【愛知杯】名手・武豊騎手に導かれルビーカサブランカが重賞初制覇!  明暗わけた馬場選びと適性の差

勝木淳

2022年愛知杯のレース展開,ⒸSPAIA

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武豊騎手、JRA重賞通算347勝目

武豊騎手が新年早々、36年連続重賞制覇を達成した。初重賞勝利は87年京都大賞典トウカイローマン。リアルタイムでその瞬間を目撃したファンはどれほどいるだろうか。干支を3周。年齢がばれると本人はコメントしたが、とてつもない記録だ。JRA重賞347勝。そのうちもっとも袖を通した勝負服が金子真人HDの18勝。この勝負服での勝利は11年レパードSボレアス以来約10年ぶり。武豊騎手にはやはりこの勝負服が似合う。

ちなみに斤量52キロでの重賞勝利は12年セントウルSエピセアローム以来、通算【4-1-2-11】勝率22.2%、複勝率38.9%。身長170センチ、50代でも減量を苦にしない。頭が下がる。

内側が荒れはじめた馬場、あえてイン狙い

さて、レースは戦前から逃げ馬不在。スローペースは見えていたが、ハンデ戦らしく並びが読みづらかった。主導権を握ったのは51キロのアイコンテーラー。シゲルピンクダイヤとマリアエレーナが好位をとり、予想通り、最初のコーナーでペースは落ち着いた。12.5-11.3-13.1-12.9-12.5で前半1000m通過1.02.3。9R渥美特別(2勝クラス)が前半1000m通過1.01.0なので、超がつくスロー。当然ながら各馬追走は楽、馬群は密集して進む。

勝ったルビーカサブランカは1番枠、武豊騎手は戦前からインコース狙いだった。暮れに2週間使ったAコースは冬の短期間の休養では回復は難しく、早くも外目が伸びる状態。だが、渥美特別2着ノースザワールドが最内を突いたように、内が完全にダメというわけではなかった。

スローの密集した馬群でインを突くと、揉まれる危険もあったが、中団馬群の後ろ、絶妙に密集を避けた。ルビーカサブランカは下りに転じる3、4コーナーのコーナリングを利用して追い上げ、勝負所へ。先行集団はみんな状態のいい外目を目指し、前の馬群は外へ流れた。2、3頭しかいないインコース。こういった状況ではインを突いた馬が苦戦する場面も多いが、ルビーカサブランカは上がり3位タイ34.2で伸びた。

母ムードインディゴが重のローズS2着、秋華賞2着と前半が早く、後半時計を要する展開に強かったように娘も力のいる馬場は得意。前走オリオンSは、サークルオブライフが勝った阪神JF当日。連続開催のため荒れはじめた外伸び状態のパワー優位馬場だった。インを突いても問題ないという武豊騎手の確信が見事に当たった。

仕掛けのタイミング絶妙だったマリアエレーナ

レースの後半1000mは12.1-11.8-11.3-11.5-12.0で58.7。前半が遅かったこともあり、アイコンテーラーを目標に先行集団が早めに外から進出。ラスト600~400mで最速タイが刻まれる展開は急坂が待つ中京では先行集団にも厳しかった。

2、3番手にいたマリアエレーナは後続の追い上げに対して、インで仕掛けをワンテンポ待ち、残り600~400mを絶妙にやり過ごしたのはファインプレーだった。結果的には背後にいたルビーカサブランカの目標になってしまい、アタマ差交わされてしまったのは残念。最後にひと踏ん張りできなかったのは休み明けの分だろう。

マリアエレーナの母はテンダリーヴォイス。その母がミスアンコール。テンダリーヴォイスの全弟は先日、急死したダービー馬ワグネリアン。マリアエレーナの叔父にあたる。勝ったルビーカサブランカも翌日、日経新春杯を勝ったヨーホーレイクもみんな金子真人HDの所有馬。ワグネリアンの悲しみを晴らすような激走だった。

3着デゼルは状態のいい外目を差してきた。上がりはルビーカサブランカと並ぶ34.2。最後は大外に回ったので、通ったコースの差が結果にあらわれた。昨年は春から秋はちょっと足りない競馬が多かった。もしかすると、冬から春に調子を上げるタイプかもしれない。

1番人気アンドヴァラナウトは11着。昨年ローズS、秋華賞の内容からスローペース向きではある。ただ、古馬重賞はスローであれば、早めにペースアップしてしまい、十分脚を溜めきれない印象。瞬発力型で切れる分、長く脚が続かないようだ。パワー優先になりかけた中京の馬場も合わかった。もっと軽い馬場向きではないか。

最後に勝ち時計2.01.0は渥美特別2.00.1より0.9遅い。これは愛知杯のレベル云々よりも渥美特別が前半で1.3早く、決着時計も0.9差とこちらのレベルが高かったともいえる。勝ったキセキの妹ビッグリボンも覚えておきたい。

2022年愛知杯のレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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