連記事》
・【中山記念】前走GⅠ組の条件好転が狙い目 1800mで面白いソールオリエンスとソーヴァリアント
・【阪急杯】ウインマーベルが初の記録に挑む 穴は同舞台で惜敗続くグレイイングリーン
・【中山記念】過去10年のレース結果一覧
おすすめ記事