【フェブラリーS】新興勢力不在でベテランの逆襲だ 東大HCはインティ3年ぶり制覇に期待

東大ホースメンクラブ

フェブラリーSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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今年最初のJRA・GⅠは大混戦

日曜東京のメインレースは今年最初のJRA・GⅠフェブラリーS。ダート界のトップホース2頭、テーオーケインズとチュウワウィザードがそれぞれサウジとドバイへ夢を追う中、昨年覇者カフェファラオ、JBCスプリント制覇から昨年以上の結果が欲しいレッドルゼル、復活を期す白毛馬ソダシなど、国内に残った16頭が栄えあるタイトルを目指す。

中心となる存在がいない大混戦を制すのはどの馬か、過去のデータを基に予想していく(参考にするデータは東京競馬場が改修されて以降のもの)。


渋った馬場はキレ命

東京改修後東京ダ1600m・OP以上・稍重以下上がり順位別成績,ⒸSPAIA


<OP以上・稍重以下の東京ダ1600m 上がり順位別成績>
上がり1位【12-8-14-9】勝率27.9%/連対率46.5%/複勝率79.1%
上がり2位【10-5-6-14】勝率28.6%/連対率42.9%/複勝率60.0%
上がり3位【5-7-5-21】勝率13.2%/連対率31.6%/複勝率44.7%
上がり4・5位【7-10-6-51】勝率9.5%/連対率23.0%/複勝率31.1%
上がり6位以下【1-6-5-322】勝率0.3%/連対率2.1%/複勝率3.6%
※東京競馬場改修後の2003年以降

今週土日は列島の南を低気圧が通過する見込みで、府中も雨の可能性が高い。渋った馬場でのハイレベルなレースのサンプルとして、東京ダ1600mのOPクラス以上、かつ稍重以下だった場合のデータを分析する。

脚質別成績では逃げ【5-2-1-27】複勝率22.9%よりも先行【13-14-9-91】複勝率28.3%が優秀という珍しい状況で、差しも【14-15-14-162】複勝率21.0%と十分に通用する。軽い馬場でもチャンピオンコースらしいタフさは健在で、直線最後まで脚を残しやすいポジションが優位だ。

そういった前提通り、上がり順位別成績には顕著な差が出ている。最速で駆け抜けた馬は8割近い複勝率で、16頭立てだった場合は84%に向上する。フルゲートでは前との距離がより広がることを考えれば驚きの数字で、いかにキレが重要かを示す格好のデータだ。同様に2位~5位までに馬券圏内がほぼ集中している。

上がり6位以下で馬券になったのは334頭中12頭のみで、フェブラリーSでは【1-0-1-40】。勝った2004年のメイショウボーラーは前半5F57秒8という超ハイペースを逃げて残したもので、2年後のスプリンターズSで2着に入るスピードが背景にあった。同じ芸当ができそうな馬は出走メンバーにいない。3着だった2007年のビッググラスは上がり最速のサンライズバッカス・ブルーコンコルドが突き抜けた上、同じ3位~5位が後方、それらとほぼ変わらない上がりを使ったというレアケースだった。

ちなみに同条件で牝馬は【0-2-2-34】。ダートのトップレベルで牡馬と渡り合うのが難しいことを加味しても割引条件になる。馬券圏内の4頭のうち3頭が上がり最速、残る1頭はのちにJBCスプリントを勝つコーリンベリーがユニコーンSで逃げたケースで、やはり極上のキレか1200mで通用するレベルのスピードがなければ土俵入りはできない。


前走JRAダートGⅠ組が安定

東京改修後フェブラリーS前走レース別成績,ⒸSPAIA


<フェブラリーS・前走レース別成績>
チャンピオンズC(JCダート)【6-3-2-11】勝率27.3%/連対率40.9%/複勝率50.0%
根岸S【5-2-6-92】勝率4.8%/連対率6.7%/複勝率12.4%
東海S【3-1-1-15】勝率15.0%/連対率20.0%/複勝率25.0%
地方ダートグレード【2-11-7-49】勝率2.9%/連対率18.8%/複勝率29.0%
※東京競馬場改修後の2004年以降

