驚きの先行策で叶えた悲願 2014年日本ダービー馬・ワンアンドオンリー

SPAIA編集部

2014年日本ダービーのレース結果,ⒸSPAIA

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日本ダービーまであと8日

2022年の日本ダービーまで残り8日。ダービー前日までの連載として、過去10年の日本ダービーを一戦ずつ振り返っていく。

横山典弘の名騎乗

関東の名手・横山典弘騎手。積み上げた数字やタイトルもさることながら、時に外野からは想像も説明もつかないような独創的な騎乗ぶりで、見る者をハラハラさせ、そして魅了するスタージョッキーだ。横山騎手の「名騎乗」と呼ばれるレースは枚挙にいとまがないが、2014年の日本ダービーはその上位に数えられるのではないだろうか。

この年の1番人気はイスラボニータ。デビューから6戦5勝で皐月賞を制した大器。唯一の敗戦となった新潟2歳Sはのちの桜花賞馬ハープスターの2着で、実力は折り紙付きだ。しかしながら、単勝2.7倍は戦績からは意外にも思える低評価。父フジキセキという血統面から、東京の芝2400mに替わって他馬の逆転があると考えた人は少なくなかったようだ。

逆転候補の筆頭は2番人気トゥザワールド。ここまで6戦全て連対中の皐月賞2着馬。そして、3番人気ワンアンドオンリー。皐月賞は3角17番手からマクり気味に追い上げ、上がり最速で4着。「直線の長い東京なら、あの追い込みが決まるはず」。そんな予想は、別の意味で、裏切られることとなる。

先行争いはエキマエが主張し、トーセンスターダムが2番手。イスラボニータがこの2頭を見る外目の3番手につける。ワンアンドオンリーはこれまでと戦法を変えて、なんと5番手。イスラボニータを真後ろからマークするポジションを確保する。

1000m通過は大逃げのエキマエで59.6秒。2番手以降は決して速くないペース。後ろの馬には厳しい展開になった。

道中でエキマエが競走中止して、イスラボニータが2番手、いつでも先頭に立てる勢いで直線に向く。その真後ろにワンアンドオンリー。あとはもう、前を行く最大の標的が抜け出した進路をなぞってとらえるだけだ。

イスラボニータの蛯名正義騎手も、距離か、それとも後ろの気配を意識してか、仕掛けを存分に待って追い始める。関東のベテラン2名、馬体を接しての長い追い比べは、ワンアンドオンリーが3/4馬身差で勝利。鞍上の見事なエスコートが光った。

ワンアンドオンリーは新馬戦12着。2戦目の未勝利戦では単勝260.1倍の伏兵評価だったが、そのわずか9か月後に世代の頂点に立った。そして管理する橋口弘次郎師は、ダンスインザダーク、ハーツクライ、リーチザクラウン、ローズキングダムでの4度の2着を経て、これが初めてのダービー制覇。70歳定年まで、残り2年に迫った中での悲願達成であった。

2014年日本ダービー・全着順
1着 ワンアンドオンリー 横山典弘 2.24.6
2着 イスラボニータ 蛯名正義
3着 マイネルフロスト 松岡正海
4着 タガノグランパ 菱田裕二
5着 トゥザワールド 川田将雅
6着 ショウナンラグーン 吉田豊
7着 アドマイヤデウス 岩田康誠
8着 ベルキャニオン 戸崎圭太
9着 スズカデヴィアス 酒井学
10着 ワールドインパクト 内田博幸
11着 サウンズオブアース 浜中俊
12着 レッドリヴェール 福永祐一
13着 ハギノハイブリッド C.ウィリアムズ
14着 サトノルパン 小牧太
15着 アズマシャトル 松山弘平
16着 トーセンスターダム 武豊
中止 エキマエ 江田照男
出走取消 ウインフルブルーム 柴田大知

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