【京成杯】いざ、クラシックへ、進撃のオニャンコポン! その評価は上位好走馬の今後次第

勝木淳

京成杯インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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操縦性の高さと瞬発力兼備のオニャンコポン

1番人気アライバルはマイルを超える距離も右回りも未経験。2番人気テンダンスは東京スポーツ杯2歳S3着以来で小回り未経験。京成杯有力ローテの前走1勝クラス組は3番人気ヴェールランスと4番人気ホウオウプレミアの2頭。若駒同士らしく、未知の部分が多いレースだった。

混戦を断ったのは2勝馬オニャンコポン。2勝馬の勝利は18年ジェネラーレウーノ以来。ここ3年は新馬勝ち直後の馬が制しており、近年のトレンドとは異なる結果。それだけ予想の難しい競馬だったといえる。アニメの登場人物と同名のオニャンコポン、その由来はアカン語で「偉大な者」。その名の通りさらに偉大な馬になるべくクラシックに進撃したい。京成杯はそのはじまりであってほしいものだ。

前走ホープフルSまでは勝った百日草特別のような先行策。それが一転して中団から差してきた。もちろんクラシック戦線では目標にされるより、控えて前に目標を置いてレースをしたい。だが、相手はキャリア3戦の若駒。人が思い描くような脚質転換は簡単ではない。控えると聞いて不安になった方もいたにちがい。

オニャンコポンは一発で脚質転換に成功した。百日草特別で前に壁がない状態でも折り合えたように、控えることに不安はないタイプ、そして今回は見事に差し切りV。思惑以上の結果を残した。器用さはもちろん、脚力も想像以上の可能性はある。

勝因は脚質転換を見事に成功させただけではない。3コーナー手前で2着ロジハービンが外をまくっていったため、中団の押し上げも早く、後半1000m12.5-12.4-12.0-11.4-12.1とじわじわとコーナーでラップが上昇、ここで動いた組が4コーナーから坂下の11.4で脚を使い切った。オニャンコポンはここで釣られず、仕掛けを待った。手応え十分だったこともあるが、周りが動いても一緒に動かない、そんな菅原明良騎手のセンスも光った。残り400mでスパート、中山直線310mだけで2着に1馬身1/4、切れ味もある。

父と同じ道を歩めるか

この勝利で産駒JRA重賞初制覇を飾ったエイシンフラッシュとは親子制覇になる。父は現役時代、雄大な馬体のわりに器用な面と瞬発力を兼備していた。馬群を割って差した日本ダービー、天皇賞(秋)は上がり600m32.7、33.1と切れまくった。オニャンコポンはエイシンフラッシュの長所を多く受け継いだ可能性が高く、父以来となる京成杯優勝馬の日本ダービー制覇を狙いたい。

それを占うためにもレース内容の精査は重要。昨年の共同通信杯はハイレベルで出走馬の顔ぶれ以上に内容が濃かった。クラシック戦線通用を示す光るものがほしい。京成杯はスタートから12.5-10.6-12.6-12.2-13.0、前半1000m通過1.00.9。ギリギリ平均ペース。向正面で13.0と中だるみがあった。

ただ、ここで後方にいたロジハービンが動き、自然と全体的に後半はピッチが上がった。ラスト400~200m11.4は中山としては速いものの、似た流れだったラストドラフトの19年は最後800m11.8-11.8-11.4-12.1。エイシンフラッシュは前半スローだったこともあるが、最後の400m11.4-11.4。急坂がある中山では見かけないラップ、光るものがあった。

オニャンコポンの器用さと瞬発力を示した内容は評価できるものの、レース自体にクラシック通用の根拠を示すのは難しい。ロングスパートを仕掛けたロジハービン、しぶとく伸びたヴェローナシチーらの今後も見守りたい。前者は小回り向きの渋さ、後者は直線の長いコースで見直したいところだ。

また4着アライバルは休み明け、未経験の中山芝2000m戦でちょっと余裕がなかった印象。それでも新潟2歳Sと同じく、沈むかと思われたところからまた伸びてきた。まだまだ力を出し切っておらず、レース経験を積み、能力全開といきたい。5着テンダンスは馬場の悪い内でモタれて追いづらそうだった。こちらも実力を出し切ってはいない。

これら上位好走馬の次走以降に注目しながら、オニャンコポンのクラシック戦線での現状の立ち位置を確認していきたい。

京成杯インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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