【東京新聞杯】能力上位はカラテ、ホウオウアマゾン 穴馬は東京巧者ドナアトラエンテ
山崎エリカ
ⒸSPAIA
Dコースの東京は前と内~中目が有利の傾向
5回東京後半4日間CコースからDコース替わりで行われた先週の東京芝レースでは、白富士Sでジャックドールが逃げ切り、1600mの節分S(3勝クラス)ではリフレイムが逃げ切るなど、逃げ馬の活躍が目立った。先週行われた芝9鞍中、逃げ馬の1着3回、2着1回、3着1回の活躍ぶりである。
3着1回は芝1600mの新馬戦、その他の連対馬は全て1番人気馬だが、Dコースはシンプルに仮策の移動で馬場の良い外を走れるうえに、コーナーが緩いのでペースが上がりにくく、前が有利の展開になりやすい。
また、先週の芝コースは馬番8番より外の馬が未勝利に対して、馬番7番よりも内の馬が10勝しているように、内目中目の馬が活躍していた。白富士Sの2着馬アドマイヤハダルも節分Sの2着馬タガノディアーナも3番枠で3~4角で中目でレースを進めていた馬である。これはコーナーが緩いので外枠の馬はロスが大きくなりがちなのが理由。
実際に過去10年の東京新聞杯では、8枠の馬(14番枠以降の馬)は死に目のように、一度も連対していないのだが…。これはさすがに極端としても、折り合う競馬で前進した外枠のホウオウアマゾンは2列目で狙いで、逃げるのはトーラスジェミニが濃厚。今回から着用するブリンカーによほどの効果がない限り、そこまでペースが上がる要素は少ない。Dコースの基本傾向どおりに予想を組み立てたい。
能力値1~5位馬の紹介
【能力値1位 カラテ】
昨年の東京新聞杯で初重賞制覇を達成した馬。昨年の東京新聞杯は中距離の逃げ馬であるダイワキャグニーが最内から先手を取って前半4F46秒6-後半4F45秒8のややスローペース。10番枠から好位の中目でレースの流れに乗ったものの、最後の直線序盤で先頭列が壁になる不利。しかし、そこから外に進路を切り替えて、外のカテドラルとの叩き合いを内からアタマ差で制した。
その次走の安田記念では、挫跖でダービー卿CTをスキップしての休養明けの一戦だったこともあり、13着と大敗を喫したが、その後も関屋記念で2着、京成杯AHでも差のない5着。前走のニューイヤーSは斤量58Kgを背負って、差し切り勝ち。
カラテは不良馬場の東京芝1600mの2勝クラスで圧勝した実績があるように、時計の掛かる馬場を得意とする馬。前走は稍重でやや時計を要したことが好走に繋がった面がある。今回は休養明け好走の反動が懸念されるところがあるだけに、過信はできない。
【能力値2位 ホウオウアマゾン】
昨春はアーリントンCを優勝しているようにマイル適性は高い馬。昨秋はスワンS3着、マイルCS5着、そして前走の阪神Cで2着しているように着実に力をつけている。ただ前走はテンの速いファストフォースが内に切って来たので、ホウオウアマゾンは3列目の内からの競馬。
3走前のスワンSは逃げたためにしまいが甘くなったが、前走は緩みないペースを好位の内々で上手く脚をタメたことで、スワンSで後塵を拝したダノンファンタジーやサウンドキアラとの大勢逆転を決めた。前走は能力を出し切ったようなレースぶり。明け4歳だけに成長力は期待できるが、前走からの上昇度はそこまで大きくないかもしれない。
【能力値3位 カテドラル】
昨年の東京新聞杯の2着馬。昨年のこのレースは4番枠を利して中団から3~4角の内をロスなく立ち回り、直線で外に出しての勝利。理想的なレース運びではあったが、同馬はその後の重賞で何度も好走しているように能力は高い。
前走のマイルCSは、11番枠から2馬身ほど出遅れ、最後方からの競馬。そこから押して後方2列目の最内という競馬だったが、最内枠のホウオウアマゾンが前半4F47秒6で逃げてかなりのスローペース。中団でレースを進めた勝ち馬グランアレグリアの上がり3Fタイム32秒7を上回る末脚が使えないと、勝ち負けは不可能な位置取りだった。
前走で出遅れて能力を出し切れなかっただけに、今回に向けて余力は残っていそう。また、今年も昨年と似たような馬場状態だけに、14番枠はマイナスだが、展開次第ではチャンスがあるだろう。実力よりも人気にならない馬だけに要警戒だ。
