【AJCC】スピードの持続力があるオーソクレースが有力 穴馬は2018年の同レース覇者ダンビュライト

山崎エリカ

2022年AJCCPP指数,ⒸSPAIA

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決め手よりスピードの持続力

AJCCが行われる中山芝2200mは、スタンド前の直線入り口からスタートして高低差5.3mの頂上を目指して坂を上り、向正面で坂を下るコース。外回りで円状コースということもあり、ネコパンチが大逃げを打った2013年のように、逃げ馬が意図的にリードを広げないと前半のペースが上がりにくいのが特徴。

しかし、上級条件だと前半5F目までがスローペースでも、向正面の下り坂で勢いに乗せ、捲ってくる馬が出現し、3角入口付近(ラスト5F地点)から一気にペースアップする場合もある。実際、過去10年のAJCCでラスト5F目が最速だったことが2度あり、そのときは3角10番手以下だったヴェルデグリーン(2014年・1着)とゼーヴィント(2017年・2着)が連対している。

今回は前にいって持久力を生かしてこそのキャッスルトップが初芝でも逃げたり、捲った場合はハイペースになる可能性が高まる。しかし、同馬は尾持ちスタート(厩務員がゲート裏で尾を持ってスタートを補助)をすることで、逃げて結果を出した馬。尾持ちスタートが禁止されている中央競馬では逃げられない可能性もある。

順当にダンビュライトが逃げるのであれば、スローペースが濃厚。もともと中山芝2200mは全体的には時計が出にくいコース。さらに2連続開催の中山最終週で馬場がタフということもあり、決め手がある馬より、平均的にスピードを持続させることが得意な馬が活躍する舞台。それを踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年AJCCPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ポタジェ】
デビューから前々走まで11戦全て3着以内、重賞の金鯱賞3着、新潟大賞典2着、毎日王冠3着と安定した走りを見せていた馬。しかし、前走の天皇賞(秋)では6着と馬券圏外に敗れた。同馬は自在性があり、金鯱賞のようなタフな馬場、毎日王冠のような超高速馬場、そしてスローペースやハイペースにも高い水準で対応できるのが強み。一方、決定的な武器がないのが弱点である。

前走の天皇賞(秋)は休養明けの毎日王冠で自己最高指数タイを記録した後の疲労残りの一戦。加えて、2番手から逃げたカイザーミノルにプレッシャーをかけ、4角で先頭に立つかの勢いで早仕掛けしたグランアレグリアをマークし、同馬の後ろからついていくように動いたのが敗因。

トップスピードが違うエフフォーリアやコントレイルに交わされるのはともかく、掲示板争いにも敗れたのは、仕掛けが早かったからだろう。理想は新潟大賞典、毎日王冠のように差す競馬だが、相手弱化のここなら金鯱賞のような先行策でも巻き返してくる可能性が高いとみて、重い印を打ちたい馬だ。

【能力値2位 ボッケリーニ】
一昨年12月の中日新聞杯で重賞初制覇を達成すると、昨年2月の小倉大賞典で2着と好走した馬。小倉大賞典当日は外差し馬場。トーラスジェミニとディアンドルが競り合い、3番手以下を大きく引き離したことで、ボッケリーニは好位の外5~6番手ながら実質差しの競馬。展開に恵まれての2着だった。

また同馬は前々走のアンドロメダSでも2着と好走。やや出負けし中団中目でレースを進め、3角から一気にペースアップ。3~4角でロスを最小限に抑えて3列目で直線を迎えた。そこから馬群の狭い間を割って伸び、最後は内に刺さりながらもしぶとく伸びて2着。外から中団外目でレース進めたラーゴムにハナ差交わされたが、上々の内容だった。

同馬が好走しているレースを振り返ると、芝1800m~2000mで時計の掛かる馬場が大半。また、高速馬場だった一昨年12月の中日新聞杯では2番枠を利して中団内々を立ち回り、直線で外目に出しての優勝。高速馬場だった4走前の新潟大賞典、3走前の中京記念ではひと息であることから、本質的には芝1800m~2000mは忙しいと言える。理想を言えば、今回もっと内枠が欲しかったが、距離延長と時計の掛かる馬場は歓迎だろう。

【能力値3位 キングオブコージ】
デビューからマイル以下のレースを主体に使われていたが、一昨年1月に芝2000mの1勝クラスを勝利して以降、距離を延ばして本格化。5走前の湾岸Sでは、3勝クラスながらオープン級の指数で快勝、勢いに乗って目黒記念も優勝した。4走前の目黒記念は、前にいった4頭は14着以下に大敗する緩みのない流れ。やや出負けし、後方4番手でレースを進めた同馬は展開に恵まれた。また平均ペースで流れた3走前の京都大賞典でも、休養明けながらグローリーヴェイズと0.3秒差の3着に善戦している。

