【根岸S】テイエムサウスダン、変身は本格化の合図! 本番も狙いたい上位好走馬
勝木淳
ⒸSPAIA
好内容続出の東京開幕週
開幕週の東京競馬場は芝もダートも前半活気ある流れになるケースが多く、ハイレベルなレースが続いた。最後の直線が500m以上あるコースで前半から飛ばせば、下級条件では差し馬に出番が回り、波乱決着になる。それでも芝は土曜メインのジャックドールや日曜10Rリフレイム、最終のカーディナルが逃げ切り勝ち。セントポーリア賞ドゥラドーレスを含め、目が覚めるような競馬が多かった。
芝の話題が多かった開幕週だが、冬の東京開催の主役はダート。最終週にはフェブラリーSを控える。その前哨戦、根岸Sは本番より200m短い1400m。東京ダートの1400mと1600mは求められる適性が異なることで有名だが、それでも近年は本番に直結する。ダートの活躍馬は本当にタフで、芝のようなゆったりローテを必要とせず、中2週でもパフォーマンスを落とさない。
イメージ一新テイエムサウスダン
本番直結の前哨戦を制したのは5歳テイエムサウスダン。2、3歳時に兵庫ジュニアGPを含め4勝。4歳は1月にJRAでOP勝利後、根岸S13着。壁にはね返された形だった。その後、地方交流重賞3勝も武蔵野S9着。砂の深い地方とスピード優先のJRAダートでは成績に開きがあった。ダート1400m7勝の距離巧者も、そういった事情から6番人気でレースを迎えた。
確かに小回りパワー優先の地方で強く、JRAだと結果を出せないというタイプの馬は多い。かつ、のちにJRAでも好走するようになるケースは多くない。それだけにテイエムサウスダンを見直したい。小回りを先行して押し切るスタイルを脱し、根岸Sでは好発から中団のインに潜り、最後は外に出して差してきた。ある程度速い流れになり、馬群の切れ目に上手く入ったこともあるが、揉まれると力を出せなかった馬がここまで鮮やかに変身するとは。これはテイエムサウスダンが成長し、力をつけてきた証であり、今後は「地方でこそ」という評価を改めるべきだろう。
フェブラリーS参戦は不透明ながら、もはやJRA重賞でも軽く扱えない。ダートの活躍馬はタフであると同時に成長力もある。父サウスヴィグラスの根岸S連覇、ダート重賞6連勝は6、7歳時の記録。根岸Sはテイエムサウスダンの本格化を告げるレースでもあった。
昨年より前進見込めるヘリオス
このレース、逃げたジャスティンのペースは前半600m34.4。これはやや重だった昨年と同じ。週中に凍結防止剤、力のいる馬場での記録であり、厳しかった。ジャスティンは一旦後ろを突き放し、見せ場こそ作ったものの、最後の600mは12.0-12.2-12.7、最後の200mで踏ん張りを失った。
結果は差し馬優位の根岸Sらしい差し決着。昨秋、この舞台で逃げてOP連勝のヘリオスは純粋な逃げ馬ではなく、相手関係次第の馬。今回はスマートに控えて、最後は差してきた。重賞通用の力を証明。こちらも競馬のスタイルを変えての好走だけに上積みがありそう。昨春オアシスS1.35.3で3着、昨年のフェブラリーSは最下位に沈んだが、今年はもっとやれそうで、決して1400m専用ではない。
3着タガノビューティーはスタートで後手、ちょっと流れに乗れなかった。このコースはベスト。最後は外をよく伸びていただけにもったいない。もっとも、馬群に入れられないという弱点も抱える馬で、まだまだ極端な競馬しかできない。前走ギャラクシーSのようにコーナーで動き、勝ちに行くと甘くなるものの、決め手は重賞レベル。ダートは出走ボーダーとなる賞金の水準が高いので、なんとか賞金を上積みしたかった。武蔵野Sは直線でスムーズさを欠き、6着の額面通りに受け取れない部分もある。昨年はヘリオスに東京1400、1600mで2戦2勝。こちらも出走すれば本番で面白い。
1番人気ソリストサンダーは直線入り口で馬群に入り、進路がなく追い出しを待たされた。それも敗因の一つだろうが、テイエムサウスダンが抜けたあとも、さほど脚は使えなかった。武蔵野Sから根岸S、フェブラリーSと東京に特化した理想的なローテであり、前が詰まったから負けたと本番での巻き返しを期待したくなるが、はたしてどうだろうか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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