山崎エリカ

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クラシックで期待できる馬が現れた12月4週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はホープフルSを勝利したキラーアビリティ、万両賞を勝ったマテンロウオリオンなどがでた12月25日、26日、28日の2歳戦について、指数と評価を掲載する。
12月25日(土) 中山5R 優勝馬 ルージュエヴァイユ 指数-3 評価AA
13番枠からダッシュがつかず、中団よりも後ろから1角で上手く内に入れての競馬となったルージュエヴァイユ。4角では後ろよりの内で包まれ、かなり苦しいポジション。直線序盤で外に出し、馬群の間を捌いて前との差を徐々に詰めたが、届きそうな気配はなかった。ヴァンガーズハートがラスト1Fで抜け出し、そのまま押しきるかのように思えた残り100m。そこから内に入り最後は強烈に伸び、ズバっと差し切ったところがゴールだった。
ラスト2Fは11秒6-11秒9。この流れをラスト100mで強烈に伸びた瞬発力は非凡なものを感じた。上がり3Fタイムの34秒7もこの日の中山芝では古馬を含めトップと差のない3位となるもの。なかなか優秀と言える。本来は2着のヴァンガーズハートが勝利していた流れを差し切ったルージュエヴァイユ。トップスピードの高さを生かして今後の活躍が期待できる。
12月25日(土) 中山6R 優勝馬 アローワン 指数-17(ダート) 評価A
大外15番枠からスタートで逃げるつもりはなかったようだが、このメンバーではスピードが違い、自然と逃げる形となったアローワン。3角過ぎからは後続がバテ始め、4角ではついて来たライバルたちも苦しくなり、直線では完全に独走。2着に2秒差をつけての大差勝ちを収めた。指数は古馬2勝クラス勝ちレベルのものを記録。とにかく強かった。
ただラスト2Fは11秒9-13秒1と減速。余裕はそこまでなかったのかもしれない。アローワンは次走1月8日の黒竹賞にレース間隔短めで出走し、10着と大敗。新馬戦の疲れが残る状態での強行軍が裏目に出た敗戦。しかし、レース内容は怪物ホウオウルーレットを負かしにいっての失速で、見せ場はあった。新馬戦で記録した高指数から、能力は高いものがあることは確か。疲れが抜ければダート路線でかなりの活躍が期待できる。
12月26日(日) 中山2R 優勝馬 トモジャワールド 指数-13(ダート) 評価A
新馬戦では怪物ホウオウルーレットを負かしにいく競馬で2着だったトモジャワールド。馬っぷりの良さが目立つ馬で、前走は並の新馬戦ならば勝利当確レベルの指数で走っての2着だったこともあり、多少疲れも懸念される状態だった。また今回のライバル、オヤノナナヒカリはダートに路線転向してから2連続2着していた馬。相手も弱くなく、決して楽観視できる状況ではなかった。
レースはスピードの違いで逃げる競馬で、直線ではオヤノナナヒカリを失速させて7馬身差の圧勝。指数は前走比でしっかり上昇、古馬1勝クラス勝ちレベルのものを記録と強かった。潜在能力が低い馬なら、ホウオウルーレットのような馬を相手に好走した直後の一戦では、パフォーマンスを下げてしまうことが多い。しかし、今回はしっかり指数を上昇させたことに強さを感じた。これなら今後のダート路線で活躍が期待できるだろう。
12月26日(日) 中山4R 優勝馬 デインティハート 指数-5 評価A
9月中山の新馬戦では6着ながらも、上がり3Fタイムは最速を記録、潜在能力の高さを見せていたデインティハート。今回はそれ以来の3ヵ月ぶりの競馬。レースは前走同様に後方からの競馬となったが、今回は向正面で一気に好位まで上がり、直線序盤では先頭に立ち、しっかり脚を使って勝利した。
今回も上がり3Fタイムは最速を記録、底を見せていない。今回はかなり長く脚を使っており、大きな成長を感じることができた。昇級以降も活躍が期待できる。
12月28日(火) 中山4R 優勝馬 レッドモンレーヴ 指数-7 評価A
12月中京の新馬戦では逃げて目標にされた分、苦しくなっての2着。ただ競馬自体は好内容だったレッドモンレーヴ。今回は7番枠から内と外の馬を行かせて好位の中目でしっかりと脚をタメ、最後の直線で外に出して差し切る理想的な競馬で勝利した。
後続との着差はそこまで大きくなかったが、この未勝利戦は出走馬のレベルが高く、レッドモンレーヴは未勝利クラスとしてはなかなかの好指数を記録した。今後は勝ったり負けたりしながら上を目指す馬になりそうだ。
12月28日(火) 中山11R 優勝馬 キラーアビリティ 指数-15 評価AA
デビュー2戦目の小倉未勝利戦でラスト2F11秒8-10秒8と驚異的な加速スピードを見せて圧勝し、この連載では高く評価したキラーアビリティ。前走の萩Sは目標にされた分のクビ差負けで評価を落とす必要はなく、今回はかなりの確率で優勝すると見ていた。
