【武蔵野S回顧】ドライスタウトが距離を克服し快勝 絶好調シニスターミニスター産駒の得意パターンとは

勝木淳

2023年武蔵野ステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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レモンポップにも負けない内容

1番人気ペリエールはユニコーンS勝ち馬で、前走グリーンチャンネルC3着、2番人気ドライスタウトはフェブラリーS4着、4番人気タイセイサムソンは6月に同舞台のオープン勝ちと上位人気は東京ダート1600mを得意とする馬ばかり。優先出走権がかかるチャンピオンズCよりこの舞台で行われるフェブラリーSを見据えた戦いだった。ここに東京ダート初出走の3歳ペースセッティングが加わり、世代交代が進むダート界の次なる希望を争う一戦は、ドライスタウトの快勝で幕を閉じた。

2年前の同時期に行われたオキザリス賞を快勝したドライスタウトは全日本2歳優駿も勝ち、無敗で2歳シーズンを終えた。翌年は兵庫CS4着で初黒星を喫するも、昨年の霜月Sで復活、今年2月フェブラリーSは2番人気になった。相手関係を問わず、崩れず走れることこそ、能力の証明であり、猛者が長きに渡り活躍できるダートでは簡単ではない。みやこSを圧勝したセラフィックコールといい、近年はキャリアが浅くてもダート重賞で活躍する馬が多い。

これで地方交流と合わせ、早くも重賞は3勝目。走るごとに強さも増しており、今回は序盤600m34.5、前半800m46.3と今年のフェブラリーS(前半600m34.6、同800m46.6)より厳しい流れのなか、好位からゴールまできっちり走り切った。上がり3Fは2位の36.0を記録し、苦しいはずの残り200mでも末脚を使えた。東京ダート1600mでハイペースを好位から押し切れるのはチャンピオンクラス。レモンポップにも引けを取らないレース内容だったといえる。


活躍馬が目立つシニスターミニスター産駒

父シニスターミニスターは現役時代、米国のダート9ハロンGⅠブルーグラスSを勝った。エーピーインディ系らしくダート中距離に強い産駒を多く出し、距離の守備範囲も広い。母系には日本と相性がいいデピュティミニスターの血が入っており、総合力に長ける。GⅠ格3勝テーオーケインズ、先日JBCクラシックを圧勝したキングズソード、JBCレディスクラシック2着グランブリッジ、そして南関東三冠ミックファイアと今年は特に勢いがある。フェブラリーSではインカンテーションが15、18年2、3着。同馬は武蔵野Sも勝った。

総じて産駒の特徴はハイペース耐性にある。最上位クラスの力勝負に挑むにあたり、ハイペースを前で粘れる力は最大の武器になる。ここ最近の活躍ぶりもそんな武器を存分に発揮したからこそ。ドライスタウトも武蔵野Sのスタイルを崩さないよう、レース選択を慎重に行きたい。コーナー4つの中距離戦は競馬の形を乱す恐れもある。フェブラリーSへ向けて逆算して挑んでほしい。


レースレベルを引き上げたケイアイシェルビー

2着タガノビューティーは久しぶりにこの舞台で好走できた。レモンポップに離されたものの、マイルCS南部杯で末脚を使えたのは復調の証だった。左回りのマイル戦なら走って不思議はないが、最近は東京だと末脚比べで劣る場面が多かった。少し衰えを心配されたようで、6番人気はお買い得だったといえる。東京で上がり最速を記録したのは、2022年根岸S以来のこと。ドライスタウトしか残れなかったハイペースに乗じた面はあるにせよ、東京ならまだまだやれる。

3着レッドルゼルも離れた後方集団から末脚にかけた。1600mは距離適性としてはギリギリで、フェブラリーSと同じく前半は無理をせず。溜めるだけ溜めないと最後まで脚を使えない弱みはある。それでも3着までくるのは能力値の高さだろう。斤量を踏まえ、1200、1400mの選択肢がほしいところだ。

4着ケイアイシェルビーは前後半800m46.3-48.9の激流を演出した立役者だ。単騎で行くメイショウウズマサに対し、4コーナー手前で並びかけに行くという東京では掟破りの超積極策だった。このため、レース全体が早めに動き、最後は12.5と時計を要することになった。だが、これで4着に粘りこめており、ケイアイシェルビーにとって無謀な策だったとは言いがたい。こちらも母ケイアイガーベラとその父スマーティージョーンズ譲りのハイペース耐性が武器であり、自ら動いていく勇気が勝利につながるだろう。


2023年武蔵野S、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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