次に同じく東京コース改修後、2004年以降のフェブラリーSについて、前走別のデータを調べる。

最も成績がいいのは前走チャンピオンズC(JCダート)組。出走したうちの半数が馬券に絡んでいる。明暗の分かれ目はやはり上がりで、5位以内なら【6-3-2-0】、6位以下は【0-0-0-11】。ゆとりあるローテを踏み、かつ一定のキレが担保されている馬は堅い。

根岸S組は出走数が多いため複勝率はいまひとつだが、目下6年連続で3着以内馬を輩出しており無視はできない。取捨のカギは前走着順、3着以内なら【5-2-5-28】、4着以下で【0-0-1-62】。後者で唯一の馬券圏内は2004年のスターリングローズで、3着以内を4角11番手以下の馬が独占する前崩れを先行、大敗してからの巻き返しだった。これ以降20年近く凡走が続いている点に注意したい。

東海S組は3着以内のうち4頭が前走勝ち馬で、これらはいずれも2着に0.3秒差以上をつける圧勝で本番に臨んでいる。0.2秒差以下の1着、もしくは2着以下だと【0-1-0-13】と苦しく、今回の2頭は強調しにくい。

地方ダートグレード組は上記の2レースより好走率が高い。好走例は全て川崎記念か東京大賞典組だが、その他のレースもサンプルが少ないため慎重に検討したい。


3年ぶりの美酒へ

◎インティ
以上を踏まえ、本命は御年8歳の同馬に。破竹の7連勝でフェブラリーSを制してから早3年、現在13連敗中だが、レース内容に衰えは見られない。昨年の同レースでは上がり2位・35.5の脚を使い、続くかしわ記念・南部杯では上がり最速。前走のチャンピオンズCは最後の最後までチュウワウィザードとアナザートゥルースの猛追に抵抗した。高齢馬受難のレースではあるが、今年はこれといった新興勢力が不在。チャンピオンズC1、2着の後輩たちが海外に飛んだ今、ベストのマイルで中年の星が真の輝きを取り戻す。

◯エアスピネル
対抗はさらに1つ年上の9歳馬。昨年のフェブラリーSは9番人気の低評価をあざ笑うように上がり最速の末脚で2着に食い込んだ。クラシックから出遅れがほとんど見られず、勝てないまでも堅実に上位に加わってくるレース巧者ぶりが評価できる。前走のチャンピオンズCは大敗したが、そもそも4歳以降で馬券になったレースは全てマイル以下。適距離に戻れば見直せる。

▲アルクトス
マイルCS南部杯を連覇したダート1600mの日本レコード保持者。1400mのさきたま杯も勝っているようにスピードはメンバー上位で、渋った馬場ではかなりの強みとなる。体質が弱いため、叩いて上昇というタイプではなく、ある程度の休み明けが好走パターンの馬。南部杯からたっぷりと休養を取ったことが吉と出そうだ。過去の同レース出走は2度とも9着に敗れているが、2年前は前総崩れの厳しい流れで4角先頭、昨年は根岸Sからの中2週という厳しいローテが敗因。三度目の正直があってもおかしくない。

以下、本来向かない小回りのJBCレディスクラシックを力の違いで勝ったテオレーマ、根岸Sで中央のダートに対応したテイエムサウスダン、ドバイゴールデンシャヒーン2着のスピードを買ってレッドルゼルまで押さえる。近2走にメンタルの問題が伺えるソダシ、American Pharoah産駒らしく内容の差が激しく、リズムを崩した感のあるカフェファラオは消し。馬券はインティの単勝と印を打った馬へ流す3連複で勝負する。

▽フェブラリーS予想▽
◎インティ
◯エアスピネル
▲アルクトス
△テオレーマ
×テイエムサウスダン
×レッドルゼル

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開、新入部員募集中。



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