しかし、右後肢骨折後の近2走がひと息。休養明け2戦目の前走・中日新聞杯では16番枠からやや出負けし、序盤は無理せずにレースを進めていたが、道中で好位の外まで押し上げての5着。道中少し掛かり気味だったが、ラスト1Fで前が大きく減速したにもかかわらず、前との差をじりじりとしか詰められなかった。道中で脚を使ったことを考えれば悪くないが、良くもない内容。今回でさらに前進する可能性もあるが、レースでの負荷が足りていないので、全盛期ほどの実力を見せられるかは「?」である。

【能力値4位 ラストドラフト】
極悪馬場で行われた昨年の同レース3着馬。そのレースはタフな流れで外差し決着になったのだが、差して2着のヴェルトライゼンデはその後に屈腱炎を発症。1着馬のアリストテレス、3着のラストドラフトはその後スランプに。消耗戦は見応えはあるが、本当に競走馬をダメにする。

しかし、近2走は復調気配を感じさせる走り。前々走の天皇賞(秋)は、中団馬群の中目でレースを進め、最後の直線ではコントレイルの後ろから動き、じりじり伸びて8着。決して褒められた内容ではないが、悪い内容でもなかった。前走の中日新聞杯は5番枠から好スタートを決めながらも、6番枠のアフリカンゴールドに切ってこられて位置を下げ、結果的にそのアフリカンゴールドが2着と好走したことから、ラストドラフトを管理する戸田調教師が大激怒する事件が発生した。

それゆえに今回は戸崎騎手への乗り替わりとなったが、仮にアフリカンゴールドの位置を取っていたとしても、差し競馬で結果を出してきたラストドラフトが2番手から押し切るのは簡単なことではない。ただアフリカンゴールドを前に入れたことで、致命的な位置になり、そこから最後の直線までの進路取りもスムーズではなかった中で、9着なら悪くない。今回で反撃があっても不思議ないだろう。

【能力値5位 オーソクレース】
デビューから2戦2勝。3戦目のホープフルSでも2着と高い潜在能力を感じさせた馬。ホープフルS当日は前へいった馬と、内を通った馬には厳しい外差し馬場。そんな中を2列目外でレースを進めたのが、後の菊花賞馬タイトルホルダーで、2列目の内でレースを進めたのがオーソクレースだった。

骨折による長期休養明けの一戦となった前々走のセントライト記念は3着。ただ、最後の直線で内を通ったタイトルホルダーやノースブリッジ等が詰まって進路を失い、外目に出した馬が上位を独占する差し馬有利な流れに恵まれたもの。

前走の菊花賞はタイトルホルダーに5馬身差をつけられたが、大外18番枠から終始中団外々からの競馬。3~4角では5~6頭分も外を回るロスの大きい競馬ながら2着を死守した。大外を回って上がり3Fタイム3位タイの末脚を記録したのはスタミナがある証しだ。

とてもステイヤー色の強い馬で、スピードの持続力は今回のメンバーではNO.1クラス。本来はもっと距離があったほうがいい馬だが、タフな馬場の中山芝2200mという条件は悪くない。またペースが落ち着くようならば、ある程度前の位置が取れるはず。しっかり位置を取って持久力を生かす形なら、上位争いに加わるだろう。1番人気ではあるが、大きな減点材料がなく、ここは本命も視野に入る馬だ。

穴馬は2018年同レース覇者ダンビュライト

ダンビュライトは2018年のこのレースの覇者。そのときは前半5F61秒3-後半60秒0のスローペース。2番手から最短距離を通って3番手以下を引き離し、ラスト1Fで逃げ馬を捕らえて重賞初制覇を果たした。

2019年のこのレースでは前に壁を作りながら好位の中目でレースをしたため、3~4角で動くに動けず、外から上がってくる馬たちに対して何もできなかった。2列目で最後の直線を迎えても序盤で進路がなく、仕掛け遅れての6着。2018年に比べると下降線ではあったが、北村友騎手に乗り替わった2戦は結果を残すことができなかった。

今回は2018年同様、同型が手薄。キャッスルトップの2番手で最内を狙う競馬が理想だが、スローペースで逃げられるなら逃げても悪くない。確かに以前に比べると勢いは落ちているが、5走前の京都記念では3着と善戦。また前走はダート戦で逃げ3着と厳しい流れを経験しているので、ここで変われる可能性はある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ポタジェの前々走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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