【天皇賞(春)】一番死角が少ないディープボンド タガノディアマンテは2強を逆転する力あり

山崎エリカ

2022年天皇賞(春)_PP指数,ⒸSPAIA

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舞台は今年も阪神芝3200m

阪神芝3200mはもともと設定がなかったコース。コース改修後に阪神芝3200mで行われたレースは、昨年と今年の3勝クラス・松籟Sと昨年の天皇賞(春)の計3レースのみ。

昨年の天皇賞(春)は、松籟Sを逃げ切り勝ちしたディアスティマが逃げたが、当時主戦だった北村友一騎手が同日に落馬し、坂井瑠星騎手に乗り替わり。同騎手はテン乗りでコース経験もなかったため、内を通ると不利な外差し馬場のなか、レースの1ハロン平均12秒2と速い乱ペースで逃げた。

今回16番枠ではあるが、逃げる可能性が高いタイトルボルダーの横山和生騎手は、昨年の松籟Sでメロディーレーン、天皇賞(春)ではジャコマルに騎乗しているものの、逃げたことはない。その他、前を狙うタガノディアマンテの幸騎手は過去2回の松籟Sは騎乗しているが、アイアンバローズ、クレッシェンドラヴの鞍上はこのコース未経験。今年も極端なハイペースになってしまうなど、ペースが乱れる可能性はありそうだ。

能力値1~5位の紹介

2022年年天皇賞(春)_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ディープボンド】
昨年の阪神大賞典を5馬身差で圧勝し、天皇賞(春)でも2着した実力馬。昨年暮れの有馬記念でも好指数で2着、昨春の走りは本物だったことを見せつけた。前走の阪神大賞典は行きっぷりが悪く、辛勝。指数も昨年と比べると随分と低いものになったが、前哨戦ということを考えれば十分に合格点だ。前哨戦で力を出し過ぎると疲れが残り、本番で良い結果が出ないことも多い。

昨年は阪神大賞典で高い指数を記録したため、本番ではやや上昇度を欠いた。今年はその点、上昇が期待できる。実際にこの中間の追い切りでも、伸びやかで余裕のある動きを見せていた。昨年の重馬場だった阪神大賞典を圧勝したことから、雨予報も歓迎だろう。今回の出走メンバーの中では死角が最も少ない存在。

【能力値2位 タイトルホルダー】
昨年の菊花賞馬。同レースを逃げて5馬身差で圧勝したスタミナは高く評価できる。前走の日経賞はクビ差の辛勝となったが、あくまで今回に向けての前哨戦だったことを考えれば、疲れを残さず優勝したことは文句なしだったと言える。

今年の天皇賞(春)はディープボンド、タイトルホルダーの2強が前哨戦を余裕残しで優勝し、本番に向かう形となったとこで、体調面で2強が崩れるという可能性は低い。となれば最後に明暗を分けるのは展開と馬場だろう。

先週の阪神芝は馬場の内目が悪くなり、最後の直線で外に出す馬の好走が目立った。馬場の内が悪くなると、そこを走らされる逃げ、先行馬はどうしても不利になりやすい。逃げながら直線で外に出すためには、直線に入る時点で後続を引き離しておかないと、外から並ばれ馬場の悪いところに押し込まれてしまい可能性がある。今回のタイトルホルダーは能力、体調面は問題なさそうだが、最後の直線での進路取りが難しくなりそうな気配だ。

【能力値3位 テーオーロイヤル】
昨年の青葉賞で4着、高い長距離適性を見せた馬。そして昨秋から怒涛の4連勝。前々走の3勝クラス・尼崎Sはオープン級の指数で勝利しており、かなり高く評価できる。そして前走のダイヤモンドSは離れた4番手から突き抜ける内容でとても強かった。今回も前走同様の走りができれば、ここでも十分にチャンスがあるだろう。

問題は前走からどれだけ上積みがあるか。前走で自己最高指数を記録した直後のレースでは、疲れが残って思わぬ凡退をすることが多い。しかし、上昇期に入っている上がり馬はそんなことは関係ないとばかり上昇していく。

今回は同馬の能力の天井がどこにあるかを問われる一戦と言えそうだ。過去の天皇賞(春)の歴史を見ていくと、前走ダイヤモンドS勝ちの馬はあまり良い結果を残せないことが多い。しかし、近走のテーオーロイヤルの勢いなら、さらに上昇を見せてくれるのではないか。そう期待したくなる。

【能力値4位 アイアンバローズ】
6走前の2勝クラス・白鷺特別を5馬身差で勝利。指数もオープン級を記録し、その後の活躍を予感させた馬。スタミナ型の馬らしく昨秋の復帰戦は好結果が出なかったが、叩かれながら着実に上昇、前々走のステイヤーズS、前走の阪神大賞典で連続2着と上昇中だ。

前走からさらなる上昇があれば、ここでも十分に期待できる。ただ今回は1番枠を引いた。スタミナ豊富な馬だけに先行した方が持ち味を生かせそうだが、馬場の悪いところを走らされそうな気配がある。また前走で自己最高指数を記録しており、状態面の判断が難しい。高い能力を認めながらも、半信半疑の部分がある。

【能力値5位 タガノディアマンテ】
今年初戦の中山金杯で4着、前走の京都記念で2着と好成績を残している実力馬。もともと万葉S圧勝の実績があり、長距離適性のあるところを見せていたが、驚かされたのは2年前のステイヤーズSを、長期休養明けながら2着したこと。それも出負けから2角過ぎでハナを狙える位置まで上がり、向正面で先頭と自らレースを作っての2着だった。

休養明けのレースで一番不足しやすいのはスタミナなだけに、長距離重賞で逃げ切ることは難しい。しかし、ステイヤーズSで逃げて僅差の2着だったことから、かなりの潜在的なスタミナの持ち主と言えるだろう。今年2戦は同馬にとって距離不足と言えるレースで着実に好成績を残しており、状態はかなり良さそうだ。そこにきて今回は本領発揮ができる長距離戦。2強を能力で逆転する可能性を秘める長距離砲だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ディープボンドの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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