【きさらぎ賞】寒風切り裂く大激戦! 大きなハナ差制したマテンロウレオ

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開催できたことへの感謝
琵琶湖東岸から関ヶ原、濃尾平野へ——。日本海からの寒気が山のない通り道を攻め込み、シャープな雪雲が断続的に流れる。開催最終週の中京競馬場はその影響に頭を痛めた。芝を傷めてしまうので、機械で除雪できず、手作業で除かなければならない。まずは1時間繰り下げで開催できたことに対し、馬場を管理する関係者に感謝を述べなければいけない。開催されて当然だとは思わないようにしたい。
芝は終日やや重。雪は雨ほど芝に水分を含ませないため、影響はないものの、暮れの6日間と金杯デーから12日間、2カ月で18日間開催されたダメージは大きく、昨年と同じボコボコとした力のいる馬場状態だった。
ダンテスヴューの強みを引き出した仕掛け
クラシックを展望する上で、レースでの消耗を考えれば、ここは落としたくない。本番との間隔が詰まるトライアルではなく、きさらぎ賞で賞金を加算したい。クラシックは勝ち抜き戦。一戦一戦が勝負だ。逃げたメイショウゲキリンのペースは1000m通過1.00.6。スローが定番の中京芝2000mにしては流れた。メイショウゲキリンが引きつける逃げを打つと、セルケトがしっかりそこについていった。そのため、流れは必要以上に落ちなかった。どんなチャンスもつかみたい、クラシックへの戦いは険しい。
後半1000mは11.9-12.1-11.9-11.8-12.2。早めに先行勢が押しあげ、勝負にいったことでロングスパート合戦になった。2着ダンテスヴューは東京スポーツ杯2歳Sで後方から差して4着、明らかに純粋な末脚比べでは劣る。だからこそ、川田将雅騎手は積極的に攻め、ロングスパート。馬群を自ら割り、抜け出してきた。母クロウキャニオンの産駒は瞬発力より持続力に強い。昨年のきさらぎ賞では半兄ヨーホーレイクが外目を差して2着敗退。馬の強みを考えれば、待ってはいられない。自らロングスパートするしかなかった。
結果的にはまたも2着。勝ったマテンロウレオとの差はハナ差。悔しい2着も勝ちにいっての結果。ダンテスヴューの強みは十分引き出した。母クロウキャニオンの産駒はストーンリッジ、ヨーホーレイクに続き、きさらぎ賞3年連続2着。胸を張っていい記録ともいえないが、これだけ安定してクラシック戦線に子どもを送るのはすばらしい。
侮れない3着メイショウゲキリン
ダンテスヴューらの早めの仕掛けを伺っていたのが勝ったマテンロウレオ。道中はマークしていたというより、立ち遅れ気味のゲートから無理をせず、あくまで馬のリズムを重視、気分よく走らせた結果が中団後ろ。今年早くも重賞3勝目、好調の横山典弘騎手らしい運びだった。前の早めのペースアップに応じず、虎視眈々と仕掛けのタイミングを狙う。名手の冷静な判断とそれに応えたマテンロウレオの末脚が光った。
マテンロウレオはホープフルS6着、ダンテスヴューは東京スポーツ杯2歳S4着。今年のクラシックはこの2レースが中心。昨年の共同通信杯と同じく、今後の3歳戦線もこの2レースを経験した馬に注目したい。
3着は逃げたメイショウゲキリンが残った。前後半1000m1.00.6-59.9、急坂がある中京、さらに最終週のパワー優先の馬場状態が味方、極端に後半が速くならなかったこともプラスに働いたものの、後ろの追いあげも早く、決して楽な逃げではなかった。それでもセルケトを競り落とし、4着アスクワイルドモア以下は完封。地力をつけた。賞金加算ができず、まだ1勝馬だが、トライアルで出走権をとり、本番出走の際には覚えておきたい。ノーマークの逃げ馬はいつでも怖い。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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