【フェブラリーS】カフェファラオ、まさにスキなし、王座防衛! 雪の女王ソダシに復活の兆し

勝木淳

2022年フェブラリーSのレース結果,ⒸSPAIA

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カフェファラオにぴったりだった福永祐一騎手

テーオーケインズがぶっちぎったチャンピオンズCはダート路線の勢力図を考える上で重要なレース。そのテーオーケインズ不在となれば、一気に混戦具合が深まる。単勝オッズひと桁台に6頭、1番人気は前年覇者カフェファラオではなく、JBCスプリントを勝ったレッドルゼル。おそらくダートのコンディションが午前中不良、午後から重と悪く、高速化が決定的になり、スピードタイプに評価が傾いたからだろう。

古馬1勝クラスの1400m1.23.6、同舞台の3歳OPヒヤシンスS1.35.3、これらの時計を参考にすれば、34秒台前半、またはタガノトネールのレコードに届くのではという予想が立つ。ずっと上位人気評価のアイドルホース・ソダシは例外として、重・不良3勝のアルクトス3番人気は高速馬場への適性を期待されたものだ。

勝ったカフェファラオは東京ダート1600m4戦4勝。昨年のこの舞台、良馬場で1.34.4。重馬場1.33.8を出せる根拠は十分あった。ただし、その昨年から芝も含め3連敗。前走チャンピオンズCではテーオーケインズに2.0秒差11着、見せ場があったとはいえない。極端に悪い近況から疑われたのは仕方ない。

その敗因のひとつは気性。この手の極端な戦歴の馬はみんなここにある。いかに最後まで集中して走らせるか、レースを止めさせないか。そういった工夫を施し、馬の特性を踏まえた騎乗ができる、それが福永祐一騎手。福永騎手への騎乗依頼は自身の復帰前だったという。これが勝利を大きく手繰り寄せた一因だろう。

守り抜いた外目の4番手

スピードある馬たちがそろったGⅠ、そして高速馬場。前に行かないと勝負にならないことは明白。さらに、カフェファラオには外から被されない位置が必要だった。ゲートをなんとか五分に出て、そこから内は見向きもせず、枠番なりにまっすぐ走り、内と外の馬を待つ。ラチから5、6頭分外のポジションは絶対に渡さない。この主張がすべてだった。結果的に好位4番手の外。これ以上ないポジションをとった。

レースは伏兵サンライズホープが先手をとり、前半800m12.2-11.0-11.3-12.3、46.8。後半にさしかかる3コーナー手前でペースが落ちる。そこでテイエムサウスダンが動き、先頭に立つ。緩んだタイミングで動いたからこそ、2着に粘りこめた。岩田康誠騎手、瞬時の判断はさすがだった。この馬場で平均ペースになれば、後半が速くなるのは必然。後半800mは12.4-11.6-11.2-11.8、47.0。芝レベルの高速ラップが刻まれた。ダートでこれを後ろから追い込むのは厳しく、直線に入ると、勝負圏内は前に限られた。

カフェファラオが繰り出した上がり34.3は勝ち馬としてはフェブラリーSどころか、東京ダート1600mで歴代最速。4角3番手から異次元の末脚とあっては敵う馬はいない。それもこれもカフェファラオの気性を把握し、最善の競馬を実行した福永祐一騎手の手腕が大きい。最大限にその力を引き出せば、王座防衛も当然のこと。テーオーケインズは東京マイルでカフェファラオを負かせるだろうか。その対決もどこかで見たい。

テイエムサウスダンは本格化を証明、ソダシに復活の兆し

2着は5番人気テイエムサウスダン。これで根岸S組は7年連続馬券圏内。混戦模様のなか5番人気は妙味だった。1400mや地方競馬に良績が集中するテイエムサウスダンのイメージが邪魔をした。しかし、根岸Sではこれまでの競馬とは異なる、控えて差す競馬を展開、東京ダート1400mで重賞勝利とイメージを一新させる内容だった。こういった変化には敏感でいたい。京都記念のアフリカンゴールド同様、本格化には必ず予兆がある。

3着は4番人気ソダシ。父が快走した東京ダート1600mで復活のきっかけをつかんだ。今回は外枠から好位をとり、途中でテイエムサウスダンが外から来ても動じなかった。こちらもカフェファラオと同じく気性面に不安を抱えるタイプ。インティに交わされて伸びなかったチャンピオンズCと比較しても、気性の課題も前進したようだ。最後は少し伸びてきて、4着ソリストサンダーをじりじり離し、テイエムサウスダンに迫っており、前後半イーブン、ワンペースの競馬は得意だ。東京のマイル戦、芝でも面白い。

4着6番人気ソリストサンダーはダートの道悪巧者。根岸Sでは速い流れに戸惑ったが、1600mにかわり、高速ダートになったことで着順をあげてきた。今後もそういった条件でこそ狙いたい。

1番人気レッドルゼルは6着。高速ダートは得意だが、今回は反応できなかった。好位にいた馬しか参加できない流れと馬場だったことも敗因だが、やはり1600mだと反応が違う。距離は1400mまでと考えたい。

2022年フェブラリーSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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