唯一の不安点は折り合い。先行した場合には暴走する可能性が多少あった。しかし、鞍上が好位につけながら折り合わせる競馬。あとは馬の能力から優勝して当然だったと言える。
ただ今回の指数は先に行われた朝日杯フューチュリティSよりやや劣るもの。折り合いがつけば圧勝まであると見ていただけに、そこが少々不満だ。それでも一戦ごとにしっかり勝ちにいく競馬ができるようになっている点は評価できる。今後のクラシック路線でライバルたちと激闘を繰り広げていくことになるだろう。
12月25日(土) 阪神4R 優勝馬 エリカフェリーチェ 指数-3 評価B
新馬戦では出遅れたこともあり、能力を出し切れず3着だったエリカフェリーチェ。今回は7番枠から五分のスタートを決めると、そこから加速し2番手からの競馬。3~4角では逃げ馬に並びかけ、4角先頭からそのまま押し切って勝利した。
逃げ、先行馬にとって基本的に厳しい馬場状態だった阪神芝のレースを正攻法で勝利したことは、着差以上に高く評価できる。次走でおおよそ能力が測れそうだが、楽しみな馬だ。
12月25日(土) 阪神5R 優勝馬 ジャスティンカツミ 指数-2 評価B
7番枠から二の脚の速さでハナを奪い、逃げる競馬となったジャスティンカツミ。直線では馬場の最内から突き抜けそうな感じもあったが、最後は苦しくなった。それでも最後は凌ぎ押し切って勝利した。
ラスト2Fは11秒3-12秒5。大幅に減速した点は評価できないが、阪神芝のタフな馬場状態、それも馬場の悪い内を逃げて勝利したことは高く評価できる。今回の厳しい競馬が次走に繋がる可能性もあり、能力はありそうな馬だけに今後が楽しみだ。
12月25日(土) 阪神6R 優勝馬 ペプチドアケボシ 指数-9(ダート)評価B
スタート地点の芝からダートに変わったところで加速がつき、逃げる競馬となったペプチドアケボシ。直線を向いて追い出されるとしっかりと伸び、後続馬をバラバラの着差にしてしまう強い勝ちっぷりだった。
ラスト2Fは12秒2-12秒8と減速しているが、上がり3Fタイムは逃げながらメンバー最速を記録しており、好内容だった。今回で記録した指数は新馬戦としては優秀なものと言えるが、この世代のダート新馬戦、未勝利戦は例年以上に派手な勝ちっぷりの馬が多く、残念ながらこの程度では目立たない。しかし、強いことは間違いなく活躍は期待できる。
12月25日(土) 阪神9レース 優勝馬 マテンロウオリオン 指数-11 評価AA
新馬戦では馬場のやや悪いところを通って逃げ馬を追い駆け、能力を出し切れずの2着だったマテンロウオリオン。今回は出遅れ、開き直って単独最後方からの競馬。今回のレースではそれが吉と出て、直線では馬場の良い外から素晴らしい末脚を発揮し、見事に前をまとめて差し切った。上がり3Fタイムはメンバー中で断トツの33秒4。高いスピードを秘めていることを見せた。
マテンロウオリオンは次走、好位からの競馬でシンザン記念も勝利。シンザン記念は着差以上の強さだったと言える。デビューから強行軍で3戦したことが今後どうかという懸念材料はあるが、レースぶりは明らかに強い。まともならば今後もトップ級の一頭として活躍していく可能性が高い馬だ。
12月26日(日) 阪神3R 優勝馬 ヴェローナシチー 指数-5 評価A
7月小倉のピースオブエイトが勝利した新馬戦は、ラスト2Fが11秒6-11秒2のハイレベル決着だとこの連載では評価していたが、ヴェローナシチーはそこで3着だった馬。今回はそれ以来、5ヵ月半ぶりの休養明けの一戦となった。
今回のレースは9番枠から出遅れ、新馬戦よりも後方からのレースとなったが、向正面から徐々にポジションを上げ、4角では好位の外。かなり長く脚を使いながら、最後はしっかりと差し切った。ヴェローナシチーはこれで2戦続けて上がり3Fタイム最速を記録。今後は使われながらトップ級に食い込んで行くだろう。
12月28日(火) 阪神7R 優勝馬 デリカダ 指数-17(ダート) 評価A
ダート新馬戦では正攻法の競馬でラスト2F12秒4-11秒9と強い内容、かつ高指数勝ちを決めたデリカダ。当時の2着馬カフジオクタゴンは次走の未勝利戦を好指数勝ち、その次走ではハイレベルだった1勝クラス4着を経て、再びデリカダと激突。しかし、結局ここでもラスト1F手前で抜け出したカフジオクタゴンをデリカダが差し切って勝利した。
デリカダは今回も好位からの競馬で古馬2勝クラス勝ちレベルの指数を記録。これで2戦2勝。当然、今後はダート路線のトップクラスとして活躍していく馬になるのだろう。とにかくこの世代のダート路線はハイレベル決着が続出。今後も面白い戦いを見せてくれることになりそうだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)キラーアビリティの指数「-15」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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