【能力値4位 ファインルージュ】
フェアリーSを優勝し、桜花賞でも3着とマイル適性は高い馬。オークスこそ崩れたが、桜花賞でソダシの後ろの3列目の内まで位置を取りに行った影響で、オークスでも行きたがるところを何度もブレーキを掛けながらの競馬。折り合いがスムーズではなかったことや、3角外から動いた馬が1着、3着、4着、5着と上位を独占したように外差し馬場だったことも影響している。
秋華賞ではオークスで馬場の悪い内を通った、アカイトリノムスメとファインルージュが、ワン、ツーを決めたが、この2頭は必然の巻き返しだったと言える。しかし、秋華賞は3~4角から2番手のソダシが逃げたエイシンヒデンに並びかけ、一気にペースアップしたことで、差し馬有利の展開。やや出負けして中団のやや後方でレースを進めたファインルージュは展開に恵まれての2着だった。それでもGⅢのここでは能力上位である。
今回の問題はまず休養明けであるということ。また前走の秋華賞は勝負がかりの一戦だったはず。そこからひと息入れての再始動戦にあたる今回がピークになるとは考えにくい。そして前走で距離の長い秋華賞で後方からレースをした直後の一戦となるだけに、レースの流れに乗りづらい面がある。ただ素質が高い馬だけに、そんなマイナス点はあっさりクリアしてしまうかもしれない。
【能力値5位 マルターズディオサ】
大外16番から好位まで位置を押し上げて2着と好走した阪神C時のように、以前は先行して粘るのが好走パターンだった馬。しかし、スタートでアオって後方2列目からの競馬となった昨秋の京成杯AHでは上がり3Fタイム最速を記録し、府中牝馬Sでは中団やや後方でレースを進めて3着と脚質に幅が出て来た。
しかし、前走のターコイズSでは8着と敗退。前走はタフな馬場でかなりペースも速く、展開自体は向いていただけに残念な走り。14番枠でコーナー3回の中山マイルで終始外目の競馬で、勝ち馬との着差は0.6秒差と致命的にも負けていないが、府中牝馬S3着時の疲れが多少残っていたのかもしれない。近走はスタートも二の脚もひと息で後ろからのレースが予想されるだけにあてにはならないが、力はあるだけに巻き返してくる可能性はある。
ドナアトラエンテは東京コースで6戦2勝、2着2回、3着1回、府中牝馬Sでも勝ち馬と0.3秒差(4着)に好走している東京コースが得意。昨春の福島牝馬Sでもディアンドルの逃げで前半4F48秒2とペースが上がらない中、13番枠から中団外目でレースを進め、道中でじわじわ好位まで押し上げ、2着と好走した。同馬はトップスピードもここでは上位のものがあるし、重賞でも通用する実力はある。
前走のターコイズSは後方の外からミスニューヨークがズドンと追込勝ちを決めたように、稍重で少し時計を要した中で、前半4F45秒4-後半47秒4のハイペース。ドナアトラエンテはスタート後に挟まれて後方から、じわじわ中団やや後方まで位置を押し上げ、終始外々を回るロスの大きい競馬。また前々走の府中牝馬S時に体を絞った影響で、前走時は馬体重18Kg増と太目が応えたようで14着に敗れた。
同馬のベストは1800mだが、前走で芝1600m戦を使ったことでレースの流れにも乗りやすくなるはず。また、内目の枠に入ったのも好ましく、スタートを決めてロスなくレースを進められれば、全能力の発揮が十分に期待できるだろう。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)カラテの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
《関連記事》
・【東京新聞杯】ハイブリッド式消去法で残るのは最大4頭! ファインルージュは鉄板軸馬か?
・【東京新聞杯】上位人気馬死角アリ、頼りになるのは枠順!? 当日まで覚えておきたいデータ
・【きさらぎ賞】血統マテンロウレオ、前走成績はストロングウィル、セルケト コースデータからの好走パターン
おすすめ記事